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仕事と生き方を変える、著名人の意見 第34回

「反省」は後ろ向きで心が沈む?

「負け惜しみ」は進歩の第一歩

2012年06月11日 09時00分更新

文● 吉村作治 

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 ※この記事は吉村作治氏のメールマガジン「吉村作治の週刊e-パピルス- エジプト考古学者のマネジメント学 -」(「ビジスパ」にて配信中)から選んだコンテンツを編集しお届けしています。

 負けたら、失敗したら、反省し、その原因を良く考える。それも一つの行動。しかし、反省は後ろ向きで心が沈む。負け惜しみを言うと、力が湧き、やらなきゃという活力が出てくる。――吉村作治氏が振り返って伝える母の教えは、素朴なようでいてハッとさせる視点を提示する。

 世の中には「負け惜しみ」は敗者の言い訳で、とてもみっともないと考えている人が多いです。それに対し、「反省」は良く求められます。「反省だけならサルにも出来る」の流行り言葉がありますように、誰でも反省すべきだというのです。

 しかし、私の母・米子は「反省する者に進歩はない」と言い切っていました。反省の中で、失敗の原因を考えることに異を唱えるのではなく、「反省そのものが後ろ向きで、自分の失敗を自ら懺悔して、攻撃をかわそうという下心が見え見えだ」と言うのです。「日本人はいい人が多いので、自らの失敗を認め、うなだれている人を鞭打つようなことはしないだろうという甘い考えが見えている」と言うのです。

 「こういう人って二度も三度も同じ失敗をするのよね。そしてすぐに反省し、その失敗を忘れ、再び同じ過ちを犯すのよ。最低だわ」と言い切ります。「負け惜しみ」は必ず人々の反発を買い、反省もなく進歩もないと人は思うのですが、人に自分の非を認めることで許されようとする心がないだけ、「何くそ、次は必ず見返してやる」という強い決意と反発心が出、負けを認めた上で、失敗の中にいい点がないかを必死で探す前向きな気持ちが見えると言うのです。

 「しかし、負け惜しみを言うことで、他人の反発が大きくなるようなら、口に出さずにじっと自分の心の中にしまっておいて頑張ればいいのよ。少なくとも自分の中では負け惜しみを考えるべきなの」というのが母・米子の考えでした。「負け惜しみは進歩の第一歩」というわけです。

自分の人生に対する、運命に対する挑戦

 失敗したとき、「敗軍の将、兵を語らず」という格好のいい生き方があります。要するに、負けたことを部下の責任にしないということで、それはそれで十分説得力があると思うのです。それに比べ「負け惜しみ」はどうなんでしょう。「負けたらじっと黙って再起を待つ」なんていうのが武士のようで良いような気がします。

 昔、CMで三船敏郎さんが「男は黙ってサッポロビール」なんて叫んでいましたが、あれはとても格好良かったです。負けたら、失敗したら反省し、その原因を良く考え、次のステップに行くべしという行動もありますが、母・米子は「負け惜しみ」を推奨していました。「反省」と「負け惜しみ」の違いは、将来に向かっての意気込みが「消極的」か「積極的」かの違いくらいあると言っていました。

 反省しても事態は良くならないのは心が沈むからで、負け惜しみを言うと、身体中に力が湧いてきて、やらなきゃという活力が出てくるというのです。また、「負けてなるもんか」というのも口ぐせでした。「誰に?」と聞いても「誰って特定の人とか事ではなく、自分の人生に対して、運命に対して挑戦するのよ」と言っていました。

 ※メルマガ「吉村作治の週刊e-パピルス- エジプト考古学者のマネジメント学 -」では、吉村作治氏が、母の教えを振り返り、その視点について論じるコーナー「米子に学べ」を連載中。

【筆者プロフィール】吉村 作治

 10歳の時に読んだ、『ツタンカーメン王のひみつ』に魅せられ、エジプト考古学者となる。現在は早稲田大学名誉教授、工学博士(早大)。1964年に早稲田大学入学後、カイロ大学考古学研究所留学。念願のエジプト発掘を始め、早稲田大学人間科学部、国際教養学部教授を経て、日本初の完全インターネット大学、サイバー大学を創設し初代学長を務めた。現在、毎月エジプトに出かけ、その合間に執筆活動、講演、テレビ出演、お祭り参加等、日本中を飛び回っている。

 「ビジスパ」にてメルマガ「吉村作治の週刊e-パピルス - エジプト考古学者のマネジメント学 -」を執筆中。

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