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サイト内検索で見つからないコンテンツを発見する方法

2012年08月07日 11時00分更新

文●清水 誠

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その指標がデザインを決める

 サイト内のコンテンツを検索できる「サイト内検索」機能。アクセス解析ツールにちょっとした設定を追加すれば、ユーザーがどんなキーワードでサイト内を検索しているか、計測できます。サイト内検索のキーワードを調べることで、ユーザーの情報ニーズが分かり、コンテンツの制作や改善の参考になります。

 ただし、一般的なアクセス解析ツールで分かるのは、キーワードごとの検索回数のみ。適切なコンテンツが表示されたのか、ユーザーが探していた情報は見つかったのか、などの利用状況までは分かりません。検索キーワードのリストだけを眺めても「なるほど」で終わってしまい、改善のアクションにはなかなかつながらないものです。

 そこで今回は、「検索結果がゼロ件だった」というゴールを設定することで、確実にサイトの改善につなげる方法を紹介します。

知るべきことを知る

 知りたい訪問者の行動を図解しつつ、訪問者が「サイト内検索」を実行した後にどのような行動が続くのか、どうなることが訪問者にとって良いことなのかを整理してみましょう。

 サイト内検索では、サイト内のコンテンツを検索した結果、入力したキーワードを含むコンテンツが存在していて、検索エンジンにインデックスされていれば検索結果に表示されます。ユーザーはその検索結果に表示されたタイトルや説明(スニペット)を眺め、求めている情報がどのページに掲載されていそうかを推測します。検索結果が表示されていても、「それらしいものがない」「あっても順位が低くて目に入らない」「タイトルが分かりにくいので見逃す」などの理由で発見に至らないこともあります。たとえよさそうなコンテンツが見つかったとしても、「時間がなくなった」「モチベーションが下がった」などの理由でクリックしないこともあるでしょう。また、検索結果をクリックしたとしても、表示されたコンテンツに、ユーザーが探していた情報が含まれているとは限りません。

 アクセス解析ではユーザーの気持ちは計測できませんが、図のようにユーザーの行動パターンをモデル化することで、ある程度推測できるようになります。

 今回のケースでは、確実な判断ができて改善アクションにつなげられるのは、実は「検索結果がゼロ件」の場合のみです。検索結果の「クリック回数」も技術的には計測できますが、クリックしたコンテンツ=探していた情報とは限らないので、改善アクションを起こすための判断基準としては不十分です。

 一方、ユーザーがせっかく検索したのに何もヒットしない「ゼロ件」は、確実に悪い事象といえます。ゼロ件になった検索キーワードが分かれば、「サイト内に無いコンテンツは作成する」「(サイト内に存在するのに検索にヒットしなかった)コンテンツにユーザーの言葉を含めるよう更新する」「検索エンジンをチューニングする」などの改善アクションが取れます。サイトの改善につながる指標をみるようにすれば、解析がムダにならずに済みます。

「ゼロ件」を計測する方法(Google Analyticsの場合)

 実際にGoogle Analyticsを使って「ゼロ件」のキーワードを調べてみましょう。

1.サイト内検索キーワードの計測

 プロファイル設定で「サイト内検索レポートを有効」にし、検索ボックスに入力されたクエリーの送信に使われるパラメーター名を指定します。

2.「ゼロ件」イベントのトラッキング

 検索結果がゼロ件だった場合にのみ、以下のJavaScript文を実行します。

_gaq.push(['_trackEvent', 'SiteSearch', 'zero', undefined, 0, true]);
設定メモ
  • ゼロ件の判定方法は、画面上に表示されたヒット件数などの文字列をJavaScriptで取得する方法と、サイト内検索エンジンのプログラム側で条件分岐させる方法が考えられます
  • _trackEventの5つ目の引数をtrueにすると、イベント計測が直帰率の算出に影響を与えないようにできます(参照:https://developers.google.com/analytics/devguides/collection/gajs/methods/gaJSApiEventTracking

3.「検索ゼロ件」という目標(コンバージョン)を設定する

 2で設定したイベント発生を条件とした目標「検索ゼロ件」を以下のように設定します。

設定メモ
  • 目標タイプを「イベント」に変更し、発生条件としてのカテゴリーとアクションを_trackEventで指定した「SiteSearch」「zero」にします

「ゼロ件」を計測する方法(Adobe SiteCatalystの場合)

  SiteCatalystの場合は以下のように設定します。

1. サイト内検索キーワードの計測

 eVarにキーワードをセットします。検索結果ページのURLにキーワードが含まれる場合は、プラグインが利用できます。

s.eVar1 = s.getQueryParam('q');
設定メモ
  • カスタムコンバージョン変数の番号は未使用のものに適宜変更(管理コンソールで有効化が必要)
  • getQueryParamプラグインはKnowledge Baseやサポートから入手する

2.「ゼロ件」イベントのトラッキング

 検索結果がゼロ件だった場合にのみ、以下のJavaScript文を実行します。

s.events = 'event1';
設定メモ
  • カスタムイベントの番号は未使用のものに適宜変更(管理コンソールで有効化が必要)

レポートの見方

 サイト内検索で使われたキーワードのレポートを表示し、各種の指標を追加します。

 つい、検索回数やゼロ件率なども追加したくなりますが、見ても得られるヒントが少ない数字は極力排除します。

 また、コンテンツの更新や新規追加には時間とコストがかかります。今回たまたまゼロ件になることが多かっただけなのか? 増加傾向にあるのか? 今後もゼロ件の検索結果が表示されそうか? を判断するため、前回調査時からの増減も表に含めると便利です。


著者:清水 誠 (しみず・まこと)

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Webアナリスト。1995年国際基督教大学を卒業後、凸版印刷やScient、Razorfishにて大手企業へのWebコンサルティングとIA設計に従事した後、ウェブクルーでは開発・運用プロセス改善、日本アムウェイでは印刷物のデジタル化とCMS・PIM導入、楽天ではアクセス解析の全社展開、ギルト・グループではKPIの再定義とCRMをリード。2011年9月に渡米、マーケティング製品の品質改善に取り組む傍ら、執筆活動も続けている。サンクトガーレン社外CMO、電通レイザーフィッシュ社外フェローも務める。

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