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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第105回

表裏一体の新提案、2画面ノート「TAICHI」は実用的か!?

2012年11月29日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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 キーボード・タッチパッドの操作性も十分。ストロークは浅めだが、タッチ感が悪いわけではない。配列面でも申し分ない。タッチのことを気にせず、普通に「薄型Ultrabook」と評価しても問題ない範囲だ。タッチ機能があるのにモバイルノートとしての使い勝手にほとんど変化がない、ということが、TAICHIの最大の魅力といえるかもしれない。

TAICHIのキーボードとタッチパッド。右上の青い「TAICHI HOME」キーに注目。配列などは標準的で使いやすい

キーボードにはバックライトも装備。明るさなども十分で、実用的な構成になっている

 発熱は大きめだ。少々寒くなってきた現在の室温で、底面をかなり暖かく感じるのだから、夏などは少し不快に感じるかもしれない。発熱源は主に底面中央と底面右側で、パームレストはさほど発熱しない。テーブルの上で使うのであればまったく問題にはならないだろう。この辺は、いろいろ詰め込んでいる形状でありながら、Ultrabookらしい薄さを実現するための、ある意味の割り切りかもしれない。

各部の温度比較 放射温度計による測定、室温は19度。フルパワー時はH.264動画エンコード状態

 割り切りという意味では、バッテリー駆動時間が短いのも気になる。これは間違いなく、本体重量を増やさないために、搭載バッテリー容量を少なくしたのが原因だ。

 カタログ上の表記は「約5.2時間」(JEITA 1.0測定値)となっているが、バッテリーベンチマークツール「BBench」のテストでは、最長でも約3時間40分。これは、バッテリー容量を多く搭載する最近のUltrabookの中では、ちょっと少なめだ。特に、タブレットのように使うことも想定するならば、もう少し長い方がありがたい。

BBenchによるバッテリー駆動時間テスト
バランス 省電力
約2時間29分 約3時間39分

 おそらくは、ディスプレーを2枚搭載し全体の重量が増えたことから、トータルでより重くなるのを避けたのだろう。その判断はわかるが、実用的な、インターネット接続を併用した使い方でも5時間を越える程度にしてほしい、とは感じる。

 他方で、そういった面をカバーするためか、ACアダプターがとても小さく、軽くなっている。コンセントに差し込む部分は折りたたみできるので、真四角にして鞄に入れておける。同様の機構はアップル製品でも取り入れられているが、TAICHI付属のものも小さくて好ましい。

 EthernetやアナログRGB接続は外付けアダプター経由になるが、そうしたアダプター類が付属のケースに収納できて、持ち歩きやすい点は高評価だ。ただ端子類としては、SDメモリーカードスロットが欲しかったと思う。まあ、USBで簡単に外付けできるものだが……。

ACアダプターやEthernetアダプター、アナログRGBアダプターと、筆圧感知対応の専用スタイラス。これらはACアダプターを除き、付属のケースに入れて持ち運べる

本体左側面。左から、ヘッドホン/マイク、USB 3.0、mini VGA端子、ボリュームボタン、画面の回転防止ボタン

本体右側面。左から、電源スイッチ、micro HDMI出力、USB 3.0、電源コネクター

 TAICHIは「持ち歩く薄型のノート、しかもWindows 8世代はどうあるべきか」を真剣に考えて作られた製品だ、と感じる。バッテリー駆動時間の点など、自分が買うと考えると気になる点はあるが、タッチと一般的なパソコンとしての使い勝手の両立という面で、なるほど納得できるやり方ではある。

 次には、両面タッチと駆動時間の延長に挑戦してもらいたいと感じるが、この方向は伸ばしていくだけの価値はある。変形はしないが、それと同等の価値がある、新しい方向性として注目してもらいたい。

お勧めする人
・クラムシェルでもタッチでも妥協したくない人
・人が驚くようなパソコンを持ち歩きたい人
ASUS TAICHI 21 の主な仕様
CPU Core i7-3517U(1.9GHz)
メモリー 4GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 11.6型ワイド 1920×1080ドット
ストレージ SSD 256GB
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0
インターフェース USB 3.0×2、micro HDMI出力、アナログRGB出力(アダプター経由)、10/100BASE-T(アダプター経由)など
サイズ 幅306.6×奥行き199.3×高さ3~17.4mm
質量 約1.25kg
バッテリー駆動時間 約5.2時間
OS Windows 8 64bit
価格 13万9800円から

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筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)、「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)、「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)。 最新刊は「ソニーとアップル 2大ブランドの次なるステージ」(朝日新聞出版)。

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