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もしもツンデレ女子高生がBDを使うことになったら 第3回

デジタル→アナログ 変換の基礎

「か、解像度って何?」 ツンデレ少女奮闘中!

2012年08月28日 11時00分更新

文● 藤春都 イラスト●布袋あずき

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そして後夜祭へ…

 いつの間にか赤司の「即席デジタル講座」に聞き入ってしまっていた私は、ふと我に返った。

 不倶戴天の敵に余裕綽々に解説されて私は何を感心しているの。そして今、私たちは薄暗い生徒会準備室で肩を寄せ合うようにして、パソコンやスキャナと睨めっこしていた。  ──距離が近い、顔が近いわ!

「きゃあああああああ!?」

 弾かれたように慌てて距離を取る私を、赤司は不思議そうに見つめた。

「なんでっ、こんな暗いところで二人きり……」

 そこで赤司はようやく気づいたとばかりに「ああ」と手を叩いて、

「……ここなら泣き叫んでも誰にも気づかれませんね?」
「うわあああん来るな変態、あんたなんか蟻と一体化するまで近寄らないでッ!」
「いや一体化するのはちょっと」

 私は手近にあったものをペンからビデオテープまで片っ端から投げつけたけど、ぜんぶ避けられてしまった。その器用さが本当に腹立つ!

「そんなに嫌がることだったんですか、僕と一緒にいるの……」

 赤司はしょんぼりと肩を落とした。そこで捨てられた子犬みたいな顔をしないでよ、こっちが罪悪感を感じちゃうじゃない。変態のくせに!

「とっ、とにかく私から離れ……」

 じりじりと後ずさって赤司から距離を取っていると、ふと窓の外からぽん、ぽん、と軽快な音が聞こえてきた。

「……ああ、キャンプファイヤー」

 そういえばグラウンドではまだ後夜祭をやっている時間なんだった。花火の予定があるとは聞いていないけど、生徒会の誰かが簡単な打ち上げ花火でも持ってきたのかもしれない。

「二人きりが嫌なら、外で一緒に参加しませんか?」
「なんであんたと一緒なのよ、それじゃ……」
「僕はあなたにデジタル変換について教えて差し上げたんです。ひとつやふたつ言うこと聞いてくれても良さそうなものですが」

 うっ。借りを作ってしまったなあとは思ったけど、まさか速攻返済を求められるとは思わなかったわ。最近はサラ金だって十日くらいは無利子で待ってくれるのよ!

 でも……ねえ。

「わっ、……わかったわよ」

 頷いたとたん、赤司はぱっと顔を輝かせた。

「それじゃ、行きましょうか」

 そう言って私に手を差し出してきたときの奴は、まさにイケメン様オーラ全開だった。なんで私にそういう顔を見せるのよ、そんなものはファンクラブの女子とかに大盤振る舞いしておきなさいよ。

 ……まあ、でも、ちょっとだけ「悪くはないな」なんて思ってしまった自分もたいがい情けないけど。

 そして不本意ながら私は赤司と二人で、生徒会準備室から出て行った。

著者紹介――藤春都

 ライトノベル書き。筑波大学図書館情報専門学群卒。特技は本を腹の上に載せたまま寝ること。企画書を没られたりプロットを没られたり細かな記事を書いたり色々してます。単行本は『ミスティック・ミュージアム』(第二回ノベルジャパン大賞<佳作>受賞作)、『空想/のべりずむ』、『瑠璃色の刃と朱色の絆』(すべてホビージャパンより刊行)。現在、新作準備中。

 ウェブサイトは『Claymore』、Twitterは@fujiharu

イラスト――布袋あずき

 ドレスと猫をこよなく愛する漫画家。単行本に『小公女(マンガジュニア名作シリーズ)』(学研教育出版)。浦安の夢の国へ行きたい。

 ブログ『本当は萌える!源氏物語』では、源氏物語の漫画を連載中。twitterは@genjihikaru

~前回のあらすじ~

才色兼備で何事もパーフェクトにこなす葵だが、ひとつだけ弱点が。機械オンチの葵は、写真とビデオのデータ化の方法がわからず、途方に暮れていた。そこに現れたのは、永遠のライバル(だと葵が一方的に思っている)赤司だった!

意外にも赤司は葵に協力的で、体調を崩した葵のかわりにデータをBDに焼いておいてくれていた。かくて文化祭は大成功を収めたのだった。(葵はなんだか釈然としない様子。)

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