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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第107回

イヤホン激戦区に投じられた「K374」

「K3003」の遺伝子を受け継ぐ低価格イヤホンの実力は?

2012年12月01日 12時00分更新

文● 四本淑三

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もうひと頑張りして欲しいK374

 一方、その遺伝子を引き継ぐK374、K391NCは、いずれもダイナミック型ドライバ1発という仕様。ハウジングは両機種ともアルミニウムを使っており、K3003のノズルが真っ直ぐに付いているのに対して、K391NCはノズルの向きが耳穴の装着方向にあわせて若干オフセットしている。

ノズルの向きがオフセットしているK391NC。ハウジング内にNC用のマイクを内蔵しているので、若干ハウジングが大きく長く、そして重く感じられるが、このオフセット量が適切なおかげか装着感を損なっていない

 ドライバが同じでも、K374とK391NCでは、イヤホンの方式が違うので音も全然違う。

 K374は低域強調型で、200Hz前後に分かりやすく山がある。このあたりの帯域が上がっていると人は「おお、低音の迫力が!」と感じやすいので、iPhoneなんかのおまけイヤホンからの買い替え組にアピールするためだろう。

 ただK374のように着脱性を重視したカジュアルなカナル型は、シュアのようなイヤーモニター系に比べると遮音性が低い。よってあらかじめ低域を上げておけば、外来音とまじってバランスが取れるという事もある。

ダイナミック型ドライバは振動板の面積が広いので、背圧を逃さないと振動板の動きが悪くなる。それでハウジングに穴が開けられている。ここが遮音性を重視するイヤーモニター系との違い。この穴から音漏れはするし、遮音性も低くはなるが、このタイプのイヤホンとしては妥当な範囲

 ただ高域の一部帯域にレスポンスの低い部分があり、位相が合っていないようなバランスの悪さを感じた。そうしたバランスをきっちり合わせてきたのがK3003の凄さであって「おいK374よ、おまえのK3003の遺伝子はどこに行ったのだ!」と問い詰めたくなるが、この価格帯のカナル型には珍しくない傾向で、その中では相当に善戦している。しかし、K3003直系というには、もうひと頑張りして欲しいというのが正直なところ。

K3003のお裾分け感があるK391NC

 そして意外や意外、K3003の音に近いといえるのがK391NCだ。

K391NC

 NCモデルということで音質的に不利かと思いきや、高域の抜けの良さ、低域のボリューム感など、K3003に感じる特徴を上手くシミュレートした音になっているのが面白い。もちろんK3003のスーパーな解像感にはかなわないのだが、その雰囲気は十分に楽しめる。途中で補正が入っているのかも知れないが、これはちょっと面白い存在である。

 NCモデルとしての性能にも満足できる。AKGらしく、NCスイッチをオフにしても(バッテリーが切れても)使える仕様。NCスイッチのオンとオフで音質は違い、オフではフラットに近い特性、そしてオンで弱いドンシャリ傾向に変化する。いずれもK374で感じた高域のバランスの悪さはまったく感じない。

K391NCのコントロールボックス。リチウムイオン充電池内蔵でUSBバスパワーで充電。約35時間の使用が可能という(バッテリー持続時間はメーカー公表値)

 NC回路は音質優先のフィードフォワード方式で、気になるノイズはほとんど感じられない。その割に低域を中心にスカッと消音するので、そもそものカナル型の遮音性能と合わせて、快適なリスニング環境が得られる。コントロールボックスは若干邪魔になるが、カジュアルな装着感を犠牲にせず、イヤーモニター型に近い遮音性能が得られるところがいい。

左からK3003、K374,K391NCのケーブルY字部分。K3003はY字からプラグにかけてメッシュ素材で覆われている。K391NCはマイク用のリード線が余計に入っているため、若干ケーブルが太い

左からK3003、K374,K391NCのケーブルプラグ部分。この部分の質感は意外と差がない。K391NCのみケーブルの途中にスマートフォンの通話用マイクロホンと応答スイッチが付き4極接点仕様

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