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「クラウド/ICTアウトソーシング動向調査2012」をひもとく

アウトソーシングの本流へ!変わるクラウドパートナー選び

2012年07月09日 13時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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7月9日、調査会社のアイ・ティ・アールは「クラウド/ICTアウトソーシング動向調査2012」を発表した。中堅・大企業を対象に行なわれた今回の調査では、9割がクラウドを重視し、中でもプライベートクラウドへの移行に関心を持っている実態が明らかになった。

アウトソーシング推進企業はクラウドへ向かう

 今回実施された「クラウド/ICTアウトソーシング動向調査2012」は、クラウドサービスをIT戦略上どのように位置づけているか、あるいは移行プロセスや優先順位はどうなっているかを調べるため、従業員数500名以上の652社を対象に行なわれたもの。業種の比率もおおむね実態と相似しており、所属部署は7割が情報システム部、3割が経営企画部門となっている。クラウドやアウトソーシング戦略に関しては4割が直接関わっており、6割は現状や今後の計画に関わっているとなっている。おおむね中堅・大企業の情報システム部を対象としていると考えてよいだろう。

回答者プロフィール(従業員規模)回答者プロフィール(所属部門)

 まず、ITのアウトソーシングを進めようと考えている企業は全体の65%、さらにクラウドサービスの積極活用を進めようとしている企業は75%超に上るという現状が明らかになった。一口にITアウトソーシングといっても、保守や運用、開発、BPOなど幅広いが、こうした中でクラウドの導入意向はきわめて高い。

回答企業のIT戦略の現状

 注目したいのは、「クラウド」と「アウトソーシング」の相関性に関する調査である。特にアウトソーシングを推進しようとしている企業に限れば、クラウドの活用を積極的に進めるべきと考えているユーザーは90%を超えるという。単なるサービス利用のクラウド検討・利用から、IT全体の最適化・運用効率化を進める有力な手段として、国内企業がクラウドサービスを位置づけていることがわかる。

「クラウド」と「アウトソーシング」の相関性

 次に、クラウドサービスの利用状況を聞いたところ、SaaS、PaaS、IaaS、プライベートクラウドのうち、1年以内の導入を考えている企業の割合はプライベートクラウドがトップ。現状では2位だが、導入意向を含めると1位のSaaSを上回るという。

クラウドサービスの利用状況

 アプリケーション別の構築・運用形態を見てみると、現時点では自社構築+自社運用が最多。自社構築+運用アウトソーシングをあわせると、すべてのアプリケーション分野で半分以上の企業が自社構築のいわゆるオンプレミス型を採用している。しかし、今後はすべての分野でクラウドの利用が増える見込みで、70%のオンプレミス率が今後は40%程度に激減する。特にプライベートクラウドの期待は高く、クラウド導入の原動力となっている。

アプリケーション別の構築・運用形態

 ここで注目したいのが、クラウドへ移行する分野がアプリケーションを問わないという点だ。アンケートでは、メール/グループウェアやファイル共有、ブログ/SNSなど情報系システムのみならず、会計、人事、営業支援、販売管理、生産などいわゆる基幹系と呼ばれるシステムにおいても、クラウド移行するという結果が出ている。プライベートクラウドを採用した会計システムは今後倍増すると見られており、いよいよ基幹系にもクラウドの波が訪れてきたことがわかる。

プライベートクラウドはなぜ人気が高いのか?

 では、プライベートクラウドはなぜ人気が高いのか? メリットについて調べた調査を見ると、1位に挙がったのは「自社で自由にサービス構築できる」「自社でサービス内容を制御できる」という点。情報システム部としては、クラウド化したいが、構築や運用をある程度コントロールしたいというニーズがあるようだ。一方で、「自社で資産を持つため、財政的なメリットが得られない」「初期コストが高い」「トータルコストが高い」などのデメリットもあるようだ。

 コスト面であまり魅力のないプライベートクラウドが本命と目されている理由は、前述した「コントロール可能」というメリットのほか、システム統合の需要があるようだ。調査では、今後サーバーやアプリケーションなどの統合を進めたいという意欲が高まっていることも明らかになっており、「実施中で、成果が現れ始めている」「実施中だが、成果が出るのかこれから」などの割合が他に比べて高い。こうしたシステム統合の受け皿として、構築の自由度の高いプライベートクラウドが選ばれている可能性がある。

パブリック・クラウドのメリット/デメリットプライベート・クラウドの メリット/デメリット

 一方、プライベートクラウドとの対抗になるパブリッククラウドはどうなっているだろうか? ここでのメリットは「自社で資産を持つ必要がない」「コストが安い」が圧倒的で、まさにプライベートクラウドのデメリットを解消するものとなっている。一方で、「サービスの継続性が保証されない」「既存システムを稼働させることができない」といったデメリットも挙げられている。このうち、サービスの継続性とは事業者がまさにサービスを止めないで将来的に進めていけるかという懸念を現わしたもの。裏を貸せば、サービス事業者選びに重視されるポイントといえるだろう。

クラウド移行への課題と方法とは?

 次に、どのようにクラウドへ移行するかという調査の分析に移っていこう。「既存システムのクラウド化アプローチ」を調べた調査では、物理環境をいったん仮想化したのちクラウド化するという手順を踏む企業が全体の1/4にのぼることがわかった。一方で、物理環境を直接クラウドに移行したり、システムの再構築でクラウド化を行なうクラウドファーストな企業も全体の1/3にのぼった。これは仮想化やクラウドに対するイメージの違いもあるが、クラウドへの移行をいち早く行なったファーストリテーリングなどの先進事例の影響もあると考えられる。従業員数別で見ても、全体の傾向に大きな変化はない。

既存システムのクラウド化アプローチ

 また、オンプレミスからクラウドに移行するにあたっての課題は、やはり1位が「セキュリティの確保」、2位が「投資対効果」などとなっている。3位・4位はクラウドの適合性、マイグレーションなどシステム自体がクラウド化できるかの不安。サービス事業者が重視する可用性の確保は5位にとどまっている。

オンプレミスからクラウドへ移行するうえでの課題

注目となるDRとデータセンター

 クラウド導入の鍵ともいえるデータセンターに関しては、要件が厳しくなっていることがわかってきた。データセンター内での柔軟なリソース拡張はもちろん、複数データセンターをまたいだリソースの増強やデータ移行、バックアップ、仮想マシンのマイグレーションなども要求されるようになった。

データセンター選定で必要と考える機能(クラウドに対する意欲別)

 それに関連して、物理的に離れたサイトにおいてシステムやデータを冗長化するディザスタリカバリ(DR)についての調査では、実施も計画もないという企業が4割強、単一サイトでの冗長化にとどまっている企業が4割弱で、実施率は少ない。しかし、今後は複数サイトでの運用を実施する計画があるという企業も増え、海外データセンターの利用を視野に入れている企業も多い。国内、海外を問わず、統一したGUIやオペレーションで管理できるサービスが求められてくるという結果になった。DRがほとんど実施されていない1000人以下の企業においても、具体的な計画を持っている割合は、他の従業員数の会社と同じになっている。

ディザスタ・リカバリの実施状況

 今後、単一サイトでのスペック競争ではなく、マルチサイトでのデータセンター活用が事業者側にとって大きな課題となるのは間違いない。DRや統合管理を考えると、データセンター間を接続するネットワークの帯域や品質管理なども、重要視されることになる。

調査からひもとくアウトソーシング事業者のクラウド戦略

 調査をひもとくと、今後のクラウドパートナーの選び方がかいま見えてくる。IT資産をアウトソーシングしたいというニーズは強いものの、その受け皿となるプライベートクラウドにおいては、コストよりも自由度の高さが求められている。一方で運用管理の効率化も必須になるし、データセンターのDR対応やグローバル化なども重要になる。これらを総合し、クラウドサービスを積極的に活用すると応えた回答者に、アウトソーシング事業者に求めるクラウド戦略を聞いたのが、以下の調査結果だ。

アウトソーシング事業者に求めるクラウド戦略

 これを見ると、単なるプライベートクラウド、パブリッククラウドだけではなく、「クラウド戦略のコンサルティング・サービスが提供できる」「オンプレミスからクラウドサービスへの移行サービスが提供できる」などより上流のサービスが重視されていることがわかる。冒頭に述べたとおり、クラウドは単なるサービス利用という段階を超え、アウトソーシング最適の手段と位置づけられている。その意味では戦略的なIT活用を検討する上で、どのようにクラウドを組み込んでいくかをきちんと立案・実行してくれるパートナー探しがきわめて重要になってくるといえる。

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