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職業は「プリズムお兄さんです」

才能は2ちゃんがソース、ニコ動の過激派・さつき が てんこもり

2012年06月23日 12時00分更新

文● 広田稔(@kawauso3

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最初の投稿は300再生 「ニコ動クソだよ!」

── そこからニコ動が出てきて、投稿を始めてハマっていく流れですか?

さつき それも難しくて、正直、最終的に2ちゃんねるだし、媒体はどこでもよかったんです。ニコ動も最初は2ちゃんねるの新しいおもちゃぐらいの感覚で見てました。初期のYouTubeのマッシュアップサイトだった頃に「面白いけど、一過性なんだろうな」と思ってたら、だんだん新しいものを生んでいく場に変わっていって、muzieとかに曲を投稿していたメンバーがそっちに移っていった。

 インターネットは、ニコ動も含めてとにかく流行が速い。単純にメインストリームが別のサイトに移ったら、僕たちもそこに行きますよね。でもやってることはmuzieの時代と同じで、完パケではなくてMP3を作って公開して、聴いてもらう。その文化は受け継がれている。今は音楽業界全体がそういう流れになっていますよね? それをわれわれが誰よりも速くやっていた。といっても職人魂とか一切なくて、ネットで公開して反響をもらって、面白おかしくできればいいってぐらいですが。

muzie


── ニコ動では「ファミマ秋葉原店に入ったらテンションがあがった」でさつきさんの名前を知った人も多いと思います。

さつき あのリミックスは速さ勝負だなと思って、KNさんが動画を公開した次の日にボーカルの子に連絡して、宅録してました。トラック的にはショボいんですけど、チープなほうが特にクリエイターが聴いてて「ああ、やられた! 俺がやりたかった!」と思ってもらえるはず。その感じを大切にしたい。

※ KNさんの動画 : ネタモノトランス「ファミマに入ったらテンションがあがった」。オリジナルは2009年投稿、現在の再生数は270万超。シーケンサーはKORG Electribe MX(EMX-1)。




── ネットは「やるかやられるか」という勝負の場なんですね。

さつき 多分、仮想敵で、全員が空中と戦ってるだけなんですけどね(笑)。バンドは対バンでファンを取り合ったり、ヒップホップもDISり合いがあったりしますが、そういうのが一切ない。だってインターネットで、家ですから。その辺の感覚は、ある種悟りの領域で、われわれは誰にも負けない自信があります。


── 「ファミマ~」はめちゃくちゃ伸びましたね。当時見てて、どういった気持ちでしたか?

さつき 実はその前に初音ミクを発売日に買って、ボカロ曲を投稿してたんですが、300程度しか再生されなかったんです。当時、専門学校に行ってて、着うたやローカルCMの仕事もして、自分としては音楽の道で食っていく気だったので、プライドだけがすごく高かった。「いや、俺は作った段階では『みっくみく』を超えてたのに、なんでこれが伸ねーんだよ」って。

 それでも「いや、たまたまだよ。確かに荒い部分もあったし、俺ほどの人材がもう一度ちゃんと上げれば伸びるだろう」って、3ヵ月かけてもう一曲作って投稿したんです。


── 3ヵ月で1曲!? 制作期間がぜいたくすぎる……。

さつき でも、5000再生だった。「5000って何だよ。3ヵ月もがんばって作ったのに」って。それが、今回のアルバムの1曲目に入ってる「ウィンク・トランジ・スター」です。かなり小難しいことをやってるので、今作れって言われても時間的に無理です。そういうことがあって、「ニコ動クソだよ!」って早い段階でボカロをあきらめてしまった。




── 気持ちが荒れてた時期なんですね。

さつき いや、ずっと荒んでるんですけどね。でも300から5000って再生数が着実に伸びていたので、もう3、4発がんばれば、ボカロPの仲間にしてもらえたのかもしれません。それからボカロ曲をやめて、リミックスばかり投稿していたときに、「ファミマ~」がヒットした。「なんだやっぱり聴いてくれるんじゃん。100万まで伸びても当然だよ」って図々しく思って、そこからコンスタントに投稿するようになったという(笑)。


── 最近だとHamarさんの「Romance of rose」、ろんさんの「お断りします」、林健太郎さんやポエ山さんらと組んだ「アストロトルーパー」など、コラボが増えてきて絶好調という印象です。

さつき 本当にぜいたくなんですが、クリエイターとしてはずっと右肩上がりなので、特別今、来てるという感覚は全然ないんです。Hamarさんもろんさんも、ネットを通じて出会っているので仲間の感覚ですし。

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