このページの本文へ

SSLサーバー証明書市場に異変あり?

証明書事業に本腰!「ベリサインの跡地」を狙うエントラスト

2012年07月03日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

PKIビジネスの老舗ともいえるエントラストが、日本においてSSLサーバー証明書事業を本格化する。米エントラスト チーフマーケティングオフィサーに、サーバー証明書ビジネスへの意気込みや差別化ポイントについて聞いた。

ID管理をコアに据え続けるPKI生みの親

 「エントラスト(Entrust)」といえば、公開鍵をベースとしたセキュリティ基盤であるPKI(Public Key Infrastructure)の生みの親とも言える存在。1990年代にノーザンテレコムのセキュリティ部門がスピンアウトしてできたセキュリティシステム会社で、日本法人も米エントラストのほか、セコムやNTTデータ、ソニーや東京三菱銀行、日本生命など14社が出資して、1998年に設立されている。セキュリティベンダーとしては、日本ベリサインとほぼ同期の老舗。当時はTVのニュースでも報じられ、大きな話題となった。

 その後、セコムトラストとの提携を経て、2003年には米エントラストの100%子会社となり、現在は投資会社のトーマブラボの傘下でビジネスを推進している。この間、ドットコムバブルの崩壊などを経てビジネス的に厳しい時期もあったが、米エントラスト チーフマーケティングオフィサー ヴァイスプレジデント デビット・ロックバム氏は「長らく政府機関や金融機関などで高い実績があり、トーマブラボーの中では一番利益を出している」と胸を張る。

米エントラスト チーフマーケティングオフィサー ヴァイスプレジデント デビット・ロックバム氏

 ビジネスの基本も、実はまったく変わらない。「セキュリティの出発点は、ID管理だと考えている」(ロックバム氏)とのことで、PKIやシングルサインオンなどのソリューションを展開。現在では不正検知やクラウド向け製品なども手がけている。なにより、真っ赤なロゴも、信頼性の高いブランドもそのままだ。

今、SSLサーバー証明書を本格化させる理由

 そんな同社がビジネスとして着実に育ててきたのが、SSLサーバー証明書「Entrust Certificate Service」だ。日本ではあまり知名度がないが、ロックバム氏は「2000年に参入してからグローバルで3位になった。更新率も98.5%を誇っており、顧客も契約をどんどん拡げてくれている。弊社の売り上げ別シェアも8%程度を確保している」と分析している。

 エントラストのSSLサーバー証明書のメリットは、大手の政府機関やエンタープライズなどで長年培ってきた信頼の置けるブランド。「会社自体がCA/ブラウザフォーラムのメンバーであり、責任ある立場をとらせてもらっている」(ロックバム氏)とのこと。また、証明書をまとめて管理するツールも大きな売り。「弊社の管理ツールではネットワーク全体をスキャンし、マルチベンダーで証明書を検出できる。1つのインターフェイスから証明書の失効時期や利用場所、暗号化、ポリシーのチェックなどを一元的に行なえる」と説明する。他社のようにマルウェアやWebサイトの改ざん検知など付加的な機能ではなく、証明書自体の品質向上、管理の効率化を推進していくのがエントラストの方向性だ。

 価格に関しては、セキュリティが確保されているブランドで競争力のあるプライシングを目指すという。ロックバム氏は、「われわれは研究開発で妥協していないし、安すぎる証明書はかえって抵抗感があるのではないかと思っている。とはいえ、ベリサインに比べて安い」と語る。

 このように日本を始め、攻めに転じている理由は、SSLサーバー証明書で大きなシェアを誇るベリサインがノートンブランドに移行したことだという。ロックバム氏は、「ベリサインという強力なブランドが消えたことで、北米ではシフトが起こりつつある。数年前まではベリサインしか考えられないという会社が、サービスレベルやブランド、価格帯などを考えて、エントラストに切り替えていいんじゃないかと考えはじめている」と語る。先日、トレンドマイクロがSSLサーバー証明書事業に参入したのと同じく、エントラストも市場の「地殻変動」をかなり意識しているようだ。

日本での直販サイト(https://buy.entrust.net/jp/)

 直接・間接販売の両面を視野に、日本でのSSLサーバー証明書のビジネスも本格化させる。先頃、日本語の購入サイトを開始し、サポートや営業も拡充。ロックバム氏は、「サーバー証明書がコモディティ化したという声も聞くが、ブランドや完全性、使いやすさは過小評価できないと考えているユーザーやパートナーも多い。今後も事業拡大できると考えている」と意気込みを語る。

■関連サイト

カテゴリートップへ