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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第59回

Nokiaの資産整理が続く Windows Phone 8ローンチは9月か?

2012年08月22日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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 NokiaがWindows Phoneにフォーカスすると戦略を変換して1年半、方針変更にともなう痛みはまだ続いているようだ。8月に入りNokiaはソフトウェア開発技術「Qt」の売却を発表、他社のOSをライセンスするという方向性からみると中途半端だったソフトウェア事業を手放し、コア事業以外の資産整理を一歩進めた。そのWindows Phoneでは最新版「Windows Phone 8」を9月に発表すると言われているが課題も多い。

SymbianやMeeGo向けの開発フレームワークだった
「Qt」を売却 Windows Phoneに集中する

 Qtはクロスプラットフォームのソフトウェア/UI(ユーザーインターフェイス)開発フレームワークで、C++を利用して開発できる。一度書いたソースコードをWindows/Mac OS Xなど対応OSで動かせる点が大きな特徴で、統合開発環境のQt Creator、宣言的言語拡張でUI開発においてデザイナーと開発者のコラボレーションを支援するQMLなど、取り組みを拡大している。デスクトップ環境「KDE」が有名だが、メディアプレイヤー「VLC」や「Google Earth」など、多数の利用例を持つ。Qt開発者は70業種・45万人以上を誇るという。

X、Windows、Mac OS Xを始め、モバイル端末まで多様なクロスプラットフォームの開発環境として、広く使われていた「Qt」だが、Nokiaの手を離れることになった

 元々はノルウェーのTrolltech社が開発した技術で、Nokiaが2008年に同社を買収したことによりNokia傘下となった。Nokiaは当時、世界最大手の携帯電話メーカーであり、Qt取得によりプラットフォームとソフトウェア開発を強化を図った。

 QtはモバイルではSymbianおよびNokiaのUIであるS60やS40対応を通じ、Nokiaのエコシステム強化を加速するミッションを負っていた。2010年に「MeeGo」をIntelと共同発表後は、MeeGo向けの開発としての役目も加わり、AppleやGoogle/Androidとの対抗において戦略的な資産となった。だが、Nokiaは2011年2月に発表したMicrosoftとの提携によりWindows Phoneをスマートフォンプラットフォームとする戦略に変換、ここでは開発ツールは「Windows Phone Developer Tools」などMicrosoftのものとなった。

 Windows Phoneに完全にシフトするまでの間はSymbian機種開発も継続することから、Qtはその後もSymbian向けとして位置づけられた。だがメインのプラットフォームはWindows Phoneであることと、それまでのQtの開発者イベントなどではMeeGoに向けた期待が高まっていたことから、チームの士気が損なわれたことは想像に難くない。

 Nokiaは2011年3月、Qtライセンス事業をDigia(フィンランドのソフトウェア開発企業)に売却、そして8月9日にQtの技術/著作権/商標などをDigiaに売却することを発表した。2012年6月に行った第2四半期の業績発表の際、Nokiaは2013年末までに1万人の従業員削減を含む再編計画を発表しており、今回のQt売却もこれに沿ったものとなる。

 実際、Qtが戦略の中心から外れたことに加え、8月1日にNokiaによるオーストラリアのQtオフィス閉鎖が明らかになったこともあり、売却のうわさは少し前から流れていた。Nokiaは同時に、米国ベースのアプリ開発企業Vringoに約500件の特許の売却も行ったようだ。

 DigiaはQt買収の発表と同時に、Android/iOS/Windows 8への対応を約束するとともに、次期版「Qt 5」に向けた開発を継続することも明らかにした。

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