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自動化の次は「Software-Defined Data Center」だ!

EMC会長が語る「新しいアプリケーションとインフラの関係」

2012年10月30日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月29日、EMCジャパンは米EMC 会長兼CEOであるジョー・トゥッチ氏の来日記者会見を行なった。トゥッチ氏は、クラウド、ビッグデータという2つのトピックを中心に、ITがどのように変革していくかについて講演した。

「クラウドはIT業界で過去最大の波だ」

 トゥッチ氏は2001年より社長兼CEOを務め、10年以上にわたって同社を引っ張ってきた。就任当時、ほぼハイエンドストレージのみだった同社のビジネスモデルを大きく変革。劇的な業績回復やマーケットシェア拡大、そして継続的な2桁成長を実現し、EMCを売上高200億ドル以上、86カ国、5万7000人以上の従業員を抱える規模にまで成長させた。こうした業績から、米国のビジネス円卓会議(Business Roundtable)を形成する企業経営者150名の1名に選ばれているほか、CEOネットワークや社会政策提言団体などの要職を務めている。シスコのジョン・チェンバーズ氏、オラクルのラリー・エリソン氏、シトリックスのマーク・テンプルトン氏とともに、長期政権を保ち続けるIT業界のカリスマCEOの1人といえるだろう。

米EMC 会長兼CEO ジョー・トゥッチ氏

 2008年以来の来日となった今回の記者発表会では、2012年度の売り上げ予測が216~217億ドルにおよぶこと、研究開発費に11.5%を費やしていること、株式の時価総額が550億ドルに膨らんでいることなど、VMware、RSAを含むEMC全体の業績を概説。続いて、クラウドとビッグデータという2つのトレンドが、ITやビジネスにもたらす波について語った。

 まずクラウドに関しては、IT業界で過去にメインフレームやPCの台頭、クライアント/サーバー型システムの隆盛など、いくつもの波を経験しており、今回もその波の1つであると説明した。しかし、過去を振り返ると、ミニコンの波に参加した20社は結果的に1社も生き残っておらず、その後にマイクロソフトやインテル、シスコ、EMCなどが台頭してきたという。トゥッチ氏は、「こうしたIT業界での波は、2つの特徴がつねに存在していた。破壊的でありながら、一方で機会をもたらせてくれるということだ」と述べ、クラウドの波が今までで最大級の波になるだろうと指摘した。では、CIOはこのクラウドの波にいかに対応すべきか? トゥッチ氏は、アーキテクチャの標準化、ITリソースの仮想化、そして運用管理などの自動化という旅程で、クラウドの移行を進めることが重要だと説明した。

 そして、トゥッチ氏が自動化の次に来るトレンドとして挙げたのが、「Software-Defined Data Center」という概念だ。Software-Defined Data Centerは、SDN(Software-Defined Network)から拡張された概念として、今年のVMware Worldで言及された表現だが、EMCもこの概念を再度確認し、グループとして推していくようだ。トゥッチ氏は「古い世代では、今までアプリケーションがインフラを所有してきた。Software-Defined Data Centerでは、インフラをアプリケーションを分離し、横串でインフラを構築する。アプリケーションがサービスレベルを達成するために、どの程度のインフラが必要かを決めていくのだ。これにより、これまでになかったような効率性やコントロールを得られるほか、選択肢の幅が拡がり、俊敏性を備えることができる」とアピールした。

Software-Defined Data Centerがもたらすメリット

 一方、ビッグデータについては、全業種でインパクトをもたらす存在と説明した。現在でも、多くの企業は現在もリレーショナルDBの構造化データを元に意思決定を進めているが、この構造化データの5倍の非構造化データを持ち、3倍の速度で増加している。さらにインターネット上のデータ、パートナーの情報、そして公共の情報などを活用することで、よりよい意思決定が可能になるという。さらに「クラウドの技術を用いることで、予測に基づいた意思決定をリアルタイムに行なっていける」と、両者の関係について言及。「今後、ビッグデータを使わずにビジネスを変革するのは不可能だ」とまで断言した。

企業買収や柔軟な組織改良が勝利の秘訣

 発表会の後半では、質疑応答が行なわれ、トゥッチ氏は過去73社にもおよぶ企業買収を成功に導いた秘訣を説明した。「重要なのは、戦略とビジョンにあう買収をすることだ。そして、買収する企業の従業員や開発者などを両腕を拡げて迎えるということだ。横にいる山野も買収した企業から来ている(現EMCジャパン社長 山野修氏、元RSAセキュリティ)。そして、買収した企業に対してより大きな開発費を提供し、すぐにジョイントして市場展開を進めることだ」(トゥッチ氏)という。

記者からの質問に答えるトゥッチ氏

 また、情報システム部からマーケティング担当者がITを活用するというユーザー主導型ITへの対応に関しては、VMwareにパット・ゲルシンガー氏、PaaSの構築やビッグデータ関連にポール・マリッツ氏など「スターのような経営者」(トゥッチ氏)を適材適所に据えた人事戦略を挙げ、組織として準備ができていると説明した。質問を煙に巻いたようにも見えるが、「意図的にこうした回答にしている。われわれは時代の変化と共に、組織そのものを変えてきている」とフォローしており、まさに同社がスローガンに掲げる変革(TRANSFORMATION)に柔軟に対応していく姿勢を示したかったようだ。

 ストレージというある意味レガシーなIT装置を時代にフィットするよう育てあげ、新しい分野に果敢にチャレンジしてきた同氏の戦略が正しかったかは、その業績や市場でのプレゼンスを見れば分かるとおり。ビッグデータ事業の立ち上げ、SMB市場の製品投入、そして講演でも言及されたSoftware-Defined Data Centerの普及など同社のチャレンジには、今後も注視していきたい。

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