新ファームウェアの意図を深読みする
オーディオのみとはいえ、Apple TVにAirPlayの出力機能を持たせることは、少々理解し難い部分がある。「AirPlayをサポートしたオーディオ機器で音楽を聴く用途があるからでは?」と簡単に結論づけてしまいそうだが、第2世代以降のApple TVにはS/PDIF出力端子がある。どちらを経由しても出力は48kHz/16bitであり、音質重視のオーディオ機器の多くがS/PDIF入力端子を備えていることからすると、あえてAirPlayを選択する理由はない。
それに、Apple TVからホームシェアリングでアクセスしたMac上の楽曲を、わざわざオーディオ機器へワイヤレス送信する意味がない。Mac上の楽曲をオーディオ機器へ出力したいのならば、Macとオーディオ機器を直接S/PDIFまたはAirPlayでつなぎ、操作には「Apple Remote」かiOSアプリの「Remote」を使えばいいだけのこと。わざわざApple TVを経由する必要はない。
Remote | |||
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価格 | 無料 | 作者 | Apple |
バージョン | 2.4 | ファイル容量 | 19.3 MB |
対応デバイス | 全機種 | 対応OS | iOS 4.3以降 |
となると、ひとつの仮説が浮かんでくる。現在Apple TVでAirPlay出力を必要とする場面は少なく、複数のAirPlay(受信)対応デバイスを持つユーザーも多くはないが、「同等のファームウェアで動作しうる新デバイスに搭載されたら?」。あるいは、「今後すべての自社デバイスでオーディオ/ビデオのワイヤレス化を進めるとしたら?」。
その解はおそらくAirPlayにある。Apple TVはいわば“先兵”でAirPlayの旗振り役、可能なかぎり環境を整えたうえで本隊を送り込む、という図式だ。
そういえば、初代Apple TVが発表された当時の2006年、コードネームが「iTV」だったところが「Apple TV」に変更されたことがあった。理由は不明だが、いまにして思えば、「iTV」の名を温存するためだったか……リビングでは主役級のデバイスであるテレビのこと、攻略に6年という月日をかけても不思議ではないはずだ。
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