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山谷剛史の「アジアIT小話」 第30回

反日デモの裏で進む“本気”の日本製品不買運動

2012年09月20日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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アニメやアダルトビデオも「我慢する」

「百度」のGoogleTrend的サービス「百度指数」で「NARUTO」を検索。尖閣問題後、若干減少している

「百度」のGoogleTrend的サービス「百度指数」で「NARUTO」を検索。尖閣問題後、若干減少している

 一方コンテンツでは、ハードウェアとは対照的で「日本の思想が入っているアニメから真っ先に離れるべきなのにできない」「日本のアニメが見られなくなったら困る」と、離れることに苦心している声が多く見られる。

 だがその中にも「アニメを我慢して見ないでみた!」「アダルトビデオのダウンロードをやめてみた!」という書き込みも見られる。実際、NARUTO、ワンピースなどのアニメの検索数は若干ながら減少している。行動に移している人もいるのだろう。

本サイトは日本のアダルトビデオのダウンロートサービスを停止した。日本製品不買!

本サイトは日本のアダルトビデオのダウンロートサービスを停止した。日本製品不買!

蒼井そらさんの人気の微博(マイクロブログ)で「中日人民友好」を書き、10万を超えるRTなど、大きな反響となった

蒼井そらさんの人気の微博(マイクロブログ)で「中日人民友好」を書き、11万ものRTなど、大きな反響となった

 アダルトビデオに関しては、中国の反日デモではしばしば「蒼井そら」さんの名前が書かれた横断幕が掲げられるほど(もっとも蒼井そらさんに関しては、その枠を超えて日中の架け橋として頑張っていて、中国の女性からも認知されている)。なお、アダルトビデオに関しては「中国人とアダルトビデオの関係」(前編後編)も参照いただきたい。

「抗日」を抑制するネット世論の誘導も行なわれているが……

人民網のネット世論チェック部隊は「抵制日貨」は「理性愛国」と同様チェックした

人民網のネット世論チェック部隊は「抵制日貨」は「理性愛国」と同様チェックした

9月18日を超え、尖閣問題に関するネット世論は一旦ヤマ場を超えたようだ

9月18日を超え、尖閣問題に関するネット世論は一旦ヤマ場を超えたようだ

 さてネット世論対策はどうか。尖閣諸島問題に関するネットユーザーの関心が高まる中、「抗日」などに検閲がかけられるようになり、こうした単語での検索結果を表示しないといった措置が行なわれるようになった。

 またネット世論(中国語で“輿情”)を監視する「人民網輿情監測室」は、「日本製品不買では領土問題は解決しない」「日本製品不買ではなく、ましてや破壊行為でもなく、日本製よりもっといいものが作れるようにならなくてはいけない」という、つまりは「今は日本製品を買って利用するのもやむなし」と解釈できるニュースをたびたび掲載するようになった。

 この「たびたび掲載」というのは、過去のさまざまなネット世論の誘導のケースを見るに「必ず各部署はネット世論を誘導するように」ではなく「ネット世論誘導を歓迎する」程度である。暴動をよしとしないようにするネット世論誘導に比べて強制力はない。

「暴力には反対」が多数派だが
日本製品不買には意見が分かれる

「日本製品不買」は微博で多数つぶやかれたが、その後関心の低下や、ネット規制により減少した

「日本製品不買」は微博で多数つぶやかれたが、その後関心の低下や、ネット規制により減少した

 ではステレオタイプよろしく、「暴動はやめよう。なんだかんだいっても日本製品を買うしかない。だが中国でいいものを作れるようにがんばろう」という話かというと、無視できない動きがある。

 アルファブロガーの発言力・拡散力が強い「微博」(マイクロブログ)である「新浪微博」上で、アルファブロガーが「暴動はやめよう。ただし日本製品不買は支持する」と発言し、その発言が支持され拡散しているのだ。

 アジア各国を見て思うのは、外国製品に囲まれている中で自国製品が出ると、強烈な愛国教育がなくても人々は大きな期待でワクワクする。この感覚は筆者の世代を含め、若い日本人は持ち合わせていない。「中国製品に囲まれよう」というのが夢語りでないのは、これは数年前と比べて中国製品が壊れずまともに使えるようになったことの証明といえよう。

 つまりネット世論は今のところ「暴力反対、不買反対」か「暴力反対、不買賛成」の2大勢力がある。不買に動く人の中には、アニメを見ない人さえも出ている。ネット世論が日本製品不買にずっと進んで、かつ日本企業が企業努力を怠れば、中国市場で日本製品の売れ行きは長期に渡って低迷するかもしれない。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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