自分のフォロアー5000人くらいいるんですけど、
だいたい誰がどんな人でどんなイベント行くとか分かる
―― 次にイベントやるとしたらどこらへんを狙ってます?
Tomad 今年中にそれなりに大きい箱で、他のレーベルと合同でイベントをやってみようかなって。アルテマレコーズというのがあるんですけど、fu_mouさんという人がいて、今は職業作家もしていて有名な声優さんとかの曲も作ったりしているんですけど、ここでのリリースがきっかけになって有名になったんですね。あと、分解系というレーベル。こっちはエレクトロニカとかアンビエントとか、家で聴くような音楽をやっているレーベル。日本の中でも面白いレーベルなので、何かできたらいいなと思ってます。お客さんの層もある程度似ているし。
―― ボカロとかニコニコ動画なんかの人たちとも、またぜんぜん違うわけですよね。どんな風に集まってきた人たちですか?
Tomad 自分でも作っている人とか、DJをやっていたりする人。同世代ですよね。MOGRA以降だと、ネットレーベルとかアニソンとかJ-POPとか、そういうのをかけるクラブイベントは毎週必ずどこかであるわけです。そこでDJがマルチネの曲もかけてくれたりする。それでファンにもなってもらえて、そういう人達が一堂に会するみたいな感じです。
―― じゃあネットで集まるというより、リアルな場が増幅された感じなんですね。
Tomad Twitterを介したリアルネットワークみたいな。例えばいいDJが演っていたら、その人に向かって@を飛ばして「良かったですよー」みたいなことを伝える。そうしたら「次にマルチネのイベントがあるんですけどどうですか?」みたいにDJが返す。そんな流れがたくさんあります。だからクラブでもわざわざインターネットチームというのを用意して、全員のiPhoneにWi-Fiが行き渡るように、アクセスポイントを立てて、回線がパンクしないように見張っています。
―― すごい! それくらい現場でのコミュニケーションに必要だと。横と縦の関係がそこで一気にできちゃうから。
Tomad 行ったら行ったでみんなつぶやくし、それを僕は全部見て、お客さんに不満な点はないかという事を常にチェックしています。この前もクラブイベントに行っているのにTwitterばかり見ちゃって。全然、イベントは見てない。
―― それぜんぜん楽しくないじゃないですか。
Tomad いや、これをやっている時が楽しいんです。自分のフォロアー5000人くらいいるんですけど、だいたい誰がどんな人でどんなイベント行くとか分かるから。
―― それもすごい! シーンをそのまま把握していると。いろんな意味でアンテナ立てまくってますね。
Tomad ただ、最近がっつり関わっている事として、渋家(しぶはうす)というシェアハウスみたいなスペースがあるんですけど。震災の後くらいから、Twitterやソーシャルだけに頼るのは危険だなという感じがしているんですね。
―― あ、あの噂の。それは共同体という意味でですか?
Tomad リスナーを拡大する意味でも、コミュニティーとしてもですね。別のネットワークとして一緒に組んでやれば、そのまわりにいる人たちにもマルチネが伝わるんじゃないか。去年の8月くらいから、マルチネで出している芳川よしのとお金を払って、いさせてもらってます。
―― 実際に住んでいるんですか?
Tomad 半分くらい。あとは実家とか、いろんなところを転々としています。いま音楽を作っている人と生活しているんですけど、あんまり口出しすることもないんですよ。コードとかメロディーも考えられないんで。だったらプログラマーと住んだほうが、レーベルとして発展できるものがあるんじゃないかと。
―― このiPhoneアプリみたいな展開とか。
Tomad ヒップホップもそうだと思うんですけど、ファッションのように外に見える部分も面白いのをやりつつ、面白いものと協力して刺激を受けて、それをレーベルの活動にフィードバックしていく。そうじゃないと続かないと思います。マルチネは無料で出しているのでコラボレーションもしやすくて、権利関係もオリジナルならばアーティストに許可をとれば済む。だから面白いところがあったら、積極的に関わっていきたいです。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
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