電脳空間を操るエンターテイナー/悪徳金融1号
仮想空間を舞台に繰り広げられる、初音ミクたちのサイバーバトル。そのタイポグラフィを多用したデザイン、色彩、MMEを駆使した効果、そしてストーリまで、すべてが見ものの、 究極のエンターテインメント作品。これが、MMD!? |
MMEの登場以来、よりCGらしい絵作りが可能となったMMD。よりリアルな絵作りや、CGとしてより緻密な絵作りを指向する人が多いなか、そのエフェクトを真正面に押し出し、どハデな、ある意味レトロといってもいいCG仮想空間でのバトルを描いたのが、悪徳金融1号さん。「どうだこの絵を見ろ」的な作品かと思いきや、ストーリーでも魅せてくる。その秘密と、MMDに対する思いを聞いてみた。
Interview with 悪徳金融1号――
観てくれた人にどんな感情を残したいのか、が大切
―― 悪徳さんといえば、いきなり重量級のMMD作品でデビューというイメージなんですが。
実は、最初(重音テトのような)仮想ボカロみたいなキャラクターを仲間内で妄想していて……。いろいろ設定ができると、動かしたくなりますよね。そこで、3Dソフトを探していたら、そのなかにMMDというのがあったんです。過去にShadeに挑戦したことはあったけどすぐに挫折したりで、3Dソフトはまったくの素人でした。なので、最初の動画は、モデルの色変え(笑)。
「ミクダン初心者の俺が小手先の演出を試みてみた」 |
―― そこから、予告動画を経て、8ヵ月で『うちのPCが……』を投稿されると。
もともとSF映画が大好きで、なかでも近未来を舞台にした作品は大好きなんですよね。そういう映画ってコンピューターとかのインターフェイスがメチャカッコイイじゃないですか? ああいうのを自分でもやってみたいっていうのは常々思ってたことなんです。動画の作り方も知らんくせに夢だけは見てました。
―― 特徴的なのは、文字というか、バーチャルディスプレイ……ヘッドアップモニターっていうのかな、あれの洪水ですよね。
サイバーなグラフィックも昔から大好物だったんで。あの作品は自分の妄想の集大成ってわけです。ただ、本当はあんなサイバーバトルになる予定じゃなくて、メルヘンな内容になるはずだった。
―― えっ?
元はこの『エイプリルフールに数学教師がやったジョーク』を見て、PCの中でミクが遊んでたら楽しいだろうなーという発想でした。しかし、それだけじゃ面白くないので、「事件」としてウイルスを登場させたことで、バトルものになっちゃった(笑)。
―― 悪徳さんはPVも作られるわけですが、本質的には、どちらを指向してるんです?
なんていうのかな、PVって選びぬかれたクリエーターが作るものって感覚が強かったんで、正直恐れ多かったですね。でもショートフィルムならもっと気楽に自分のやりたい話を作れそうだなーって感じでした。
―― ええー!? その「やりたい話」が先行するわけですか? みなさん、たぶん絵作りのすごさを、悪徳さんの特徴としてあげると思うのですが……。
あ、見た目もこだわっているんでそう言ってもらえると嬉しいです! でも、これはPVであれドラマであれ共通することだと思うんだけど「観てくれた人にどんな感情を残したいのか?」を自分の中で明確にイメージしておくのは作品を作る上でやっぱキモだなって思う。そこに共感があって初めて動画制作者と視聴者とのコミュニケーションが達成されるわけで、それこそが自分の作品作りのモチベーションだったりもします。
―― 今回のインタビューは、MMDでの動画作りの楽しさを伝えるのが趣旨なのですが、やはりそういう部分が楽しいと。
少しだけ違うアプローチの話をすると、例えば今はみんな普通にブログとかやってるわけじゃないですか? 昔は学校の授業で「今日は作文です」って言われると「えええぇぇぇぇ!」ってなってたくせに(笑)。 だから、発信したいという欲求はあると思うんです。でも、文才があるわけでもない、絵が描けるわけでもない、動画作りの技術に精通しているわけでもない。アイデアは膨らむのに、妄想を再生できるのは脳内だけっていうジレンマとか。それを一気に解決してくれたのがMMDってわけですね。
―― なるほど。うまくまとめていただいてありがとうございます(笑)。
自分にとってMMDは創造の翼であり、妄想のはけ口でもあるのです。
悪徳さんのマシン環境&使用ソフト
CPU:Core i7 860 2.8GHz 、メモリー:8GB
グラフィック:GeForce GTS 250、(500MB) OS:Windows7 Professional
ソフト:MMD、Photoshop、Illustrator CS5、aviutl、trakAxPC
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