やっと発売!キヤノンのミラーレス「EOS M」を徹底レビュー!!

文● 周防克弥

2012年10月09日 15時33分

 キヤノンが満を持して投入したミラーレス一眼カメラ「EOS-M」を皮切りに、各社ミラーレス一眼やミドルクラス一眼レフデジカメを相次いでリリース。この秋デジカメを買おうと思っているなら無視はできない存在だ。

 本特集ではそんな秋のレンズ交換式デジカメについて、実写撮影サンプルを交えて紹介していく。第1回目となる今回は、7月の発表から約2ヵ月の期間を経て、やっと9月末に出荷になったばかりのEOS M(ボディーのみの実売価格は7万円前後)についてレビューしていく。

 なお、2回目ではオリンパス「Pen Lite/Pen mini」やパナソニック「LUMIX G5」などのミラーレス一眼を交え、使い勝手や画質などを横並びで比較する。3回目はニコン「D600」やキヤノン「EOS 6D」など、フルサイズセンサー搭載ながら20万円前後という新時代のデジタル一眼レフについて紹介していく予定だ。

ちょっと気になる秋の新モデル達

 上述のように今回はEOS Mをメインで紹介するのだが、その前にまず、この秋~冬にどんなミラーレス一眼が登場するのか全体像をつかんでもらう意味で最新モデルを軽く紹介していこう。

オリンパス「E-PL5」

 同社主力モデル「Pen」の下位機種に位置する「Pen Lite」の最新機種。10月上旬発売予定で、予想実売価格は標準ズームキットが8万円前後、ダブルズームキットが10万5000円前後だ。

 約1605万画素の「LiveMOS」センサーを採用するマイクロフォーサーズ機で、同社の上位機である「OM-D」と同等の画質が得られるという。可動式のタッチパネル液晶は上方向に180度回転することで自分撮りが可能。アートフィルターは12種類搭載し、外付けのEVFにも対応している。

オリンパス「E-PM2」

 E-PL5と同時に発表になったエントリーモデル(Pen mini)。10月下旬発売で、予想実売価格は標準ズームキットが6万円前後、ダブルズームキットが8万5000円前後となる。

 E-PL5から一部インターフェースが省略され、タッチパネル液晶が固定式になっている。しかし、撮像素子などの基本スペックはE-PL5と同じで、OM-Dと同等の高画質な写真が撮れるというコストパフォーマンスに優れたモデルだ。

パナソニック「DMC-G5」

 同社主力モデルとなるマイクロフォーサーズ機。すでに発売中で、実売価格はダブルズームキットが9万円前後、電動ズームレンズが付属するキットが10万円前後だ。

 撮像素子は約1600万画素のLiveMOSセンサーを採用する。先代の「G3」に比べてややマッチョな外観になった。背面には可動式のタッチパネル液晶を搭載するが、EVFも内蔵しており一眼レフスタイルで利用可能。背面液晶はひっくり返してしまえるため、アイレベルで撮影する場合には邪魔にならず傷防止にもなる。

ニコン「Nikon1 J2」

 ニコンのミラーレス機最新モデル。こちらもすでに発売中で、実売価格は標準ズームキットが7万4000円前後、ダブルズームキットが7万9000円前後だ。

 従来モデルの「J1」から撮像素子は変わらず、1型1015万画素のCMOSセンサーを採用。背面液晶の高解像度化や撮影モードが見直された。撮像素子が小さい分画質的には不利だが、高速なAFや軽快な動作は普段使いに最適だ。

ソニー「NEX-5N」「NEX-6」

 海外ではすでに発表されているものの、国内では未発表となるソニーの「NEX-5R」と「NEX-6」。年内に発売される予定という正式なアナウンスはあったが、あくまで未発表という不思議な状態になっている。

 ともに「NEX-7」の下位機種で、1610万画素のCMOSセンサーを採用し、タッチパネル液晶を搭載。無線LANを内蔵しており、スマホなどからライブビューを確認してシャッターを切ることができる。NEX-6は有機ELのEVFとフラッシュを内蔵。NEX-5Rの上位機種となる。

パナソニック「LUMIX GH3」

 「LUMIX G」シリーズよりも動画を撮ることを意識した「LUMIX GH」シリーズ。その最新モデルの「GH3」は、国内未発表ながらすでに日本語の製品紹介ページがあるという、NEX-5R/6シリーズ同様に不思議な状態にある。

 1600万画素クラスのLiveMOSセンサーを採用。ボディーはマグネシウム合金製で防塵・防滴処理が施されている。さらに無線LANを内蔵し、スマホなどとの連携が可能だ。

ミラーレス戦線にキヤノンが参戦!

 EOS Mはキヤノン初のミラーレス一眼カメラで、その画質や使い勝手への関心は高いはず。まずはスペックをおさらいしつつ、使い勝手についてレポートしよう。

 まず、本体サイズは幅108.6×奥行き32.3×高さ66.5mm、重量は約298g(バッテリー、SDメモリーカード込み)となっている。

 撮像素子はAPS-CサイズのCMOSセンサーで約1800万画素。ISO感度はISO 100から最大でISO 25600相当まで設定が可能だ。

 撮影機能には色彩が選べる「ピクチャースタイル」をはじめ、撮りたい写真の雰囲気を選択することで撮影モードを選べる「表現セレクト」、デジタルエフェクトを加えられる「クリエイティブフィルター」などを搭載。

 さらにタッチ対応の3型ワイド(約104万ドット)液晶パネルを採用するなど、基本的な仕様や機能は同社のデジタル一眼レフ入門機「EOS Kiss X6i」に近い。というよりは、Kiss X6iから光学ファインダーを外して新マウントにしたという言い方が正しいだろう。

精度はいいが速くない「ハイブリッド CMOS AF」

 EOS MとKiss X6iは、撮像素子面に埋め込まれた測距用センサーを用いた位相差検出方式とコントラスト検出方式の「ハイブリッド CMOS AF」を採用する点も同じだ。

 このハイブリッド CMOS AFの動作は精度に関しては問題なく、液晶パネルの触った部分にピントが合うので操作性はいい。だが、正直動作が速いとは言えない。筆者が所有する初代オリンパス「Pen」よりもワンテンポ遅れる感じだ。

 ミラーレスのAF機構を簡単に説明すると、AFの動作には位相差検出方式とコントラスト検出方式の2種類が一般的だ。

 位相差検出は一眼レフで多く使用される方式で、結像面とは異なる測距用センサーを用意する。被写体に対してピントのズレ具合と前後の方向を区別することができ、ピントの合う一点を決定してそこに合わせてレンズを繰り出すといった情報を出すため、ピント位置の前後に動かす必要が少なく比較的速くピントが合う。

 コントラスト検出はその名のとおりコントラストでピント位置を判断する方式で、一番コントラストが高い位置をピントの合う場所と判断する。リアルタイムでピントの合う位置を探しながらレンズ駆動させるため、ピント位置の前後で何回かピントをズラして絞り込む動作をする。このため、位相差検出方式に比べて若干スピードが劣ってしまう。

 EOS-Mは両方の方式を採用するハイブリッドタイプになっているのだが、実際にAFが動いているのを見ると、ピント位置の前後で動く距離が大きい上、複数回往復する場合もある。

 ただし、これはEOS M用レンズ(EF-Mマウント)を使った場合の話。一眼レフ用(EFマウントおよびEF-Sマウント)レンズが装着できる「EFレンズアダプター」を使用して、EOS用のEFレンズを装着すると、専用のEF-Mレンズよりも高速にAF動作するレンズがいくつかあることを発見した。

 専用マウントのレンズよりも速くAF動作するのはなんとなく納得いかない部分もあるが、このあたりの動作はファームウェアアップデートで改善される可能性に期待したいところだ。

 メニューや設定内容はEOSシリーズ共通の見慣れたものだが、シャッターボタン近くに電子ダイヤルがなく、背面側に十字ボタン兼用の電子ダイヤルが備わっている点など、実際に触る部分は同社のコンパクトデジタルカメラ「PowerShot」に近い感じだ。

 25年前に発売されたEOSシリーズの初代「EOS-650」、いやその前の「T-90」で初採用され、Kissシリーズでさえ採用され続けられているシャッターボタン脇の電子ダイヤルが見送られたのは残念。

高感度の画質チェック!

 ここからは実写撮影サンプルを確認していこう。まずは感度から。

 感度設定は通常でISO 100からISO 12800まで。感度拡張機能をオンにすることで「H」(ISO 25600相当)に設定可能だが、ハイライト側の階調を補正し、白飛びしにくくする「高輝度側・階調優先」機能をオンにすると感度拡張をオンにできないため、「H」は選択できなくなる。

感度別撮影サンプル

 ノイズはISO 400あたりから確認でき、ISO 1600を超えると結構目立ってしまう。グラデーション部分を見るとISO 200でもわずかにノイズが出ているのがわかるので、高画質を追求するならISO 100一択になる。

 ISO 3200からは偽色も目立つので、出力するサイズ次第ではきつくなってくるだろう。

簡単に面白い写真仕上げができる
「クリエイティブフィルター」

 エフェクト効果の得られるクリエイティブフィルターの効果を確認してみた。機能としては既にKiss X6iなどで採用されている機能ばかりで目新しさはないが簡単に面白い写真が撮れる。それぞれの項目で強弱、色合いなどの微調整を行なうことが可能だ。

 撮影時だけでなく、記録されている画像に対して効果を適用させることもできる。複数の効果を重ねがけすることもできるので、創意工夫によってかなり面白い写真に仕上げることもできそうだ。

EF-Mマウントレンズの実力は?

 現在、EOS-M専用で用意されたレンズは、約35mm相当の「EF-M22mm F2 STM」(22mm/F2.0、希望小売価格3万円前後)と、約29mm-88mm相当の「EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM」(18-55mm/F3.5-5.6、希望小売価格3万5000円前後)の2本だけだ。

 汎用性の高いちょい広めの準標準レンズと一般的な3倍ズームで、焦点距離がかぶってしまっているため、デジイチビギナーがダブルレンズキットを購入すると、ちょっともったいない印象を受けるかもしれない。

EF-M 22mmで撮った撮影サンプル

 22mmは中央部が絞り開放からなかなかシャープな印象。F5.6、F8.0付近が一番シャープネスが高くなる。

 周辺部は絞り開放では描写が若干甘く、やはりF5.6、F8.0付近でシャープネスが高くなる。F11以降では全体に描写が甘くなってしまうのであまり絞らないほうがよさそうだ。

EF-M 18-55mmで撮った撮影サンプル(18mm側)

 上は18-55mmの18mm側の撮影サンプルだ。絞り開放では若干シャープネスが低く、F5.6まで絞るとシャープネスが向上する。F11以降はシャープネスが落ちるので、F5.6からF8の間で使うのが一番おいしい。

 歪曲収差は樽型の収差が結構目立ってしまうので、平行線の多い被写体や建築物に使うのはちょっと辛いかも。

EF-M 18-55mmで撮った撮影サンプル(55mm側)

 55mm側でもやはりF5.6からF8.0までがシャープネスが高い。F11以降は絞りすぎでシャープネスが低下している。糸巻き型の収差がわずかに発生しているがそれほど気になるレベルではない。

 22mmはなかなかいい出来だ。薄くて15cmまで寄ることができ、そこそこのマクロ撮影ができるのは嬉しい。

 一方で18-55mmのほうは歪曲収差が目立つのと絞り開放時のシャープネスの低さが残念な点だ。共においしく使えるのはF5.6からF8.0の範囲。22mmに関しては絞りを開けてボケ具合を楽しむならできるだけ被写体を中心部に置くといい。バンバン絞り開放から使って問題ないだろう。

AFの遅さが引っかかるが画質は優秀

 機能は十分に備わっているので問題ないが、やはり気になるのは操作性だ。AF速度は動きの少ない被写体ならばそれほど問題ではないのだが、やはり「速く合焦してほしい」と念じながらシャッターボタン半押しを維持するのはストレスがたまる。

 一方で、何と言ってもEOSのレンズを使える点は大きい。最近は年ごとに新しいデジカメが出てくるのでカメラ本体の価値は正直下がってきてしまっているのだが、大事なのはレンズ資産だろう。EOS-Mは豊富なEFレンズが使える点が一番の利点だ。

 また、ミラーレス一眼の汎用面でも撮像素子は優秀。ボディーサイズがGF3とほぼ同じ大きさで画質はワンランク以上上回っているので、暗いシーンでも安心して撮れる。

 他社のミラーレス機と比べるとAFスピードが遅いものの、動きのある被写体でなければそれほど問題にならない。仕事(商業撮影用)と遊びでは要求されるレベルが違うが、遊びに使うには十分だ。タッチインターフェイスも慣れればほかの機種とそれほど使い勝手に差はなく、直感的に操作を行なうことができる。

 もちろん画質もAPS-Cサイズセンサー採用ということもあり、Kiss X6iと同等の高画質な写真を撮ることが可能。EOSシリーズの入門機としては十分な性能を持っている。

 本体の造りもしっかりとしているし、できるだけ簡単にきれいな写真を撮ることが可能なミラーレスに仕上がっていると思う。

プロ用途ではシーンが限定されるかも

 最後に、筆者の本職はプロカメラマンでありその観点から見た感想を言い添えると、ちょっと運用面で苦労する可能性があると感じた。

 例えばイベントなどでスナップ撮影を行なうにはAF動作がちょっと遅く、スタジオ撮影ではマニュアル設定時に背面液晶が露出をエミュレートしてしまうので真っ暗になる。

 つまり大型のストロボを使うのは無理で、白熱灯や蛍光灯、LEDなどの定常光でライティング必要がある。このように、仕事で使う場合には少しシーンが限定されそうだ。


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