このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

Mobile Wallet導入への布石?

アップル、NeXTやAnobitに次ぐ大型買収―指紋認証のAuthenTec

2012年07月31日 21時00分更新

文● 鈴木淳也(Junya Suzuki)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

アップルはAuthenTec買収で何を狙う?

 これに関してはいうまでもなく、「ユーザーに最も近いデバイスのセキュリティ強化」にある。つまりiPhoneやiPad、場合によってはMac製品群へのAuthenTecの保護技術導入という形で出てくるだろう。早ければ今後1〜2年先には何らかの成果として出てくる可能性がある。だが問題なのは、アップルがセキュリティ強化で「何を守りたいのか?」という点にある。

 現在裁判で争っているライバルSamsungがAuthenTecの技術を採用したことへの嫌がらせという、ジョークとも思えないような話もあるが、実際のところは「より将来の製品戦略」に根ざしたところにあるだろう。

 電子メールやアドレス帳といった基本的な個人情報にはじまり、アップルは次期iOS 6において「Passbook」というポイントカードやチケット情報を記録する新機能の提供を予定しており、こうした情報を強固に保護するのが第一の役割だ。さらに将来的には、NFCやICカードを組み合わせた情報ツールを内蔵するための布石にもなるだろう。特にエンタープライズ用途ではセキュリティ強化が至急の課題にもなっており、需要が大きい。

 デジタルデータを単純にメモリー上に保持し、フラットにやり取りを行なう方式に対し、ICカードなどハードを利用したデータ保存はハッキングが難しく、より安全にサーバーなどとのデータのやり取りが可能になる。そのため、免許証や住民カードなどの身分証明書、クレジットカードのデータなど、よりシビアな個人情報の保存にはICチップが用いられることが多い。

 これをNFC(Near Field Communications)と呼ばれる非接触通信技術を使ってのモバイル決済(Mobile Payment)やチケット照合などに利用しているのが、MasterCard PayPassやVisa PayWave、Google Walletなどの技術となる。日本では、モバイルFeliCaやおサイフケータイなどの名称でおなじみだ。

NFC(Near Field Communications)対応の可能性は?

 残念ながら現在のiPhoneは同種の機能を持たないが、アップルは、非接触通信を用いたコンサート入場システムといったNFC関連ソリューションの特許申請を行なうなど、以前より同分野に興味を持っていることが知られている。次期iPhoneでのNFC採用が噂されていることから、今回のAuthenTec買収がNFCを用いたモバイル決済システム導入への一歩となると予想する声は多い。

 NFCについては、現在Android OSやBlackBerry 7 OSで標準サポートが行なわれているほか、Microsoftも次期Windows Phone 8でのNFCサポートを表明している。AndroidについてはGoogleがWalletサービスを提供しており、Windows Phone 8もまたMicrosoftが決済端末としての同OS搭載デバイスをアピールしている。

 決済端末としてのNFC対応を除外したとしても、モバイル端末の重要性の高まりに合わせて端末内データ保護の仕組みは重視されつつある。今回のようなAuthenTecの指紋認証保護ソリューション、あるいはICチップを組み合わせたデータ保護などは今後大きな意味を持ってくるだろう。現在のiPhoneは4桁のPINコードによる端末保護と、紛失時のリモートワイプと比較的シンプルなセキュリティ実装に留まっているが、今後はさらに高度なセキュリティ技術を端末本体に実装してくるようになると予想できる。



前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

ASCII.jp RSS2.0 配信中