個人向けクラウドストレージの落とし穴に気をつけろ
個人向けクラウドストレージは無料でも利用できるという手軽さが魅力だが、データの保全性という意味では、問題なしとは言えない。
企業向けのクラウドサービスは可用性が問われる。「サービス品質保証契約」(SLA)が契約書に明記されており、動作を保証する一方で、契約を下回る稼働率になったからといっても、損害賠償請求ができるわけでもない。ゆえに「自社の重要業務をクラウドサービスと言う他の会社に任せられるのか」という議論があるし、2012年6月には、ファーストサーバーが実質的なメンテナンスミスによるデータ喪失事故を起こしている(関連記事)。
個人向けクラウドストレージの場合、SLAどころか最悪の事態(データ全喪失や業者の夜逃げ)もありうると思った方がいい。つまり、重要なすべてのデータをクラウドストレージに任せない方がいい。データ喪失を防ぐ最善の手はバックアップにつきる。例えばNASとクラウドストレージを併用したり同期する、複数のクラウドストレージに保存するといった対策で、データの全喪失という事態は可能な限り避けられる。
そもそもクラウドストレージのリード/ライト速度は速くない。特集第2回のようにNASならばUSB HDDを超えるが、クラウドストレージでGB単位の転送を行なおうとすると、相当な時間がかかる。大容量のファイル保存を考えるなら、やはり費用面でも速度面でもNASが適当になるだろう。
NASは「プライベートクラウドストレージ」?
現在エンタープライズの世界では、他社が商用で運用している「パブリッククラウド」と、企業内でサーバーを仮想化して共同利用する「プライベートクラウド」を使い分けていいとこどりをする、「ハイブリットクラウド」という流れがある。
商用のクラウドストレージはパブリックサービスであるが、それに対してNASはプライベートクラウドストレージと言うこともできる。導入のしやすさや初期費用、サービスを含めた利用形態には商用クラウドストレージにメリットがある。一方でファイルが手元にあり、ある程度の容量がリーズナブルに利用できるという意味では、NASにメリットがある。
NASとクラウドストレージは一長一短で、むしろ併用するのが望ましい。すぐに利用できてある程度の容量ならタダのクラウドストレージと大容量と、手元にファイルがあるNASを組み合わせることで、安全かつ大容量でどこからでもアクセスできる環境が得られるだろう。
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