半導体企業の英CSR(Cambridge Silicon Radio)は7月17日、SamsungがCSRのモバイルハンドセット事業部を3億1000万ドルで買収することで合意したと発表した。同事業部はモバイル端末用の無線技術と位置情報などを展開しており、Samsungはモバイル向け半導体分野を強化する狙いだ。
CSRはイギリス・ケンブリッジを本拠地とする半導体設計企業で、接続技術、位置情報、イメージング、オーディオなどを手がけ、Bluetooth、Wi-Fi、NFC、GPSシステムなどの技術ポートフォリオを持つ。携帯電話向けBluetoothチップ事業で世界的によく知られている。
SamsungはGALAXYシリーズで展開するスマートフォンやタブレットでCSRの位置情報チップを利用するなど、2社は以前から提携関係にあった。今回の取引により、BluetoothやWi-Fiを含むCSRの無線接続関連技術を獲得するほか、21件の米国特許も取得する。Samsungはまた、無線接続と位置情報サービスに関するCSRの特許にアクセスできる。
これによりアプリケーションプロセッサプラットフォームを強化して、半導体ソリューションプロバイダーの地位を強固なものにする、と狙いを説明している。
Samsungは自社の半導体部門でARMベースのプロセッサー「Exynos」などを持ち、自社スマートフォンやタブレットに搭載している。スマートフォンではHTCなど多数のベンダーがQualcomm「Snapdragon」シリーズを採用しており、CSRはこの分野で遅れをとった。なお、法廷で激しく争っているAppleはSamsungの半導体部門にとって最大の顧客でもある。
CSRはモバイルハンドセット事業部売却により、Bluetooth、屋内ロケーション・ナビゲーション、自動車向けインフォテイメントなどの成長市場にフォーカスする。モバイル関連ではこのところ不調が続いており、2012年第1四半期は1660万ドルの損失を計上していた。
Samsungはモバイルハンドセット事業部の取得のほか、CSRに3440万ドルを出資し同社の株式4.9%を取得することも発表している。取引は現金で行い、2012年第4四半期に完了を見込む。