ハードとソフトの融合が
他社タブレットと違った体験を生む
例えばiPad miniは、7.9インチという比較的大きな液晶を搭載しながらも、そもそもの目的である片手で持てるサイズとして幅を134.7mmに抑えている。そのため、iPad miniの液晶フレームは従来のiPadなどと比べるとかなり小さくなっており、本体を手に持つ時に誤って液晶を親指で押さえてしまうことも多い。
そうした、意図しないタッチが誤操作につながらないように、ソフトとハードの連携によって、親指が何かを操作しようとしているのか、それともただディスプレーの上に置かれているだけなのかを判断する仕組みが搭載されている。
Googleとメーカーのソフト部門とハード部門、そしてキャリアの間の調整によって生み出されるほかのタブレットで、こうしたハードとソフトの連携が必要な配慮ははたして生み出されるのだろうか(ぜひ生み出してほしいと思うが……)。
こうした、アップルの徹底的な使いやすさへのこだわりの裏には、製品をつくる際の膨大なディスカッションがあるはずだ。
故スティーブ・ジョブズ氏は、こんな言葉を残した。
「何かの問題を解決しようとして、それに取り組み始めたとしよう。そこで真っ先に浮かんできた解決策は非常に複雑なものだ。そんな時、多くの人はそこで止まってしまう。しかし、その後も取り組みを続け、問題と接し続け、タマネギの皮をもう数枚はがしていくと、しばしば非常にエレガントでシンプルな解決方法にたどり着くことがある。多くの人々は、そこにたどり着くまでの時間やエネルギーを費やしていない」
このモノづくりの姿勢は、アップルのDNAにしっかりと組み込まれているようで、これが先ほど紹介した91%と9%の間に大きな隔たりを作っているのだと思う。
もちろん、こうした部分は、スペックシートと値段だけを見て買い物をする人には、分からない良さかもしれない。
しかし、友達にせよ伴侶にせよ、人生を本当に豊かにする選択は、もっと別の基準で行なわれるべきだろう。
9.7インチiPadも新しく生まれ変わった
今回のアップルは、iOS機器をさらに前進させている。iPad miniに加えて、つい半年前に発表されたばかりの9.7インチiPadも刷新したのだ。新しいA6XというCPU、日本のソフトバンクモバイルとauにも対応したLTE接続、2倍速い無線LAN接続、そしてなんといっても大きいのが、新たに「iPhone 5」から採用されたLightning端子の採用だろう。
わずか半年で新製品が出てきたことで第3世代のiPadを購入した人はショックかもしれない。しかしだからこそ、新しいスタンダードとなるLightning端子以外ではあまり変えず、スピードなど違いをとらえにくい部分の変更にとどめているのがうまいところだ。
とはいえ、CPUの速度が2倍、グラフィックスパフォーマンスも2倍、さらにWi-Fi接続も2倍となれば、アプリによっては相当な使い勝手の差を生み出すことだろう。
そして今回、ついにiOS系新製品がすべてLightning端子を備えたことで、デジタルカメラの接続を可能にするCamera Connection Kitに始まり、テレビやプロジェクターを接続する「Lightning Digital AVアダプタ」(HDMIアダプター)、「Lightning - VGAアダプタ」(VGAアダプター)など、Lightning端子に対応した製品が登場した。
ソフトバンクモバイルに加えてauにも対応
日本では、なんといっても、ソフトバンクモバイルに加えてauにも対応したことが大きなポイントだろう。
iPhone 5発売開始直後には、双方でLTEの基地局の量と質で議論を戦わせ、テザリング機能の提供でも競い合った両社だが、バッテリーの動作時間が10時間ほどのiPadやiPad miniでもテザリングに対応させてくれると、荷物となっているガジェットが減って助かる人が多いはずなので、ぜひとも期待したいところだ。
iPadは、最初の製品の発売開始から2年あまりですでに1億台を販売しているという。世界中の学校の教室はもちろん、テレビ局、救命隊など、かなり意外な現場でもどんどん使われ始めている。発売開始後の最初の週末だけで500万台を売り、歴史上もっとも速いペースで売れた携帯電話の座を欲しいままにしたiPhoneともども、ものすごい勢いを作っている。
iPhone 5と新しいiPod touch、nano、shuffleに加えて、今回iPad mini、第4世代iPad(iPad Retinaディスプレイモデル)も並び立ったことで、クリスマスに向けた秋冬商戦は、大いに盛り上がりそうだ。
今回発表されたMac製品については、レポート後編で紹介しよう。