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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 ― 第101回

プロが仕事を諦める時 対談・佐久間正英×佐藤秀峰【業界編】

2012年08月05日 12時00分更新

文● 四本淑三

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制作予算と著作隣接権の関係

―― ちょっと話は変わるんですが、佐藤さんの「漫画貧乏」で、知らないうちに自分の作品が外国で出版されていたという話には驚きました。

佐藤 それで急に300万円とか振り込まれるんですよね。

―― すごいですよね、それはそれでうらやましいというか。

佐藤 いや、「これを使ったら捕まるんじゃないか?」とかドキドキしちゃうんですよ。「なんでこうなるんですか?」と何度も聞いているんですけど、そういうものですと流されちゃう。それで弁護士さんを立てて話し合いをしたことがあって。

気づかないうちに著作物の翻訳出版といった二次利用が決まっていた例もあるという。もちろん著作権利用料は振り込まれるが、突然高額のギャランティが支払われるため「これを使ったら捕まるんじゃないか?」と思わされたことも

―― でも漫画の著作権は作家が持っているんですよね?

佐藤 作家が100%持っています。

―― それで大っぴらに勝手に使われるってどうしてですか?

佐藤 漫画は数年前まで出版という出口しかなかったんですよね。それで出版社が自由にやるという慣例みたいになっていたんですが、電子書籍やネットのような、色んな発表の場が出てきた。著作権は漫画家が持っているので自由にやっていいはずなんですけど、それは困るって出版社は言いたいわけですよね。それで著作隣接権というものを設定して、出版社にも電子の権利を持たせろと。

佐久間 あっ、そういうことなんだ、出版の隣接権って。どういう意味なのかと思ってたんですけど。

佐藤 音楽の場合でしたら、制作費を出した人が権利を持つのは、まだ納得がいくんですけど、漫画の場合、制作費は漫画家が100%負担してるんです。

佐久間 制作費は出ていないんですか?

佐藤 掲載されて原稿料が何ヵ月後かに振り込まれるというだけなんですね。あれは誌面への掲載料ですから。

音楽の場合、スタジオをふくめた音源の制作費をレコード会社が持ち、代わりに原盤権を保有する。出版の場合、漫画の制作費は漫画家が持ち、出版権を出版社が保有する。「そうか、逆なんだね…」と佐久間さん

―― じゃあ、漫画と音楽は逆方向に進んでいるわけですね。音楽は制作費が出ない代わりに、隣接権は自分たちが持つという方向に進んでいる。

佐久間 そうだね。自分らでやったほうがいいという話になりつつある。

佐藤 漫画は制作費は作家が負担しているのに、何で隣接権だけ欲しいという話になるんだろうという感覚ですね。

―― それに出版業界は自炊代行にNGを出したでしょ。CDをリッピングしてiPodで聴くみたいな感覚で、タブレットで本を読むという習慣ができたかも知れないのに、自炊そのものに後ろ暗いイメージができてしまった。

佐藤 著作権を持っているのが作家なので、作家に自炊代行は禁止だと言わせなければならなかったんです。作家さんも「これを止めさせるには隣接権を出版社に渡すしかないんだ」って、自分自身で言い出しちゃうんですね。何年も前にブックオフが伸びた時期に、古本を売っちゃいけないというキャンペーンを出版界と作家が一緒にやったんです。あれも結局、作家さんを表に立たせてやったんですけど、最終的には出版社がブックオフの株主になっておしまいという。

佐久間 あー、なるほど。

―― ありましたねえ。

佐藤 また騙されるのかー、っていう。

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