ソフトバンクは、アメリカで第3位の携帯電話事業者であるSprint Nextelに約201億ドル(約1兆5700億円)を出資し、子会社化することを発表した。ソフトバンクグループとなる、イー・モバイル、ウィルコムなどを合わせた連結売上高は約6.3兆円、契約数は9600万になり、日米では最大級の携帯キャリアの誕生となる。
17時から都内で開催された記者会見には、ソフトバンクの孫正義社長に加え、Sprint NextelのCEOであるDan Hesse氏も登壇。今回の取引内容や意気込みなどについて語った。
孫社長は、まず16才のときに初めて渡米したときの思い出話から始まり、海外展開が長年の念願であったことにふれ、「これは厳しい挑戦だと思う。文化も違う。もう1度ゼロから始める必要がある。(同時に)挑戦しないことがさらに大きなリスクになると考えた」とする。
その買収相手であるSprint Nextelだが、アメリカ国内ではVerizonとAT&Tという2強には大きく離された第3位であり、決して現在の業績も万全なものではない。ただし、この状況は孫社長にとっても望むところという(ボーダフォン日本法人買収時のシェアも同程度)。
アメリカではスマートフォンの割合が日本以上に高く(3.5億契約のうち1.7億契約がスマートフォン)、支払いにポストペイを利用している割合も多い。一方で、アメリカの携帯事業者が抱えている問題が速度の遅さ。そして上位2社による寡占。これらの要素は逆に大きな成長ポテンシャルを持っているという見方をする。
一方で、Sprint Nextel買収の報道が報じられて以降、ソフトバンクの株価が大幅に下落するなど、大規模な投資に対するネガティブな声も少なくない。プレゼン内でこの声に応えるかのように、孫社長は「自信があります」と断言する。
具体的な根拠としては、Sprint Nextel自体が、Nextelのインフラ整理やiPhoneの導入などにより、2008年前後の純減状態から純増に転換していること(「V字回復していたSprintをベストタイミングで買収できた」と発言)、また過去に日本テレコム、ボーダフォン、ウィルコムといった経営的に苦境状態にあった3社を復活させた実績をアピールした。
また、今回の出資にともなう借入金の返済についても、やはり「自信があります」と発言。過去の実績に加えて、会社の利益に対する負債の倍率では、ボーダフォン買収時より小さいと主張する。もっともそれらを踏まえての株価下落だけに「どかーんと借金して、ほぼ返し終わったところで、また大型買収をして、投資家の皆さんにはいい加減にせえと言われるのでしょうが、正直その気持ちはわかります」といった冗談混じりのコメントも飛び出した。
前述したように、今回の買収によって、ソフトバンクグループの契約数は9600万に達し、ドコモやKDDIを大きく上回る。これについても「ドコモより遥かに大きな規模の会社になった」「KDDIを抜いて国内2位になるといった話はもはや誤差」とグラフを用いて誇らしげに語った。
なお、Sprint Nextel傘下で、全米主要都市にWiMAXサービスを提供し、TD-LTE網の構築も予定しているClearwire、一部メディアで報じられているアメリカ第5位の携帯キャリアであるMetroPCSの買収については、特にコメントはなかった。