性能面は底上げしたが、快適さは維持
R632の変更点はカラーだけではない。最も大きな変更点は、CPUを含めたプラットフォームが、Sandy Bridge系からIvy Bridge系に変わっていることだ。
だが率直に言って、その変化はあまり劇的には感じられなかった。いや、別に悪い意味ではない。Ivy Bridge系になることによってもたらされる変化は、通常は「発熱の低下」「グラフィックを中心とした性能の向上」という形で現れる。だが、R632とR631の間での変化を数値として見ても、使ってみても、さほど劇的な違いには思えないのだ。元々のR631が優秀な設計の製品であり、スピードも発熱もかなり快適だった。R632でもその伝統は継承されているからで、数値面でも大きな差はない。
例えば発熱だが、最も負荷が高く発熱が大きい部分はR631より発熱することもある印象だが、全体的にほとんど差はなく、誤差レベルといえる。発熱が上がりにくい印象は受けたが、明確な差はわからない。
Windowsエクスペリエンスインデックスの値は「5.9」。グラフィックが強化されたことによって変化した部分の差がトータルでの値の差になっているが、すべての値で順当な変化が起きている。とはいえ、その差は日常的な用途では、なかなか体感しづらいレベルかもしれない。
バッテリー駆動時間も同様だ。「バランス」設定で若干短く、省電力設定で若干長くなっているが、顕著な差というよりは誤差に近い。
これらの点を考えると、基本的な性能面で底上げされているにも関わらず、快適さの面ではマイナスになっていないというのは、R632の美点と言えそうだ。だが、逆にいえばあくまで順当な変化であり、R631を持っているような人が買い換えたいと思うような違いではない、と言える。
このあたりは、同じCPUプラットフォーム・チェンジを主体とした変化でも、MacBook Airなどとは大きく異なる点である。別の言い方をすれば、「そもそも東芝のエンジニアが、R631の時にどれだけがんばって開発をしていたのか」というのがよくわかる結果でもある。
最後に結論だ。R632は、R631の魅力をそのまま引き継いだ、良い製品といえる。重さでは、NECパーソナルコンピュータの「Lavie Z」(次回で記事掲載予定)に負けるが、操作感の面ではまだ評価すべき製品である。他方で、デザインが大きく変わっていない以上、R632のマイナス点もR631と同じ、と言える。そういう意味では面白みには欠ける。また返す返すも、28FKでキーボードバックライトをカットしたのは残念である。ディスプレー解像度が1366×768ドットであるのも、今となっては魅力に欠ける。
次のモデルでは、いろいろな部分で「もう一声」がんばってほしいと思う。
- お勧めする人
- ・薄型で軽量なノートパソコンを求めている人
- ・発熱が低いパソコンを求めている人
dynabook R632/28FK の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i5-3317U(1.70GHz) |
メモリー | 4GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 13.1型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | SSD 128GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、WiMAX |
インターフェース | USB 3.0×1、USB 2.0×2、HDMI出力、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど |
サイズ | 幅316×奥行き227×高さ8.3~15.9mm |
質量 | 約1.12kg |
バッテリー駆動時間 | 約9時間 |
OS | Windows 7 Home Premium SP1 64bit |
価格(予想実売価格) | オープンプライス(14万円前後) |
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スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場 (アスキー新書)西田宗千佳(著)アスキー・メディアワークス
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)。最新刊は「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」(アスキー・メディアワークス)。
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