シャープが発表した2012年度第1四半期(2012年4月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比28.4%減の4586億円、営業損失は前年同期の35億円の黒字から、マイナス941億円の赤字に転落。経常損失は6億円の赤字からマイナス1038億円の赤字。当期純損失はマイナス492億円の赤字から、マイナス1384億円の赤字と厳しい内容となった。
これを受けて、2012年度の通期業績見通しを下方修正。4月公表値に比べて、売上高は2000億円減の2兆5000億円、営業損失は1200億円減のマイナス1000億円の赤字、経常損失は1200億円減のマイナス1400億円の赤字、当期純損失は2200億円減のマイナス2500億円の赤字とした。
主力事業に暗雲、もう国内で大型テレビを作る時代ではないのか?
業績悪化の最大の要因は、テレビ事業を中心とした「AV・通信機器」と、大型液晶パネルの低迷が続く「液晶」の2部門が不振だったこと。これまでのシャープの屋台骨であった2つの部門が、一転して不振の元凶となっているのだ。
テレビ向けの大型液晶パネルを生産する堺工場では、需要減と在庫消化を優先したことによって、2012年度第1四半期は稼働率が約30%に留まり、「10%の稼働率低下で100億円の影響」という状況から逆算しても、稼働損が業績に大きくのし掛かったことがわかる。さらに、これにテレビの価格下落による追加コスト発生が響いた。
奥田社長は、「デジタル家電から逃げることはしない」と前置きしながらも、「AQUOSのような、いまのテレビを国内で生産していても採算はあわない。国内では脱テレビの方向に向かっていくだろう」と語る。
実際、テレビの一部組み立てを行っている栃木工場では、AVシステム事業の本部機能を栃木から奈良に移転。栃木工場の規模を順次を縮小することを明らかにしている。
高付加価値を提供する“4つのビヨンド”
だが、その一方で、「ビヨンドテレビといったものを、日本で作る必要性があれば、その限りではない」という発言もする。
シャープは、現在の事業を4つの事業グループに再編。AVシステム事業本部と通信システム事業本部を再編統合し、デジタル情報家電グループを新設する。
ここでは、シャープ独自のIGZO液晶を応用し、ネットワーク連携する次世代液晶テレビやタブレットなど、新たなデジタルライフ製品を開発。付加価値の高い事業体を目指すという。
奥田社長はこれを「ビヨンドテレビ」「ビヨンドPC」「ビヨンドスマホ」と表現し、新たな融合製品と位置づける。
「我々は新たなテレビを生み出していかなくてはならない。今後、テレビの定義をどうしていくかによって、日本でテレビを作るかどうかが、変わっていくことになる」と語る。
だが、その姿は残念ながら、いまの段階では明確にはならない。ここにシャープが復活する道筋があるかどうかは未知数だ。
重くのしかかる、在庫・設備・人という課題
今回発表した構造改革のなかで、シャープは、5000人規模の人員削減を発表した。
自然減や事業のオフバランスのほか、希望退職制度の実施により、現在5万6756人いる総社員を、2013年3月末までに約5万1700人とする計画だ。
奥田社長は、「シャープには、在庫、設備、人という3つの課題がある。このままでは業績回復につながらない」とする。「“一刻の猶予も許されない経営状況にある”という認識から、できる限り早く一歩踏み込んだ構造改革に取り組み、次のシャープの成長につなげる」
シャープが希望退職制度を実施するのは、1950年以来、62年ぶりのこと だ。
希望退職制度を実施した当時、社長の早川徳次氏は「人員を整理するくらいならば、会社を閉める方を選ぶ」という気持ちだったという。それを知った従業員たち、つまり労働組合側が自主的に希望退職を募り、210人の人員削減を実施するという逸話があった。
その点で、今回の希望退職制度の実施は、今年創業100周年を迎えるシャープの経営陣が社員に問う、事実上初めてのものだともいえる。
この試練をどう乗り越えていくのか。シャープの試練はこれからが本番だ。
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