佐久間君は何も考えていなさそうなWeb制作会社の新入社員だった。「弊社はお客さまをパートナーと考え」と、いつもの口調で話し始め、自社開発のCMSの機能からスマホサイトの自動変換など、一通りの説明をしながら、私の作り笑顔に気付いてしまったのだろう。プレゼンを終えて雑談タイムに入ると「どうしたら上手に営業ができるんでしょうか」と尋ねてきた。「営業が出版社の編集に営業の仕方を聞くなんて」と思ったが、つまらなそうな顔をしてしまった後ろめたさもあって、「自分が知っているホンモノの営業は、自社商品を売らずに自分の顧客を売っている」という話をした。
営業が10人いたら、9人は自社の商品を売ろうとする。Web制作会社なら、CMSを導入しましょう、スマホサイトを作りましょう、リニューアルしましょう、プロモーション用のサテライトサイト作りましょう、という具合だ。顧客がCMS未導入、PCのみ対応サイト、10年間リニューアルをしていないなら提案する価値もあるが、2012年も残り4か月の今、こういう提案をする営業の神経がわからない。「アクセス解析でPDCAを回す」といっても、気付いた問題を改修する費用に毎回20万円かかると言われれば、やる気が失せる。年商1億円のECサイトなら月の売上げは833万円。粗利が50%あっても、アクセス解析でPDCAを回すたびに20万円出費するのは結構つらい。「弊社はお客さまを金づると考え」が実態である。
自分の顧客を売るホンモノの営業は、私の体感的には10人に1人くらいいる。まず顧客企業や担当者の悩みを聞き出し、解決策を考える。「うちのお客のXさんなら解決できるから飲みに行きませんか?」とか「Yさんが御社と取引したいそうだから会ってみませんか?」と売上げを立てる手伝いをしてくれる。こうして人間関係の中で作られる解決策に自社商品を上手に組み込んでくるので、断りようがない。編集者である私は、理屈では彼らのやっていることを理解できるが、どうすれば彼らのようになれるのかはわからない。どの人もとても頭の回転が速く、笑顔が魅力的なのは共通している。
Web制作会社のロフトワークから、「アクセス解析活用セミナー 〜Webサイトは作って育てる時代へ〜」の紹介を依頼されたとき、やっつけ記事で済まそうとも思ったが、ふと佐久間君のことを思い出して書いてみた。ロフトワークは早い時期からバランススコアカードによるWebサイト構築の効果測定を提唱し、コンセプトダイアグラムなどでKPIを設定し、Webサイトを育てることの費用対効果を算出する取り組みを続けている。私が講師として招かれたWebライティング講座のように無償のセミナーを数多く開催しており、顧客同士の交流も盛んだ。10月19日に大阪で開催されるセミナーでは、ロフトワークの顧客企業であるZ会広告宣伝課 Web・宣伝統括担当の伊豆蔵善史氏が「CMSとアクセス解析がもたらす、Z会Webサイトの価値」と題して講演する。「お客さまをパートナーと考える」とはこういうことだろう。佐久間君はいま何をしているのだろうか。
〜Webサイトは作って育てる時代へ〜
アクセス解析活用セミナー
- 日時
- 2012年10月19日(金) 14:30〜17:30
- 主催
- 株式会社ロフトワーク
- 会場
- 梅田 ブリーゼプラザ 805号室 大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー8階
- 定員
- 50名
- 参加費
- 無料
- 対象
- Webリニューアルを検討されている方
- アクセス解析に興味がある方
- Webサイトで成果を出したい方
- 運用にお悩みの方
※詳細・申込みは、ロフトワークのセミナー案内ページから。