CPUアーキテクチャーの進化をひもとくシリーズ「インテルCPU進化論」(今回から名前が付いた)。前回はP6アーキテクチャーを効率と省電力の両面で改良した「Pentium M」(Banias)について解説した。今回はその改良版である「Yonah」(65nm世代Core Duo)を解説したい。
BaniasとCore Duoの中間的存在
=Yonah
Pentium Mの回でも触れたが、インテルはYonahの内部構造を、いまだに公表していない。しかし、例えば「パイプラインが12段」になっていることはすでに知られており、逆にアウトオブオーダーの部分には「大きく手は入っていない」ことも知られている(小変更はある)。ここから推察したYonahのパイプラインが上の図1である。
公開されているBaniasからYonahへの変更点はこの程度だ。
- ネイティブデュアルコア化
- Vanderpool Technology(Intel Virtualization Technology、Intel VT)対応
- SSE2/SSE3の実装
- 共有2次キャッシュの採用
Yonahでは製造プロセスを、「Dothan」ベースのPentium M(90nm)から65nmへと微細化したにもかかわらず、動作周波数は2.27GHzから2.33GHzへと上がった程度で、ほとんど向上していない。もっとも、Dothan世代の「Pentium M 780」(2.26GHz)のTDPは27Wであるが、一方Yonah世代の「Core Duo T2700」(2.33GHz)のTDPは31Wにすぎない。コアを2倍に増やしたにもかかわらず、消費電力はほぼ同じ程度。これにより性能/消費電力比は大幅に改善したことになり、これが90nmから65nmへの微細化の効果だと説明されてきた。この説明そのものは間違っていないのだが、もう少し実情は複雑であった。
Yonahの世代はBanias/Dothanと、続く「Merom」世代で「Coreマイクロアーキテクチャー」として紹介されるもののちょうど中間的な構造である。主な改良点は以下が挙げられる。
- Decoderの高機能化。SSE3の対応に加え、SSE/SSE2への「Micro Ops Fusion」対応が追加された。
- Dispatch Portの強化(5ポート→6ポート)
- FPUとSSEのスループット強化
次ページで順に説明しよう。
この連載の記事
-
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ -
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 -
第757回
PC
「RISC-VはArmに劣る」と主張し猛烈な批判にあうArm RISC-Vプロセッサー遍歴 - この連載の一覧へ