燃えてはいませんが
萌えてみました！
秋葉原にある神田消防署に萌えキャラが誕生した。キャラクターを描いたのは、ふぉっくす紺子ちゃんでおなじみの永野つかさ先生。名前はTwitterなどで一般公募され、「神田よくみ」に決定した。今後、署内やイベントなどでの活躍が期待されている。
神田消防署のキャラクター「神田よくみ」ちゃん
なぜ消防署に萌えキャラ？
仕掛け人に直撃インタビュー
消防署がなぜ萌キャラを作ったのだろうか？ そしてこのキャラはどのように使用されていくのだろうか？ 神田よくみ誕生に携わった、東京消防庁 神田消防署 予防課に話をうかがった。
秋葉原UDXの近くにある神田消防署
――なぜ萌えキャラを制作することになったのでしょう？
【予防課】 神田消防署でしか作れないキャラクターを通して、神田消防署のPRをするのが目的です。
――動物などのゆるいキャラではなく美少女にしたのは、やはり秋葉原という土地を意識してのことですか？
【予防課】 はいそうです。秋葉原は萌え文化の中心ですからね。
神田消防署エントランスのいたるところに、神田よくみのポスターが貼られている
――神田よくみという名前の由来は？
【予防課】 江戸時代のことですが「一番組よ組」という町火消しが、この地区を担当していました。それにちなんで、よ組→よぐみ→よくみとなりました。
――おお、名前も消防つながりなんですね！
【予防課】 といっても公募で決めた名前ですけどね。応募して下さったみなさんが、しっかり由来まで書いてくれていて。どの名前にするか、それはもう悩みに悩みましたよ。
表彰式に使うバックシート
秋の火災予防運動のポスター
――イラストを永野つかさ先生にお願いした経緯を教えて下さい。
【予防課】 秋葉原には、それこそものすごい数の萌えキャラが氾濫しているじゃないですか。そこでまず美少女系雑誌などを買って勉強したんです。その矢先に、ベルサール秋葉原で「アキバ大好き！祭り」というイベントが開催されたんですね。そこに出展していたサンコーレアモノショップさんの萌えキャラが目に止まりまして。なんだか優しい感じのイラストだなぁと。そこで店長さんにイラストを書いた人をご紹介いただいたのがきっかけです。
――ということは、たまたま気に入ったイラストがあって、それを描いたのが永野つかさ先生だったと……
デザイン案
キャラデザインが決まったら着色の打ち合わせ。この段階ではポンプ車が腰にデザインされている
【予防課】 そうなんです。永野さんがASCII.jpで漫画を連載していることも当時は知りませんでした。イラストを依頼した後に永野さんの経歴を知って、うわ～すごい人にお願いしてしまった！ と驚きました。しかも、ボランティア同然で制作をお願いしてしまって……
――えっ、費用を払ってイラストを依頼したんじゃないんですか？
【予防課】 消防署は萌えキャラに割ける予算がないので、ほとんど金額をお支払いできません。だからほぼボランティアとしてご協力いただいたわけです。運良く、永野さんにご快諾いただき、この企画が実現できました。永野さんとは打ち合わせの時に初めてお会いしたのですが、この方なら安心して任せられると思いましたし。
――ではトントン拍子に話が進んだわけですね。それっていつ頃の話ですか？
【予防課】 10月半ばだったと記憶しています。11月9日から始まる秋の火災予防運動でこのキャラクターを披露したかったので……。イラストをお願いしてから、すぐにキャラクターの候補をいくつか永野さんからいただき、こちらで検討しました。ショートカットがいいとか、いろいろな意見が署内でも飛び交いましたよ（笑）
――最終的にはロングヘアーに落ち着いたわけですね。
【予防課】 そうなんです。その後、髪の色をどうするか検討しましたが、消防ということで水をイメージしたカラーにしました。ちなみに衣装は最初から制服と決めてました。
――なるほど。ところで腰に付いているデレ顔のキャラは、いったい何ですか？
【予防課】 東京消防庁のマスコット「キュータ」です。119番や救助といった消防に関する“キュー”に、助けるの“タ”でキュータです。
――これは失礼いたしました。まさか元ネタがあるとは思いませんでした。では最後に、「神田よくみ」ちゃんの今後の活動について教えて下さい。
【予防課】 まずは11月9日から15日までの秋の火災予防運動で活躍します。具体的にはポスターの掲示やポケットティッシュの配布などになります。ポケットティッシュは神田消防署の受付にも、少数ですが用意してございます。先着順での配布になりますが、ご興味のある方はお気軽に神田消防署までお越しください。
――本日はありがとうございました。
【予防課】 神田よくみの今後の活躍にご期待ください！
神田消防署の受付脇にてポケットティッシュを配布。取材時には、消防法令違反対象物をウェブサイトで確認できる公表制度のテッシュを配布していたが、9日からは神田よくみちゃんのティッシュに変える予定だという
取材を終えて……
消防署というと、なんだか硬いイメージがあったのだが、今回萌えキャラを企画した予防課の方々は、非常に気さくだった。秋葉原という土地に根付いた文化を取り入れ、地元との交流を深めようとするその姿勢に心を打たれたのは言うまでもない。
火災予防運動は毎年、春と秋の2回実施される。春の火災予防運動の時には、新たに妹キャラが誕生していることを切に願いたい。実はその可能性を否定するわけでもなかったので、これは春の火災予防運動も期待できるかもしれない。それまではわれわれも火の元に気をつけ、何事もなく春を迎えたいところだ。燃えるより、萌えて心を癒そうじゃないか。
秋葉原UDXのUDXビジョンでは、毎時28分と58分に神田消防署の告知が映し出される。ここでも神田よくみちゃんの姿が拝める。イラストを描いた永野つかさ先生は、このUDXビジョンに自分の作品が映し出されるのが長年の夢だったそうだ
