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「良質なコンテンツ」を測定する7つの指標

2012年10月05日 14時18分更新

文●清水 誠

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その指標がデザインを決める

 コンテンツが重要な時代になってきました。SEOでは良質のコンテンツ作成が王道だ、と昔から言われていましたが、最近のGoogleのアルゴリズム変更はその理想論を現実に近付けました。「コンテンツマーケティング」という言葉も耳にするようになりました。

 ただ、自社サイトの特性に合わせて良質のオリジナルコンテンツを作るためには、工夫やリソースが必要になります。そこで、何が「良いコンテンツ」なのかを定義し、その「良さ」を客観的に評価できるようにしておくと便利です。著名ライターに依頼したり、コストをかければ良いというわけではありません。精度や効率を無視してお金をかけ続けるような運用は、最初はよくても長続きしないでしょう。

 そこで今回は、良いコンテンツの定義と測定方法について考えてみます。

良質なコンテンツを読むとどうなるのか?

 良いコンテンツに出会うと、ユーザーはどう行動するのでしょうか? いつものように図解して整理します。

 Webサイトを訪れたユーザーは、

  • そのコンテンツを気に入って、
  1. 最後までじっくり読む
  2. ページに長い間滞在する
  • サイトの運営者に興味を持ち、
  1. About系コンテンツ(運営者情報)を読む
  2. サイトをブックマークする
  3. 後日にサイトを再訪問する
  • もっと似たようなコンテンツを求めて、
  1. サイト内の似たようなページを閲覧する
  2. 記事の関連リンクをクリックする

 これらのアクションを計測して組み合わせれば、コンテンツの「良さ」をある程度定量的に判断できそうです。

計測の方針

 以下の条件に合致した場合にそれぞれ別のイベントをトラッキングします。Googleアナリティクスの場合は、さらにイベントを条件としたゴール設定が必要です。

1. 最後まで読んだか?

 「楽天メソッドの長いページは分割したほうがいいのか?」を参考に、読了率(分割ページにおける最終ページの閲覧率、ページ下部までスクロールした割合)を計測します。

2. ページに長い間滞在したか?

 解析ツールが標準的に提供する指標(滞在時間)が使えます。

3. About系コンテンツを閲覧したか?

 URLで判定します。ただし訪問内で一度のみセットされるよう、Cookieで重複判定をする必要があります。複数対応とCookie長節約のためにフラグ化するのも良いでしょう。

4. サイトをブックマークしたか?

 技術的に実装が難しいので、潔く諦めます。

5. 後日にサイトを再訪問したか?

 有効期限の長いCookieをセットして、次回の訪問開始を判定します。

参考:ゴールの無いサイトでもコンバージョンを計る方法

6. サイト内の似たようなページを閲覧したか?

 記事閲覧というゴールを設定します。内容が似ていたのか、まったく別の記事だったのかは分からないので、同じ訪問内で他の記事ページをたくさん読んだのか、と測定します。

7. 関連リンクをクリックしたか?

 記事本文と関連リンクが掲載されたエリアをclassやidで指定し、そのエリアにおけるリンクにonMouseイベントを付与するとよいでしょう。実際にリンク先のページが表示された回数ではなく、読みたいという意思を計測したいので、onClickよりも精度の高いonMousedownが適しています。

レポートの読み取り方

 ディメンション(レポート左側の行項目)を入口ページ(ランディングページ)とし、今回計測を開始した各種イベント(ゴール)を指標(列項目)にすることで、以下のようなレポートを作ります。SiteCatalystの場合は、eVarにpageNameをセットし、期限を訪問、配分を最初、にします。

 最終的にはExcel上に数字を落とし込むと、グラフ化や加工ができて便利です。

入口以外のページも計測する方法

 入口ページを評価するなら、上記のイベント(ゴール)計測だけで済みますが、実際には入り口にならなかった2ページ目以降のページも、その後の行動や意識に影響を与えるはずです。

 入り口ではないページも評価するには、もう一工夫が必要になります。具体的に考えてみましょう。次のような訪問があった場合、どう評価すべきでしょうか?

1. 読了率と(関連リンクの)クリック

 この2つは、該当ページのみで完結するのでシンプルです。

ページ訪問読了クリック
A112
B100
C101

2. About閲覧

 A、B、Cのそれぞれ、またはいずれかが興味を掻き立てた結果、About系のコンテンツ閲覧に至った、と考えられます。直前のCが決め手となったのかもしれませんが、流れ的にBとCは連続しているために、実際にはBを見てから運営者について調べたいと思い、次のCを見たあとにしよう、と決めていたのかもしれません。

 広告の貢献度を調べるには最後の流入チャネルを評価するのが一般的ですが(その是非については割愛します)、訪問内のページ閲覧はもっと短期間に連続して起こるので、同じように考えるわけにはいきません。とはいえ、順番による貢献度の強さを決めるほどの根拠もデータもないので、ひとまず訪問内で閲覧された記事ページそれぞれが等しく貢献したと考え、均等に割り当てることにします。

ページ訪問About閲覧
A11
B11
C11

3. 再訪問

 「2.Aboutコンテンツの閲覧」と同じですが、有効期限を長く設定する必要がある、という点が異なります。

4. 回遊

 訪問内に閲覧されたページすべてに割り当ててしまうと、はじめの方に閲覧されたページが過大評価されてしまいます。

 次の次の記事ページ閲覧までマルチレベルで貢献度を引きずると、訪問の中での順番という変動要素がひとつ増えてしまいます。仮に、訪問における順番の違いが貢献度に影響を与えると分かったところで、それを運営側がコントロールすることは難しいので、今回は考慮しないことにします。

 「同じ訪問内で1ページ以上、別の記事ページを閲覧した」という0または1の値をセットします。離脱にも近いですが、トップページやサイトマップなどの非コンテンツページではなく、「記事ページ」への回遊であるという点が異なります。

 これらの数字を回数ではなく割合にし、1つの表にまとめれば、レポートが完成です。

 さて、良質なコンテンツを評価し、理解し、今後も良質なコンテンツを作るために有益なヒントは得られそうでしょうか?


著者:清水 誠 (しみず・まこと)

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Webアナリスト。1995年国際基督教大学を卒業後、凸版印刷やScient、Razorfishにて大手企業へのWebコンサルティングとIA設計に従事した後、ウェブクルーでは開発・運用プロセス改善、日本アムウェイでは印刷物のデジタル化とCMS・PIM導入、楽天ではアクセス解析の全社展開、ギルト・グループではKPIの再定義とCRMをリード。2011年9月に渡米、マーケティング製品の品質改善に取り組む傍ら、執筆活動も続けている。サンクトガーレン社外CMO、電通レイザーフィッシュ社外フェローも務める。

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