流し撮りの捕捉説明とフォームについて
一般的な「流し撮りのやり方」では、進行する車両と「速度」を合わせるとあるが、厳密には「距離に応じて動体とレンズの振りをシンクロさせる」というのが正しい。
本記事を読みながら、右手を胸の前に置いて、左手を限界まで伸ばしてみよう。次に右手をカメラ、左手を車両に見たてて、左右に振ってみてほしい。そのとき、左手は大きく旋回するが、右手はほとんど旋回しない。逆に右手と左手を近づけた場合、右手の振りは大きくなる……というのが流し撮りの捕捉説明だ。
距離が遠いとき、カメラを水平に振っている時間は短くて済むし、距離が近い場合は、遠い場合と同じシャッター速度でも動かす距離が長いため、大きくぶれる。文字だといまいちピンとこないかもしれないが、下記写真でなんとなくわかるだろう。あとは実際に撮影してカラダで覚えるのが一番だ。機材はデジタルだが、この部分(撮影方法)はアナログ、肉体言語の世界だ。
撮影フォームは、RQやコスプレイヤーを撮影している人からすると、恐ろしく基本に戻った構えを要求される。ガンプラのパッケージで言えば、熱核ジェットホバー走行中のドムだ。肩幅よりちょっと足を開いて、軽く膝を曲げる。腋はほどよく締めてカメラ本体を右手と左手、そしてファインダーを覗きつつおでこの3点ホールドでがっしり固定して、安定した状態でレンズを振る必要がある。
これはもちろん、流し撮りは低速シャッターが基本なので、フォームの狂いからくるミスを減らすためだ。なお、上記は利き目が右目の人用で、左目が利き目の場合は、さらに左肩を利用できるため、4点ホールドが実現する。ただし、構えが半身になり、上記の構え方よりも旋回半径が短くなってしまう。
A4サイズまでの出力が前提であれば、完璧に構図を決める必要はない。ぶっちゃけた話、1600万画素あれば問題ないし、PCモニターやスマホで見るくらいといった場合は、さらに余裕が生まれるため、端から端まで車両を入れるのではなく、ちょっと引いて余裕を持たせた状態で撮影するのがオススメ。ヘタをすると、狙いの車両が次の周回に来ないこともあるのもあるが、完璧に決まることはないからマージンを確保という考えはもっておこう。ということで「がっつり構図を決める」ことは後回しにして、まずは走行中のマシンを「撮った」という感触を味わうのがいい。
構図の基本は「日の丸」。国旗の通り、主題=車両がど真ん中にあるカットのことだ。わかりやすくていい構図だし、まだ慣れていない段階の撮影であれば「日の丸」が一番。上記の通りトリミングで構図を調整しやすいのもメリットのひとつ。日の丸構図で流し撮りに慣れてきたら、自分の趣味に走った構図を模索すればいいので、まずは構図を深く考えずに流し撮りに集中してみよう。なお、筆者が趣味に走った構図な写真は、決勝編に多数あるのでお楽しみに。
ピントは「置きピン」スタートで!
西コースのスポットを紹介するといっておいて、この有様だが、これで導入編は終わり。ここからは、AFでピントを合わせるときに、車両が来たら半押しではなく、あらかじめ撮影したいところにピントを合わせておく「置きピン」を活用する。遠くから来た車両を追いかけつつ、シャッターポイントにきたら半押しして車両にフォーカスを合わせて、シャッターというわけだ。このときレンズ内の駆動を解説すると、ほとんどモーターを回す必要がないため、すぐにピントが合う。追尾モードも各社のデジタル一眼レフに用意されているが、運動会の場合は置きピンのほうが確実だったりする。そう、実は運動会向けのテクニックでもあるのだ。
カメラのフォーカス機能には、自動的にフォーカスを合わせてくれる機能のほか、好きなところにフォーカスを設定できるモードや、観測点を選べる(αシリーズであればローカル)がある。これも慣れたら活用したい。4輪(SUPER GTのような)箱物の場合はフロントにピンが合っていると、それっぽさが加速するので、フロントの位置にフォーカスを移動させておく。
とくに絞り値が低いときには重要になってくるので、慣れてくるほど活用するハズだ。逆に絞りがF8~10の場合は、だいたい車両全体にピントが合うのでど真ん中にピントを合わせても構わない。シャープネスで多少の被写界深度とはおさらばだ。
だいぶ駆け足で基本的な撮影テクニックを紹介してきたが、身近にいるゴツイカメラを持った人に聞いてみるのもいいし、路線は違えど同じオタなので、サーキットで同じく撮影している人に聞いてみるのもいい(車両が走っていないときにね!)。