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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第175回

2013年のGeForceはKepler 2.0の「GK114」を3月投入?

2012年10月29日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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GTX 660のGPC削減は、
消費電力を減らすため?

2012~2013年のNVIDIA GPUのロードマップ

 GeForce GTX 650と同じく2012年9月には、ミドルレンジ向けにGK106コアの「GeForce GTX 660」が発表される。こちらはCUDA Core数が960個で、GPC換算で言えば2.5個にあたる。おそらく内部的にはGPCを3基搭載して、うち1基についてはSMXを半分無効にする、という構成になっていると思われる。

GeForce GTX 660搭載のMSI製ビデオカード「N660GTX Twin Frozr III OC」

 なぜそのような構成にしたのか明確ではないが、GK104の歩留まりがかなり高いことを考えると、おそらく歩留まり対策というよりも、消費電力対策ではないかと思われる。GeForce GTX 660は外部電源が6ピン×1ですむのが売りのひとつだが、逆に言えば、これに収めるためにSMXを1基無効にしたのでは、ということだ。ちなみにメモリーバスはGeForce GTX 660 Ti同様に、192bitのGDDR5が6GHzで接続される。

 GK106シリーズの最後が、2012年10月に発表された「GeForce GTX 650 Ti」である。「650」という型番ではあるが、コアそのものはGK106を利用している。低価格化にあわせてGPCを2基相当(768 CUDA Core)に減らしたり、動作周波数を下げたり、メモリーバスも128bit化してさらに転送速度も5.4GHzまで落とすといった配慮をして、性能の差別化を図った製品である。

Kepler 2.0はGeForce GTX 780が
2013年3月頃に投入?

 それでは今後のロードマップの話をしよう。まず気になるのは、「GK110」こと「Tesla K20」の存在である。Tesla K20は2012年5月にアメリカで開催されたGTC2012で初公開されたもので、製品投入は2012年第4四半期中、とされている。

 現時点ではTesla K20の詳細は明らかにされていないが、Fermi世代の「Tesla M2090」と比べて、3倍の倍精度浮動小数点演算性能があるとしている。SMXの数は15基だが、歩留まり改善のために実際に使うのは13基だそうで、つまりGPCは8基となる。正確なダイサイズは不明だが、総トランジスターは71億個で、GK104のほぼ倍である。これはGPCの数が2倍であることからもうなづける。そうであればダイサイズもおおむね2倍になるはずで、600mm2弱という代物になる計算だ。

 さて問題は、これを本当にグラフィック向けに投入するのかである。ネット上の噂では、GK110を「GeForce GTX 780として投入する」という説と、「GK110は投入しない」という説がある。筆者は、GK110を投入しない方に一票を投じたい。というのは、どう考えてもSLI方式で、後述の「GK114」を2つ搭載するほうが楽だからだ。

 おそらく性能面でも、GK100はGK114×2にかなわないだろう。GK110はメモリー帯域から考えると、320bitないし384bitのメモリーバスを持つと考えられる。これは倍精度の演算の格納には足りても、単精度演算の格納にはやや不足する。ゲーム用途では単精度がメインだから、SMXの数に比してメモリーバスの帯域が十分ではなく、これが性能の足を引っ張ることになりそうだ。GK110で欠陥が多いダイを投入するという考えも、例えば「Tesla K20 LE」といった構成で、ローエンドのTeslaを作るほうが考えやすい。これらの理由により、今回のロードマップにGK110は含まなかった。

 最後に「Kepler 2.0」、あるいは「Kepler Refresh」と呼ばれている2013年の製品ラインについて説明しよう。40nm世代と同じく、28nm世代もここで足踏みをすることになる。TSMCは現在の28nmに続いて、20nmのプロセスを2013年中に立ち上げるとしている。公式発表(英文)によれば、20nmプロセスは2012年中に技術検証が完了するとしており、これがうまくいけば、2013年にまず「Risk Process」※2の生産を開始。ここで問題がなければ、2014年に本格的な20nmプロセスの量産が開始される予定だ。
※2 失敗のリスクが大きいことを前提にしたプロセス。

 逆に言えば2013年は、20nmプロセスの生産があったとしてもごく少量で、これではGPUの供給をまかなうのは到底不可能だ。携帯電話向けも同様なので、2013年はこの20nmプロセスを使ったエンジニアリングサンプル品が出てきて、これを使って機器の設計や評価を行なう年になるだろう。ようするに量産品に関しては、2013年も28nmで踏ん張るしかないわけだ。

 これにあわせてNVIDIAは、Keplerを若干更新する。といってもマイクロアーキテクチャーの刷新はなく、若干のアーキテクチャーの改良と、プロセスの改良による低消費電力化、および高速化がメインである。Kepler 2.0はKepler世代と比較して、10~15%ほどの高速化が可能、ということになっている。

 一番最初に登場するのはGK104の改良版である「GK114」で、これが早ければ「GeForce GTX 780」として2013年3月、遅くとも5月あたりを見込んでいるようだ。これに続き、GK114のままシェーダーなどを無効化した「GeForce GTX 770」と、GK114を2つ搭載した「GeForce GTX 790」が、どちらも2013年6月開催の「COMPUTEX TAIPEI 2013」前後に登場するものと見られている。

 一方メインストリーム/ローエンド向けはやや遅れて、2013年8月前後に「GK116」および「GK117」が、「GeForce GTX 760」「GeForce GTX 750」として投入されることになりそうだ。また図には入れて居ないが、市場の動向を見ながら「Ti」付きの製品も投入されることになるだろう。

 また2012年中は28nmプロセスの量産の遅れから、引き続きOEM向けに投入されたFermiコアのGeForce GTシリーズや「GeForce 605」だが、さすがに2013年には、全量がGK106/GK107ベースに切り替わると思われる。ただ、型番そのものがどうなるかは、現状不明である。またも同じ型番のまま、GK107ベースに変わる、といった可能性も十分ありそうだ。

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