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エンジンの中まで見える!?

空の安全を支える日本航空の整備工場に潜入!

2012年12月03日 23時33分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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エンジン内部は内視鏡で確認!?

ボーイング777の特徴でもある、大直径のエンジン「GE90」。空気取り入れ口は大人が余裕で立てるほど

 今回の見学で見物だったのは、777-200ERのエンジン(GE90)の整備の様子だ。C整備ではエンジンを取り外して分解したりはしないが、カバーを開けて外から点検するだけでなく、エンジン内部の様子を確認する。分解せずに中の様子を確認するのに使うのが、胃カメラで使うような内視鏡だ。内視鏡を使って内部を正確に観察するには、これも熟練した経験を持つ整備士の腕が必要になるという。

カバーを外したエンジン。写真中央は入り口寄りにある「圧縮機」のあるあたり

こちらは燃焼室とタービン、エンジンノズルなど。燃焼室やタービンの周囲は複雑な配管が取り巻いている

上から見たエンジン。エンジンが主翼の前に大きく突き出されているのがわかる

写真中央で光っているのが、エンジン内部を視認するための内視鏡。胃カメラのと見た目は似たようなもの

エンジン内に内視鏡を差し込み観察中。狙ったところを正確に視認するには、熟練した整備士の腕が必要という

内視鏡を通してみたエンジン内部。ここらは燃焼室の後ろにある高圧タービンの入り口あたり

高圧タービンは燃焼室で燃やされた高温高圧の燃焼ガスが直接浴びせられるので壊れやすい。そのためタービンブレードには冷却気を噴出する穴が開いていて、この穴の状態も慎重に確認する必要がある

 目視での点検だけでなく、機械を使った非破壊検査も行なわれる。例えば機体の外板を構造材に固定しているリベットの部分は、アルミ合金の板に穴が開いているので、機体が上昇下降をする度に内外の気圧差による強い負荷がかかる。ここに亀裂が生じたのを見落とすと、重大な損傷を招きかねない。そこでこうした部分は些細な亀裂でも早期に発見できるように、手持ちの測定器を使って確認する必要がある。

外板内部の目に見えない亀裂を確認する測定器。右側の赤丸内にちらりと見えるのが、電流を発生させる金属棒

このようにして1穴ずつ亀裂の有無を確認する

 小さな金属棒の先から放出された渦電流の変化により、外からでは視認できないような亀裂でもチェックできるという。しかし機体全体には膨大な量のリベットが使われているので、これを1穴ずつ確認するのだからとんでもなく手間がかかる作業だ。

 検査を実演してくれた土井整備士は、約900人が在籍する成田航空機整備センターの整備士の中でも18人しかない「マイスター」と呼ばれるベテラン整備士で、なんとこの道30年というベテラン中のベテランだ。JALでは若手の整備士の手本となるベテランを「エキスパート」(120人ほど)や「マイスター」(18人)として認定し、整備士の育成に役立てているとのことだ。

 同社で1級整備士と呼ばれる整備士は、国家資格である「一等航空整備士」の資格を必要とする。1級整備士になるまででも6~8年かかり、各ラインの責任者になるには10~12年程度の経験の蓄積が必要とのことだ。しかも一等航空整備士の資格は機種ごとに分かれているので※1、新しい機種が導入される際には、ベテランであっても資格の再取得が求められる。整備士としてのキャリアの間は、常に勉強が続くそうだ。特に最新鋭のボーイング787になると、機体の多くに炭素繊維を使った複合材を使っている。今までのアルミ合金ベースとは素材が異なるわけで、また新しい経験の蓄積が必要になるわけだ。
※1 機種のサブタイプは原則同一扱いだが、航空機関士が不要になったボーイング747-400以降は、機関士が必要だった以前の747と別扱いだったとのこと。

 オペレーション業務からロードコントロール、そして機体の整備までと、旅客機の安全で正確な運航は実に多くの人の献身的な活動で支えられている。飛行機に乗る機会があれば、こうした安全な空の旅を支える人々のことも思い出して、ささやかでも感謝を感じていただけるとうれしい。

米西部への出張が楽になる?
成田~サンディエゴ直通便が開始

空港第2ビル内で開かれた「成田~サンディエゴ便」の開設記念セレモニーでのテープカット。JAL会長の大西 賢氏(中央)らが登壇した

 この取材が行なわれた2日には、成田と米国カリフォルニア州サンディエゴを結ぶJALの定期便「成田~サンディエゴ便」が運航開始された(週4便予定、2013年3月から毎日)。ロサンゼルスの南、メキシコ国境の近いサンディエゴは、有名な観光地としてだけでなく周辺に大企業も多く、米国西部へのハブ空港となっている。想定している利用客の分布では、観光客2割に対してビジネス客が8割とのこと。IT企業の多いこれらの地域への出張が多い人には、選択肢のひとつになりそうだ。

成田~サンディエゴ便で提供される機内食の見本も展示。左はケンタッキーフライドチキンと提携して提供されるエコノミークラス向けの「AIRケンタッキーフライドチキン」。右はエグゼクティブクラス向けのハンバーガー「JALオリジナルハンバーガー 佐世保風」

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