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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 ― 第2回

Facebook10億人突破!競合はSNSではなく「SMS」?

2012年10月10日 12時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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 日本では体育の日で3連休となり、行楽に行かれた方も多かったのではないでしょうか。米国でも、10月8日は「Columbus Day」と呼ばれる休日で、3連休。あのクリストファー・コロンブスが1492年10月12日に米国大陸にやってきたことを記念しており、サンフランシスコでは、ヨットレースのアメリカズ・カップや、米国空軍による航空ショー「ブルー・エンジェルス」などのイベントが目白押しの週末でした。

 今週の話題は、10億人を突破したFacebookのつながりと「メッセージ」についてです。

10月5日・6日に開催されていた、米国空軍Blue Angelsの航空ショー。米国も3連休で、サンフランシスコは様々なイベントが目白押しでした

世界が小さくなっていく
ネットワークに思いを馳せる

 10億人というとインドの人口に匹敵する規模で、国で言えば世界3位。世界人口の1/7がFacebookアカウントを持っている計算になります。使い古された表現ではありますが、世界が小さくなっていくのが目に見える形で進行している様子が分かります。

 「スモールワールド現象」の実験は、手紙の時代から行なわれてきました。知らない人の写真と名前を伝え、知っていればその人に、知らなければ、あなたの友人で知ってそうな人に届けて下さい、という実験。米国内や日本国内で試しても、だいたい5~7人を介して目的の人に手紙が届くという法則から「六次の隔たり」と呼ばれています。

 mixiでも、2008年に同様の実験が行なわれました。平均最短人数は5.4人で、7人を介せばmixi内の98%の人に到達できるという計算結果でした。

 手紙の実験とSNSで違う点は2つ。手紙は住所さえ分かれば誰にでもメッセージが届けられる点で、必ずしも知り合いでなければならない必要性はありません。一方SNSの場合、コミュニティー内の「検索」が可能であるため、名前と顔を知っていれば、その相手が検索対象から外していない限り、知らない人でも直接発見して、メッセージを送ることができるわけです。

個人の無駄話と、企業の無駄話は違う

 世界は小さくなっている。ではなぜ人々は世界中の人と「つながろう」としないのか? と言われれば、答えは、多くの人にとってその必要性がないから。必要な人と連絡を取り合うことが目的であれば、5000人以上の人とつながる必要はないでしょう。さらに言えば、必要な友達とであれば、無駄話やネタもコンテンツになります。

 一方で、Facebookをビジネスで活用しようという動きは、企業にとって、顧客と直接結びつくことがビジネスにとって有効だ、と見ているからです。では友人との無駄話のように、企業と人が無駄話をすれば意味があるか、と言われるとそうでもありません。ただFacebookに投稿した写真に「いいね」を付けてもらったり、コメントしてもらっても、それだけでは売上につながらないでしょう。

 そこでFacebookは、2011年に開催した開発者向けイベント「F8」で披露された新しいOpen Graphで、Facebookのアプリに「動詞」を設定できるようにしました。これでは「Like」(いいね)しか表現方法がありませんでしたが、例えば音楽であれば「Listen」、食品やレシピであれば「Cook」や「Eat」、航空会社であれば「Fly」。より具体的な行動を動詞で表現して、企業の製品やサービスについて、ユーザーがつながっている友達に「何をしたのか」を伝えられるようになりました。

 これとスマートフォン化、モバイル対応が相まって、Facebookではその人がどこで、何をしているのか、という情報がよりクリアにニュースフィードに載るようになります。企業がユーザーに具体的なアクションを提供し、伝えられる、という良いアイデアですが、シリコンバレーで働くプログラマーや起業家に話を聞くと、反応は冷ややか。いくら仲の良い友人でも、一挙手一投足まで知りたいわけじゃないし、知られたいわけでもない、と言われると、まさにその通りです。

 さらには、「そうした知る必要がない情報ばかり流れてくるようになると、Facebookを長い時間開きっぱなしにしたくなくなる」という意見もあり、情報のフィルタリングができると言う点でTwitterの方が優れているのではないか、という意見も見られます。無駄話やネタがコンテンツになる、と指摘しましたが、無駄話もネタも「面白い」とその人が選んだ話題だと考えれば、誰のフィルターもかかっていない情報に、需要はないわけです。

SNSの背後にある「SMS」が、LINE爆発の立役者

 Facebookは友達同士でつながる世界のスタンダードになりましたが、情報のフィルターの問題や友達の管理の面倒さが表面化し始めています。

 しかし、メッセージ機能は評価されているサービスで、アプリの出来も上々です。Facebookでつながっていれば、パソコンからでもスマートフォンからでも、ケータイからでもメッセージが送れる仕組みになっています。チャットや通常の電子メールからも送信でき、「必ずその人にメッセージが届けられる」仕組みになりました。

 グループでのメッセージングもとても便利で、日程調整なども1つのスレッドで済むので手軽になりました。

 しかしそれは、Facebookを全員がやっているという前提の話。筆者の友人の間でも、面倒だからとか、プライバシー的にどうだか分からない、スマホがない、と言った理由でFacebookに参加していない人がいるため、結局PCメール、ケータイメール、電話などを織り交ぜて連絡を取っています。

 日本では、「LINE」が事実上、スマートフォンのメッセージサービスにおけるスタンダードの地位を獲得しました。電話番号さえ知っていてLINEをインストールするだけでメッセージや無料通話が交わせるようなります。アジアにも広がり、現在ユーザー数は6000万人を越えるようになりました。

 電話番号でメッセージを送受信するSMS(英語ではText)がいまだに広く使われている様子を見ると、プロフィール作成を伴うFacebookに移行するより、SMSの延長で利用できるLINEの方が、海外でも手軽でしょう。

 実はLINE以外にも、「What's app」「Kakao Talk」「BlackBerry Messenger」(BBM)など、電話番号をベースとしたメジャーなメッセージサービスがあります。

 海外でこれらのサービスを使う理由は、SMSの送受信料金の節約。日本でもSMSの送信にはお金がかかりますが(受信は基本無料)、それよりも料金がパケット代に含まれるケータイメールが普及したため、1通あたりの料金を気にすることはありませんでした。しかし、米国ではSMSが一般的なうえ、何のプランにも入っていない場合、送受信でそれぞれ20セント(約8円)かかります。

 また、SMSの1通あたりの制限は160文字。Twitterでご存知の通り、日本語と英語では、その情報量は大きく違い、結果として英語のSMSの数は増えていきます。また海外への送信には別途国際SMS料金がかかってしまいます。

メッセージのお国柄と、Facebookのチャレンジ

 メッセージングサービスは、このSMSの送受信料金を回避する目的で使われています。特にBBMはBlackBerryの普及、また現在は劣勢ながらシェア低下を防いている大きな理由でもあり、中東やエジプト、中南米では依然として主要な連絡手段になっています。

 さまざまな国から留学生が集まる地元バークレーでは、日本人はLINE、韓国人はKakao Talk、ヨーロッパ方面はWhat's Appと、地域ごとに違うメッセージサービスを使っていて、お国柄が出る点が面白いですね。

 現在、Facebookは、人のつながりの上に、メッセージや写真だけでなく「ギフト」の要素を載せようとしています。Facebookが発表した「Gifts」は、誕生日や記念日に、友達に商品を送ることができる仕組みで、受け取った人が送り先や洋服のサイズなどを選ぶことができる点も新しいデジタルのギフト観を作ってくれそうです。

 もちろんギフトを贈った、受け取ったという情報もFacebookのニュースフィードに流れるでしょうが、いわゆるソーシャルメディア的なオープンな情報のやりとりから、より個人的な言葉に限らないやりとりへと進んでいく方向性が、Facebookに見えはじめた小さな変化と位置づけることができるでしょう。

 では、もしLINEが「ギフト」に対応したら? おそらく誕生日や記念日などを他の友達が知りたくなるはずだし、興味があることや趣味なども欲しい情報になるでしょう。Facebookのように、フィルターのかからない情報をいかに排除しながら、メッセージ以外の流通を可能にするかがポイントになるのではないでしょうか。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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