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Microsoftが若きエンジニアをサポートする理由 第4回

ITで音楽を作り上げたい、nana music文原氏

世界の人々とセッションできる音楽アプリ「nana」

2012年06月27日 19時26分更新

文● タトラエディット、語り●文原 明臣、遠藤 諭、写真●小林 伸

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「歌ってみた」がiPhoneでかんたんにできる「nana」

遠藤 「音楽系のサイトをやっていらっしゃると?」

文原 「はい。現段階ではまだiPhoneのアプリでして、iPhoneひとつで歌ったり、音をレコーディングした音にエフェクトをかけられたり、そうして加工した音楽を世界の人たちと共有できる『nana』というのを作っています」

遠藤 「地声にはエフェクトかけないと、恥ずかしかったりするからね」

文原 「そうですね。加えてエフェクトをかけると音に厚みがでますので。このアプリでは、さらに、共有したものに別の人が音を重ねていくことができます。非同期で離れた人たちと歌えるんです。たとえば楽器の音を入れたらバンドセッションができたり、合唱できたりするんです」

遠藤 「たとえば僕が歌ったりしますよね。で、アップロードすると誰かが音をあわせてバック演奏を付けたり、デュエットしたりできちゃうんだ」

文原 「できちゃいます」

遠藤 「じゃ、僕がアップしたものをボコーダーっぽくエフェクトかけたりもできるの?」

文原 「はい。たとえば(iPhoneを操作しながら)、これは1人で音を重ねてみたんですけど……」

遠藤 「おおっ! これ1人でやってるの?」

文原 「1人で5回重ね録りしてます。若干エコーなんかかけながらやってみました」

遠藤 「触ってみると、すごくシンプルでわかりやすいですね。いまのところ、エフェクトかけて音を重ね録りできるだけかな?」

文原 「そうなんです」

遠藤 「あまり機能を増やさない方がいいですよね」

文原 「強いて言えば、リコメンド機能なんかで、同じ音楽の趣味嗜好でつながっていけるようにしていくようにしていきたいですね」

遠藤 「これ、結構楽しいと思うんですけど、こんなサービスを作った理由はあるんですか?」

文原 「学生時代にずっと音楽をやっていて、まぁ自分自身も歌っていたりしたんでするくらい音楽が好きで。あ、じつは、その後レーシングドライバーをやっていたりもしたんですけど」

遠藤 「あーー、そんな感じするね!」

文原 「で、今なぜかウェブ業界にいるんですけれども」

遠藤 「音楽はどういったジャンルをされていたんですか?」

文原 「R&Bです。スティービー・ワンダーなどのオールディーズが大好きなんですよ。歌うことが大好きだったので、独学でいろいろ聞きながら活動していました」

遠藤 「そして、なぜかレーシングドライバーになったと??」

文原 「えーっと(笑) 、親と兄がクルマ好きだったんですよ。兄はホンダのインテグラで草レースをやっていて、僕は『何がおもしろいんだろう?』と思っていたんですけどね。免許を取るために教習所へ行って、クルマに乗り始めるとすごくおもしろい! 自分の能力を超えたものを操るというんでしょうか。それまでは『モノを使う』ということが、あまり好きではなかったんです。スポーツだとか、歌だとか、自分の肉体を使うものが……」

遠藤 「だって体格いいもんねぇ。IT業界においては」

文原 「(笑)。それからモノを操るということに楽しさを覚えて、意識的にF1を見るようになりました。シーズンが来るととても楽しみで、佐藤琢磨選手が活躍されていたのを見ながら『F1の世界に行きたい!』と思うようになったんです」

遠藤 「あの音とニオイがたまらん! とかそういう感じ?」

文原 「いや、何というか。あの世界全体にシビレていたんですね」

遠藤 「『シビレた!』って何年ぶりに聞いた!」

文原 「あはは、そうですね。それで、どうするかを調べたんです。あの世界ってクルマを買ってはじめるという人が少なくて、カートからはじめていたので、すぐに買いに行きました。中古のセットで30万円くらいだったでしょうか」

遠藤 「そういや、うちの編集部にもいたよな。自動車部があって。でもナメてかかると大変な目にあうって言ってた。意外に外に出ているんだよな」

文原 「それが学生時代のことです。地方の選手権なんかにも出たりしてました。青春をレースに費やした、という感じでしょうか。親兄弟に頼ることなく、レース会場に集まった方と協力しながらやっていました」

遠藤 「メカも自分でいじってたと?」

文原 「ショップに所属していたので、そうした方々の協力もあってこそですね。でもメカよりも操る感覚というのでしょうか。ラインの取り方を1cm変えただけでもずいぶん違うことが嗅ぎとれるようになってきて、楽しかったです」

遠藤 「ちょうど今『快感回路』という超真面目な脳科学本を読んでいて、そこには運動系の神経バランスが崩れたときに、脳の真ん中にある快感に関係する回路を刺激することをやってしまうと、サルなんかはずっと続けるんだそう。普通に歩いているような予定調和な感じだと運動系の神経バランスは保たれてていて、それは快感じゃないと。崩れたときがとても重要なポイントで、それはモータースポーツなんかにはよくあることなんじゃないかと思う。『これくらい?』と思ってアクセルを踏んでいるんだけど、実際はそれ以上に加速しちゃうとか。そのときに血液や皮膚が加速にひっぱられて違うモンメントが働くんじゃないかと」

文原 「綱渡りの感覚、というのが近いでしょうか。いちばんスピードが出ているときってむしろ落ち着けるんです。問題はコーナーを曲がるとき。減速してギリギリのスピードでハンドルを切っていく。そこで、物理的には、自分のイメージよりも早く切り始めないと、クルマが横滑りしてしまうんです。シフトダウンに失敗するとクルマが滑ってコースアウトしちゃう。なので、曲がっている間だは息ができないほどギリギリの精神状態にあるんです」

遠藤 「その間は時間が長く感じるとか?」

文原 「スポーツでいう“ゾーン”の感覚だと思うんですが、自分の身体はゆっくり動いているのに、実時間はあっという間。あの感覚がすごく気持ちいいんです」

遠藤 「そこまでどっぷり浸かってしまうと、(元の世界に)帰ってこられないんじゃない? 普通は」

文原 「普通はそうですね。それからカートからフォーミュラに移って、鈴鹿レーシングスクールで佐藤琢磨選手の後輩として頑張っていました。80人中のトップで卒業すればスポンサーからお金が出るんですが、僕は残念ながら」

遠藤 「今だったらネットで出資を募る“キックスターター”系のサービスを使えばいいような気もするけれど」

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