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AVライター・鳥居一豊の「ビビビっときたAVデバイス」! 第4回

密かに人気! 秋の夜長のサラウンドヘッドフォンのススメ

2012年08月29日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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 ワイヤレスヘッドフォンというと、Bluetooth接続でスマートフォンとつなげて……というイメージがあるが、実は今、屋内で使用するサラウンドヘッドフォンが結構人気だ。さまざまなランキングサイトのワイヤレスヘッドフォンカテゴリーにおいて、ソニーのサラウンドヘッドフォン(MDR-DS7500)が1位になっていたりするし、10位以内にも2~3製品がラインアップしていることが多い。

 サラウンドヘッドフォンはバーチャルサラウンド技術をヘッドフォンに応用したもので、手軽に5.1chや7.1chといったサラウンド再生を楽しめる。サラウンドのメリットはよく知っているが、実際にスピーカーを置くのは大変だという人や、自分の部屋でもサラウンドを楽しみたいという人にはまさに最適な機器である。

 なによりも、スピーカーの置き場所を気にする必要がないし、深夜に大音量で映画を見ても周囲への影響は最小限に抑えられるなど、メリットは数多い。しかも、サラウンドヘッドフォンはそのほとんどがデジタル方式のワイヤレスを採用しており、コードの長さを気にせず自由に室内を移動できるのはかなり快適だ。

 今回は、そんなサラウンドヘッドフォンの注目モデルを集めて、その実力をチェックしてみることにする。当然だが、サラウンド再生だけでなく、ステレオ再生で基本的な音の実力までじっくり確認する。

今回紹介するサラウンドヘッドフォン

ソニーの「MDR-DS7500」

サラウンドヘッドフォン1番人気のソニー「MDR-DS7500」

パナソニックの「RP-WF7」

1万円台で買えるパナソニック「RP-WF7」

オーディオテクニカの「ATH-DWL3300」

寝転びながら楽しめるカナル型ヘッドフォン採用のオーディオテクニカ「ATH-DWL3300」

 今回チョイスしたのは、ソニーの「MDR-DS7500」、パナソニックの「RP-WF7」、オーディオテクニカの「ATH-DWL3300」の3モデル。いずれも2ch、または5.1ch音源を仮想的に7.1chにする「ドルビープロロジックIIx」技術に対応。音楽CDやDVDなども大迫力のサラウンド音声で聞くことができる。

サラウンドヘッドフォンの歴史と仕組み

 サラウンドヘッドフォンは、DVD時代から製品が登場しているが、実はヘッドフォンによるサラウンド再生の歴史はかなり古い。NHK-FMではかなり昔から頭部の模型(ダミーヘッド)を使ったオーディオドラマが定期的に制作されていたし、ダミーヘッドによるバイノーラル録音もその歴史は古い。

 ちなみにこれは人間の頭部および肩の辺りまでを模した模型の両耳部分にマイクを収納するというもので、実際の人間の耳に入ってくる音をそのまま録音しようという考えに基づく。

 人間の耳に入ってくる音は、頭部の形状や顔や耳の形による反射の影響を受けており、こうした微妙な音の変化を脳が後天的に学習し、その音がどちらの方向から聞こえてくるかを判別できるようになる。もちろん、人間の頭部の形状などは個人差があるので、立体音響の効果にも差はある。

 だが、その効果はかなりのもので、前後左右はもちろん、高さ方向(特に上方向)まで再現できる。YouTubeなどで検索してみると、バイノーラル録音(ダミーヘッドなどにマイクを仕込んで録音する方法)された立体的な音響を収録されたものがわりと見つかるので、実際に体験した人もいるのではないかと思う。

 では、頭の形状などによる影響を数式化(HRTF 頭部伝達関数と言われる)し、電気的に再現すれば同様のことができるのではないか? というのがバーチャルサラウンド技術。そこにいち早く注目したのがソニーで、現在もその名称が使われている「バーチャルホンテクロノロジー」として実用化。初期はアナログ処理のため、かなり高価だったが、デジタルサラウンド音声の登場に合わせて、信号処理がデジタル化され、価格も以前に比べてかなり身近な価格となり、現在に至っている。

 現在では、各社が独自にこうしたバーチャルサラウンド技術を開発しているし、ドルビーラボラトリーズが開発した「ドルビーヘッドフォン」と呼ばれる技術もあり、多くのメーカーからサラウンドヘッドフォンが発売されるようになった。

 というような歴史からもわかる通り、ヘッドフォンを使った映画または音楽再生とはいえ、一般的なヘッドフォンによる再生とはかなり出自が異なる。それだけに音の聞こえ方も面白いくらい一般的なヘッドフォンとは違うことが特徴だ。

 まず、頭の中に音場が展開するような聞こえ方をする頭内定位が発生しない。聞こえ方には個人差もあるが、目の前にスピーカーを置いて再生した場合とかなり近い印象になる。少なくとも、耳の側で音がなっている感じはかなり薄れる。

 これが信号処理で残響付加や遅延などの補正、さらに周波数特性の加工などが行なわれて実現されるため、細かい音が付加された残響成分でマスクされ、聞こえにくくなるといった印象にもつながる。HiFi(高忠実度)という点では不純なイメージもあるので、好き嫌いが分かれるようだ。サラウンドヘッドフォンの音の傾向をおおざっぱにまとめるとこんなイメージになる。

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