業界の常識は、世間の非常識
ケイシス代表取締役の栗原 将氏は1998年に起業した。会社員から経営者として、心機一転、ゼロから仕事をスタートさせようと、縁あって畑違いの住宅設備販売業界に飛び込んだ。だからこそ、旧態依然の業界の常識が非常識に映った。
「設立当初は、水道の修理をメインに手がけ、たくさんのお客さまのお宅にお邪魔しましたが、驚いたのは、“言い値”の料金がまかり通る業界だったこと」
例えば、ケイシスでは3万円ぐらいでできる仕事が、他の業者では20万円はかかる。それも特別なことではなくザラにあることで、特に1人暮らしの高齢者には、足元を見た高い料金を請求しているケースがよくあったそうだ。
“言い値”の背景には、中間マージンがかさむことによる料金の不透明さが大きく影響していた。商品はメーカーから、取り次ぎ店、問屋、販売店などいくつも経由して初めて消費者のもとへ届く。工事代金も、出張見積の人件費、外注業者への支払い、下請け職人への支払いなどのコストが発生するため割高になる。そのうえ、工事を依頼した側は、いったい全部でいくらかかるのか、工事が終わるまでまったく見えない。見積で示された金額も適正かどうかは素人では判断できず、「見積のときに隠れて見えなかった部分の費用」として工賃や部材などの追加費用を、“言い値”で支払うしかない人が大勢いたのだ。
「だから、うちは料金を明瞭化し、かつ、ムダな中間マージンを一切省くことで低価格で提供することに力を注ぎました。商品は、メーカーから直接、大量に仕入れることで卸価格並みの値段での販売を実現。工事については、外注に出さずに自社で施工スタッフを抱える体制を整えることで、余計な人件費をかけずに安く提供できるようになりました」
それから3年後の2001年、栗原氏は、ECサイト『サンリフレプラザ』をオープンした。