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米政府、HuaweiとZTEの通信インフラを導入しないよう推奨

2012年10月09日 22時00分更新

文● 末岡洋子

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 米下院情報特別委員会(HPSCI)は10月8日、中国のインフラ機器ベンダーであるHuawei TechnologiesとZTEの2社に対する調査レポートを発表した。結論として、HuaweiとZTEのインフラ機器やサービス調達を検討するアメリカ企業に対し、国家保安上のリスクを理由に「他社を検討することを推奨する」としている。ただし、スマートフォンなどの携帯端末は問題なしのようだ。

携帯の基地局など、インフラビジネスではすでに世界2位。スマホなどの端末でも成長著しいHuaweiだが、米当局から横やりが入った

 このレポートは、11ヵ月にわたる調査の末に発表したものだ。この調査は2011年初めの暫定調査を経て同011月に本格的に開始、2012年2月と4月にはHPSCIの調査員が中国に渡り、深センにある2社の本社で代表者に聞き取り調査を行ったという。

 その結果、次の5つの推奨を行っている。

1. 米政府のシステムおよび契約企業は、とりわけ機密情報を取り扱うシステムについて、HuaweiとZTEの機器や部品を排除すべきだ。対米外国投資委員会(CFIUS)は、国家保安を考慮してHuaweiとZTEが関係する買収や吸収合併を阻止しなければならない。

2. アメリカのネットワークプロバイダー(通信事業者)やシステム開発社は、HuaweiとZTE以外のベンダーを利用することを強く奨励する。

3. 中国のテレコムセクターの不公正取引慣行を調べる必要がある。特に中国政府による主要企業の財務支援に注意を払う必要がある。

4. 中国企業はすぐにでも、よりオープンかつ透明性のある企業になるべきだ。特にHuaweiはもっと透明性を改善し、米政府の法施行に対応すべきだ。

5. 下院の司法委員会は、国とのつながりを持つテレコム企業によるリスクへの対応を改善するための法制定を検討すべきだ。

 「われわれの重要なシステムに入り込むバグ、ビーコン、バックドアなどはすべて、破壊的、壊滅的なシステムダウンのドミノ効果につながるリスクがある。レポートが示すように、HuaweiとZTE、および2社が共産主義の中国政府とのつながりについて、われわれは深刻な懸念を抱いている。中国はサイバー諜報活動の主要な犯人がいる場所として知られており、今回の重要な調査の後も、HuaweiとZTEに対してわれわれが抱く深刻な懸念を払拭することができなかった」と記している。

 60ページにわたるレポートでは、たとえば「Huaweiはアメリカでの業務、資金調達、経営管理について十分な情報を開示しなかった」とし、深センにある親会社から完全に独立した子会社であるというHuaweiの主張を覆すものだなどとしている。また、Huaweiが研究開発プログラムの詳細を開示しなかったとし、自社の研究開発を中国の軍部や情報部に提供していない、というHuaweiの主張を覆すものだとも記している。

 HuaweiとZTEはともに、基地局やルーター、スイッチなどのネットワークインフラだけでなくスマートフォンやモバイルルーターなど端末事業も展開しており、米国でも販売されている。Reutersによると、同日ワシントンD.C.で委員会のメンバーが応じた記者発表会では、これら携帯端末については今回の不買推奨の対象外としたという。

 Huaweiは現在、ネットワークインフラ市場ではEricsson(スウェーデン)に次ぐ2位で、Nokia Siemens NetworksやAlcatel-Lucentをしのぐ存在となっている。ZTEは5位である。

人民解放軍との関係を取りざたされるHuawei

 2社のうち、特にHuaweiは創業者兼CEOのRen Zhengfei氏が人民解放軍に所属していたことがあるため、中国政府との関係が取りざたされてきた。2011年には、米国企業の3Leaf社の資産買収に対しCFIUSの横やりが入り、買収が成立しなかったという経緯もある。HuaweiはZhengfei氏と中国政府との結びつきについて否定している。

 同社はこのレポートについて声明文を発表、「委員会の懸念が合法(正当)なものであることを実証する明確な情報や証拠を欠いている」と反論している。また、委員会の調査に「オープンかつ透明性のある形で協力した」とし、研究開発エリア、トレーニングセンター、製造拠点を開放し、多数の資料を提供したなどとも主張している。

 HuaweiはIPOに向けて準備を進めているといわれているが、今回のレポートによりアメリカの証券取引所での上場は難しくなったとみられている。また今回のレポートにより、国家間の緊張が高まる可能性もありそうだ。

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