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なぜテーマがOC? 「87CLOCKERS」作者、二ノ宮知子さんに聞く!

2012年06月19日 12時00分更新

文● 美和正臣 撮影●小林伸

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アキバにも窒素冷却が簡単にできる場所があるといいですね

――いつも気になっていたんですけど、duckさんって液体窒素をどうやって入手されてるんですか?

duck:牧場です。

――マンガの通りですかっ!(笑)

二ノ宮:本当にいます。ああいう人じゃないけれど。

duck:普段は普通のガス屋さんで購入しています。一般の人でも買えますよ。ガス屋さんに「窒素ちょうだい」って言ったら「ビン持ってきて!」って言われますからね。窒素専用の真空のものです。ビンを持って行けさえすれば誰でも売ってもらえますし、使う分には免許もいりませんから。

――えっ! 危険物取扱免許が必要じゃないんですか?

duck:生成するときには免許がいりますが、普通に売ってもらって使う分にはなんの制限もないです。よく検問とかに止められますけど(笑)。「煙出てるけど、これ何?」って。「ああ、そうか、実験か」って言われますよ。

――ちなみに牧場ってどこなんですか。

duck:牧場は千葉です。月に2回くらいもらいに行ってます。

――牧場に行ってどうでしたか?

二ノ宮:窒素を見に行ったわけじゃないですけど(笑)。

duck:彼女は関係ない牛の写真とか撮っていましたよ。長靴履いて、牛のうんちのぬかるみに入って行ってずっと1人で。すごいなって思いました。

二ノ宮:牧場の娘さんに「サイン描いて」って言われて「何描いたらいい?」って聞いたら「チョッパー」って言われて(笑)。「ごめん、チョッパー描けない」って言ったら「じゃミッキー」って言われて。「ごめん勉強不足でミッキーも描けないの」って言ったら「じゃあ何が描けるの!?」ってすごく切れられました(笑)。

duck:「何にも描けないのー!」って(笑)。さすがの仏の二ノ宮さんも、横で見てたらここらへんがぴくぴくしていて(笑)。

――その牧場のお子さんって何歳くらいなんですか。

二ノ宮:小学生低学年くらい。「何が描けるの?」っていう問いかけは衝撃的でした(笑)。

――私、そこにいたらアワアワして何も言えないですよ(笑)。

duck:一番アワアワしてたのそこのお母さんですよ(笑)。お母さんが真っ青になっていて「なんてこと言うの、この子は!」って。

二ノ宮:あの子は絶対誰よりも強いから(笑)。面白かったですよ。チョッパー描けるようになっとこうと思った(笑)。ああいうの描けるようになっておくと飲み屋とかで、いいんですよ(笑)。そっくりなの描いて自分が作者だって言い張るっていうね(笑)。

――duckさんにお尋ねしたいのですが、ほら、我々ってもうアキバが血肉になっているじゃないですか。実際に作品になってみて、新たな発見や感想はありましたか?

(C)二ノ宮知子/集英社

duck:秋葉原の町の描写のときに、忘れてましたね。「カレー・カレー・肉・肉・カレー」っていうの。そこでもう1回再認識して「あそこだ。ああ、そうかそうか」って。やはり女性らしい観点というか。食べ物を描く時がものすごい。多分パソコンよりも食べ物の方がリアリティがあって(笑)。ああ、すごいってびっくりしました。

――言われてみれば確かにそうですね。やはり秋葉原ではそこが気になりましたか。

二ノ宮:秋葉原歩いてて、肉・肉・カレーって目に飛び込んできましたね。名物はカツカレーですよ。

duck:気付かなかったから「そうだよね」って。いわゆるオタク街のほうですね。ヨドバシのほうのおしゃれ街は別ですけど。

――作中で飲食店に入って話すって描写があったじゃないですか。実際にどっかに入られて参考にしたのですか?

二ノ宮:いや、まだ食べに入ったことはないです。作中の店は想像で描いた店なんです。ジュリアも肉食という設定なので。

duck:あそこはネームの段階で笑いました。

――「肉の万世」かどっかで食べてるのかなって思いましたよ。

二ノ宮:いや、実際にある店ではなく、こういう場面に合う店にしようということで描きました。

――じゃあ、単行本の最後の方で出てくるオーバークロッカーが集まる店もオーバークロックワークスではないわけですね?

duck:そうです。Wさんの店ではないですよ。「あれとかぶるからダメ」って言ったんですよ。

二ノ宮:私も自由度があったほうがいいって。

duck:描くときに自由度が少しでも広がらないといけないし、制約が少しでもできちゃうのはやだって思ったんですよ。名前もそのまんまじゃなくって「オーバークロックカフェ」ってだけじゃダメって注意しました。「すでにそういうのあるから!」って。そういう制約のことは言ったけど、実際中見たら全然違うんで安心しました。ところで、あれはどこ?

二ノ宮:いや、作りました、完全に。

――こんな情景のところがあるといいな、って思い浮かぶんですか。

二ノ宮:そうですね、こんな感じで、周りでギャラリーも見られるし、好きなことやってて、って自分で考えながら。

duck:確かにあれはあればいいなって思いますね。実はそういう場所が欲しい言ってる人が多いんですよ。ドリンクバーとかがちゃんとあって、窒素代も色付けて払えば汲んでれるって。可能ですからね。

――今の秋葉原だと難しいですけどね。つくばエクスプレスやら再開発があって家賃が高くなったとかありますからね。全盛期に比べればパーツショップも3分の1ですよ。

duck:10年くらい前は平日でも歩けないくらい人いましたよね。

二ノ宮:パソコンブームっていうのは10年くらい前のこと? 私そのころかな、DOS/V誌で連載してたの。3回くらいやって逃げ出したんですよ(笑)。自作のパソコンのことを描いてって言われて。

duck:なんか言ってたよね、トンチンカンなことを描いたって。

二ノ宮:レジを作りたいって訳のわからないこと描いて、逃げ出したんですよ(笑)。

――あ~、それ、他社の雑誌でしたけど、記憶にありますよ。では最後に読者に向けてメッセージを。

二ノ宮:まだまだこれからなので、たくさん面白いことを描こうと思ってますので、ぜひ読んでやってください。

duck:オーバークロックのフィルターを通して、いろんな世界が広がっていくと思います。あまり読む層を限定していないというか、もっとフィルターを通していろいろな人間模様だったり、オーバークロックって言葉が持ってる力を紹介していきたいです。作中に出てくる「人間もオーバークロックしようぜ」ってセリフ、いい言葉なんですよね。とくに草食系とか、いまどきの若い子に読んでほしい漫画かなと思います。

――なるほど、本日はありがとうございました。

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