【ツンデレBD】写真を整理してスライドショーを作るわよ!

文●藤春都 イラスト●花園あずき

2012年11月10日 11時00分

田中葵

頭脳明晰・才色兼備の優等生だが、実は機械がニガテ。前回VHSをデジタル化してくれたお礼に、赤司にお弁当を作ってあげた。





赤司

葵の同級生。デジタル全般に強く、敵視されながらも機械オンチの葵を手伝ってくれる。果たして彼の目的とは……?




2人の仲が、学校中のウワサに…?

「ねえ葵ちゃん、この間赤司君にお弁当渡してたって本当……」
「ごめんね私用事があるの急いでるからっ!」

 みなまで言わせず、私は弁当を抱えて脱兎のごとく駆け出した。
 昼休み、さあお弁当を食べようとしたところで、私は隣のクラスの女の子たちに囲まれてしまった。知らない顔じゃないけど、いきなり問い詰められたら誰だって逃げるわよ!

「ああもう、これで一週間目よ。みんな他に気にすることないのかしら、世界情勢とかスーパーの安売り日とか……」

 十日ほど前、私は赤司……クラスメートにして一緒にクラス委員をやっている男に、ちょっとだけ世話になった。何かお礼をしようにも、私は年中手元不如意。仕方なしに弁当を一食分作ってやったのね。
 それだけの話なんだけど、この赤司というのが校内でも有名な成績優秀なイケメン様だったせいで、私はいまやこの有様。ああもう、どこでお弁当食べようかしら。

「誰も来なくてゆっくりできる場所なんて……あ」

 私はぽんと手を叩いた。

「よしよし、誰もいない。生徒会長に仕事頼まれてて良かったわ」

 ややあって、私がやってきたのは生徒会準備室だった。生徒会室から続く、備品を置いておくための物置みたいな部屋で、生徒会役員か鍵を預かっている人間しか入れない。
 私は弁当を広げながら、機材に埋もれるように置いてあるパソコンのボタンを押した。

「えーと……確かこの丸をぽちっ、と」

 部屋を私用で使ったと言われないためにも、仕事はきちんとしないとね。
 しばらく前の文化祭で、私は学校の古い写真や映像をパソコンでデジタル化するという作業を請け負って……実は赤司にちょっとだけ手伝ってもらって完成させた。そのせいか頼まれたのはまたもパソコン絡み。

「古い写真の中から校舎が写っているものだけ抜き出して、校長室のテレビでも見られるようにする……よし」

 指令をぶつぶつと呟きながら作業をする。
 以前、機械音痴と赤司にバカにされた私だけど、予習と(自宅にパソコンがないので)イメージトレーニングは欠かしていないのよ。そのおかげでファイル一覧の表示はうまくいった。さて、校舎の写真はどれかしら……

「って、どれよ!?」

 表示されているのは数字とアルファベットの羅列ばかりで、どの写真に何が写っているのかまったくわからない。

「赤司のアホっ、これじゃ何が何だかわからないじゃないの……」
「僕が何か?」

 いきなり後ろから聞こえた声に、私はびくっとしてから振り返った。

「あんた、いつもいきなり後ろから出没しないでよ!」
「そんな、北海道の熊や鹿みたいに言わないでください」

 生徒会準備室に入ってきた赤司は、呆れたように肩をすくめた。人を小馬鹿にしたようなそんな仕草ですら絵になるから、美形ってのはお得よね。
 ……というか、こいつのせいで私が逃げ回る羽目になっているのに、どうしてここにこいつが来るのよ。嫌な偶然もあったものだわ。

「それ、文化祭のときの写真ですよね」
「これ、どれに何が写ってるかわからないじゃない! あんた、ちゃんと仕事してよ!」

 訴えると赤司はしばし考え込んで、

「つまり、素早く写真の内容を確認できればいいわけですよね?」
「そ、そうね」
「よければ、僕が探し方をお教えしましょうか? 僕のせいで葵さんにご迷惑をかけているようですし、お詫びも兼ねて」
「そうよね、あんたのせいで逃げ回る羽目になってるんだし、そのくらい当然よね!」

 なんだか私、毎回このパターンで言いくるめられてない?

膨大な画像ファイルを整理しよう

●画像の一覧表示

「デジタル化した写真や映像、それにデジカメで撮った写真などは、きちんと整理しておかないと後々たいへん困ります。まずは内容や日時でこまめにフォルダ分けしておきましょう。
 そして、アルバムのように何枚もの写真をいちどに表示させて確認する簡単な方法は、エクスプローラーでの表示形式を変えることですね」

「おおお、なんだかアルバムみたいになったわ! これなら校舎の写真を探すのも楽ね」
「ざっと写真を眺めたい場合はこれがいちばん手っ取り早いと思います。Windowsの標準機能ですし。むろんMacでも同じことはできます」

「しかし、これはただ画像を一覧表示させているだけです。画像が増えた場合は、専用の画像管理ソフトを使ったほうが楽でしょうね。
 そうした画像管理ソフトの代表例は、Googleが開発しているPicasaでしょうか」 「……パソコン用のソフトって確か高いのよね?」
「安心して下さい。葵さんの懐でも問題ないよう無料です」
「無料……なんていい響き……って、あんた今さらっと失礼なこと言ったわね!?」
「Picasaは、Googleの配布ページからダウンロードしてインストールして下さい」
「聞きなさいよ!」

「Picasaでもこのように画像を一覧表示できます。エクスプローラではフォルダ内の画像を一覧するだけでしたが、こちらではフォルダをいくつも登録できるので、画像があちこち分散している場合に便利です」

「そして、Picasaは画像を管理するための機能をいくつか持っています。
 このように画像に内容を表すコメントやタグをつけておけば、後で画像を探す際の手がかりとできて便利ですね」

「簡単にメモを付けておく機能もあるのね。でも、結局は自分でちまちま打ち込まないといけないのね……」
「今その手間を取るか、後で探すのに苦労するか、それだけの差です」
「正論でも、あんたに言われるとなんかムカつくわ」

「もうひとつはアルバム機能です。たくさんの画像の中から、テーマや目的ごとに画像を選んでまとめておく機能です。画像は元々のフォルダにも残っていますし、一枚の画像を複数のアルバムに入れることもできます」

「それから、Picasaは画像と同じようにして映像ファイルの管理もできます」
「映像こそ、ちゃんと内容メモっておかないと面倒そうよね……」

●フォトギャラリーとムービーメーカーでスライドショー作成

「必要な写真をピックアップできたところで、次はこれでスライドショーを作ってみます。フェードイン、フェードアウトするだけでも写真の見栄えが良くなるものです」
「それって、しょうもない写真をごまかしたいって言ってない?」
「いえ、写真の中身も見応えがあるに越したことはないですけどね……。さて今回は、Windows LiveフォトギャラリーとWindows Liveムービーメーカーを使います」
「二つもソフト使うの? ……今度こそ高いんじゃ……」
「安心して下さい、これも無料です。しかもWindows Liveメッセンジャーなども同梱されているお徳用パックです」
「お徳用……なんていい響き……」
「そのうち騙されておかしなものに手を出さないでくださいね?」

 失礼な、私だってちゃんとヤバげなものは見極めてるわよ。

「フォトギャラリーを使うためには、Windows Live EssentialsからWindows Essentialsをダウンロードしてインストールしてください。いくつかのソフトが同梱されています」

「まずフォトギャラリーを起動して、表示したい写真を選びます。その後「作成」タブから「ムービー」を選択すると、自動的にムービーメーカーが起動し、スライドショーが始まります」

「おお、かっこいい! ……って、作業これだけ?」
「驚くべきことにこれだけです。技術の進歩は素晴らしいですね」

「ただし他のパソコンにこのソフトが入っているとは限りませんので、確実にスライドショーを再生したい場合、映像として出力することになります。
 ムービーメーカーは映像編集ソフトなので、スライドショーにBGMを付けたり、タイトルやクレジットを入れることができます」

「また、作った映像をどこで再生するのかも考えておきましょう。たとえば今のテレビはほとんどワイドスクリーンなので、テレビで見たい場合はこれを選択しておく必要があります」

「わいどすくりーん……そ、そうなの?」
「以前、フルHDの解像度を説明したでしょう。あれを計算すると16:9になりますよ」
「あ、……ほんとだ!」

「さて、完成したら最後に映像ファイルとして出力します。ここでも再生する機械によって形式を選んで下さい。今回はテレビで見るので高解像度ディスプレイを選択します」

「ちなみに、このムービーメーカーはBDに映像ファイルを保存する機能はありません。別にそのためのオーサリングソフト(BDにデータを書き込むためのソフト)を用意する必要があります」
「こ、今度こそお金が……」
「BDドライブやドライブのあるパソコンには、たいていそのためのソフトも付属していると思います。むろん高機能なソフトを改めて買うこともできますが」

●BDレコーダでメニューページ作成

「ちなみに映像をBDに焼く場合ですが、一枚のディスクに複数の映像を入れることもできますし、ひとつの映像にチャプターをいくつか設定することもできます」
「えええ、次の話を見たい場合は早送りしたり巻き戻さなくていいの!?」
「CMカットやチャプター分けは映像のデジタル化の大きな恩恵なんですが、今となっては当たり前すぎて、あまりありがたがられないですよね……。
 まあそれはそれとして、映像にそれぞれタイトルを付けてこまめにチャプター分けしておけば、BDを再生した場合も便利なわけです」

「チャプター分けはBDレコーダーやオーサリングソフトで行います。まずは映像を編集して分割し、目次を作成します」

「編集ができたら、映像ごとのタイトルやチャプターを一覧できるようにメニュー画面を作成します」

「おおおお、なんだかどれも格好いいわ!」
「テンプレートはあらかじめレコーダ側に用意されているので、映像のイメージに合ったものを選んでください。まあ、敢えて内容とかけ離れたものを選んで視聴者を騙すという手法もないではないですが」
「そんなひねくれたこと考えるのはあんただけよ……」

それって…、どういう意味かしら……?

「おや、もうこんな時間ですか」

 きーんこーんと予鈴がスピーカーから流れてきて、私は慌てて立ち上がった。
 空になった弁当箱──作業をしながらも私はちゃんと食べていた──を片付け、パソコンの電源を切る。生徒会長に頼まれた作業も無事に終わったし、よきかなよきかな。
 ……ところで明日からどこの部屋に逃げ込もうかしら。

「あ、葵さん。これを」

 生徒会準備室から飛び出そうとする私を、赤司が後ろから呼び止めてきた。
 奴が小さく綺麗な紙袋を差し出してきたので、私は思わずどきりとする。こいつに何かプレゼントをもらうなんてことあるはずがないんだけど!

「……私がこの間渡したお弁当箱じゃない」

 おそるおそる紙袋を覗き込み、私はがっくりと肩を落とした。一瞬でも期待した私がバカみたいだわ。

「ええ。お返しするのが遅くなって申し訳ありません」
「……あんた、もしかしてこれを返しに来たの?」

 赤司は小さく頷いた。
 考えてみれば、私はともかく赤司がこの生徒会準備室に用があるわけがない。奴は私の後を追いかけてきたのだ。

「って、あんたに弁当あげたの十日も前じゃない! さっさと返しなさいよ」
「僕もそのつもりだったんですが、ここしばらく、僕から葵さんに話しかけるとますます面倒なことになりそうだったので」
「……それはお気遣いどうも」

 いちおう、人目につかないところで返そうとしてくれたわけね。普段は女の子にどれだけきゃーきゃー言われようと気もしていない感じなんだけど。

「それにここ数日は葵さんの機嫌が良くなさそうだったので、僕としては話しかけづらくて。授業中に指されたときもミスが多かったですし、備品のモップを壊してましたし、ゴミ箱にシュートし損ねて地団駄踏んでましたし」
「……あんた、見てたの!?」
「ええまあ。いつ返すべきかタイミングを見計らっていたもので」
「そんな全力で監視してるんだったらさっさと返しなさいよ!」

 バカだわこいつ。なんで私、こんなバカに試験で一度も勝てたことないのかしら……
 私は思わず頭を抱えたものの、

「それに、見ているのは楽しかったので」

 続く言葉に私は目をぱちくりとさせた。
 楽しかった……っていうのは、こいつが、私を見ているのが?

「それって……」

 けれど聞き返そうとしたそのときには、赤司の姿は既に消えていた。
 私もはっと我に返る。さっき予鈴が鳴ったから、もう授業が始まっちゃう。私だってこれでも優等生で通ってるんだから、遅刻なんてできないのよ!

「……どういう意味かしら」

 廊下を全力疾走しながら、私は顔が熱くなるのを感じていた。

つづく





著者紹介――藤春都

 ライトノベル書き。筑波大学図書館情報専門学群卒。特技は本を腹の上に載せたまま寝ること。企画書を没られたりプロットを没られたり細かな記事を書いたり色々してます。単行本は『瑠璃色の刃と朱色の絆』(すべてホビージャパンより刊行)。12月1日に新作『天帝学院の侵奪魔術師《ドメインテイカー》』(HJ文庫)が発売されます!

 ウェブサイトは『@fujiharu

イラスト――花園あずき

 ドレスと猫をこよなく愛する漫画家。ペンネームが微妙に変わりました。単行本に『はやげん! はやよみ源氏物語』(新書館)が発売されます!

 ブログ『@genjihikaru

~前回のあらすじ~

■関連記事