コンパクトなのに量感たっぷりの低音再現!!
クリプシュの「Image S4A」
iPhone用の次はAndroid用製品を紹介しよう。「クリプシュ」はアメリカではもっとも古いスピーカーメーカーで、劇場用スピーカーをはじめとする業務用スピーカーでも有名。これまではiPhone用の製品を発売していたが、「Image S4A for Android」(直販価格1万1800円)はImage S4をベースとした初めてのAndroid用モデルだ。
ヘッドホン自体の作りはImage S4と同様で、コンパクトサイズのカナル型。独自の「デュアル・マグネット・マイクロスピーカー」を採用している。
ユニークなのは「Ear Gels」(イヤーゲルズ)と呼ばれるイヤーピース。人間の耳の穴の形が楕円形であることに注目し、イヤーピースの形状も楕円形としている。そのため快適な装着性と高い遮音性を実現できた。
実際に装着してみると、小さく軽いこともありフィット感は良好。ハウジング部の耳の外へのはみ出しも少なく、髪をかき上げたりしてもヘッドホンに触ってしまうようなこともない。
リモコン機能を使うためには無料で提供されている専用アプリ「Klipsch Control」が必要。アプリはAndroid 2.1以降に対応となっているが、機種によってはすべての機能が使えるわけではないようなので、ウェブページで対応状況を確認しておくといいだろう。
ワンボタンのリモコンは、1回押し/2回押し/3回押しで好きな機能を設定することが可能。リモコン操作をしたい再生アプリの登録なども必要だ。
その音は、かなりパワフルな低音。能率もよく、エネルギー感たっぷりのサウンドだ。ジャズを聴くと、バスドラムの響きが量感たっぷりに再現され、ベースの音色も厚みがある。トランペットなどは輝くような高域の伸びはいくぶん穏やかだが、炸裂するような音の勢いはしっかりと出て、聴き応えのあるブ厚い表現となる。
クラシックを聴くと、解像感の高さというよりも個々の楽器の音色の鳴らし分けがうまいタイプだとわかる。オーボエやクラリネットの音色の違いを鮮やかに鳴らし分け、色彩感豊かな再現になる。もちろん、低音がしっかりとしているので、オーケストラのスケール感や雄大さもよく感じられる。
少し気になったのは、ポップスなどを聴くとベースがやや膨らみ気味になること。元々の曲が低音を強調気味にしていることもあるのだろうが、パワー感がやや過剰になったような感じがしてしまった。相性が悪いというほどではないが、あまり電気的な加工をせずに生の音を忠実に録音する傾向のクラシックやジャズの方がしっくりとくると思う。
軽快な装着感がうれしい
ボーズ「MIE2 mobile headset」
同じくアメリカのボーズも、「MIE2 mobile headset」(直販価格1万5750円)というAndroid端末対応モデルをリリースしている。
「StayHearチップ」と呼ばれるユニークな形状のイヤーチップなど、ヘッドホン部分は「IE2」をベースとしており、独自の「トライポート」技術を採用したものとなっている。
独特なイヤーチップの形状は、初めて見るとギョッとしてしまうし、耳の中でかさばりそうに見える。ところが装着してみるとその軽快さに感激する。
装着方法はまずポート部分を耳の穴に軽く当ててから、ハウジング部を反時計回り(右側の場合)に少し回すと、飛び出したサポート部分がするっと耳の中に収まり、ヘッドホン全体をホールドしてくれる。
イヤーチップはシリコン性なので、装着してしまえば耳に当たっているような感じはほとんどない。特に耳の穴にイヤーチップを押し込まないので圧迫感がまったくない。
大げさに言えば装着していることを忘れてしまうほどの軽快さだ。頭を動かしたぐらいではズレてしまうこともないし、音漏れの心配もない。カナル型の耳に押し込まれる感じが苦手な人には福音のようなインナーイヤー型だ。
リモコン/マイクは通話/終話と再生/一時停止のみのシンプルなもの。そのためもあり、国内で発売されている多くの機種に対応する。機能を盛り込もうとすると対応機種が制限されてしまいがちなAndroid端末だが、実用上は十分だし、使っているスマホに合わせて選択しないで済むメリットの方が大きいと思う。
その音はボーズらしいバランスのいい再現で、ジャズではトランペットやアルトサックスの表情豊かな鳴り方にほれぼれとする。管楽器の鋭い音の出方はほどほどに穏やかで、刺激的な鳴り方をしないので聴き心地がいい。ホットな温度感を感じさせる自然な音で、生演奏をステージから離れた席で聴いているときの感じに近い。
そして、音の広がりも豊かだ。解像度の高いタイプではないので、立体的なステレオイメージとは少し違うが、身体全体が音に包まれているような音場感がある。そこにクリアで実体感の豊かなボーカルが浮かび上がる。この再現はとても気持ちがいい。
低音はインナーイヤー型としては十分で、ウッドベースの胴鳴りも必要なだけ出てくる感じ。不足はなく、過剰にもならない絶妙なバランスのよさだ。このまとまりのよさがボーズの魅力だろう。
決して好録音とは言えない流行のポップス曲でも、曲の魅力を引き出して楽しく聴かせてくれる。録音の善し悪しや歌い手の技量などをあまり気にさせず、いいところをピックアップしてくれるような、いい意味での大様さがあるのも、いろいろなジャンルの曲を聴く人には使いやすいだろう。
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