このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

【CTIA 2012 レポ】基調講演で見える米携帯事業者の事情

2012年05月11日 12時00分更新

文● 塩田紳二

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 CTIA WIRELESSのレポート第2弾では、このイベントを通して、少しアメリカの携帯電話状況を見ていくことにしよう。

 CTIA WIRELESS初日の基調講演には、CTIAのCEOであるSteve Largent氏やCTIA議長であるPatrick Riordan氏に加え、アメリカの通信行政を司るFCC議長のJulius Genachowski氏、クレジットカード会社であるMasterCard社のGary Flood社長、インターネットラジオPANDORA社のJoe Kennedy氏といった人物が登場している。

CTIAのCEO Steve Largent氏

FCC議長のJulius Genachowski氏

 2日目の基調講演では、おなじくクレジットカード会社VISAのJohn Partridge社長、音楽ストリーミングサービスSpotifyのCEOであるDaniel Ek氏と1日目と対称になるような人物を登場させている。また2日目にはFireFoxの開発元、Mozilla CorporationのCEO Gary Kovacs氏やゲームメーカーのElectronic ArtsのJohn Riccitiello CEOも登場した。

 これまでのCTIA WIRELESSでは、大手事業者が中心だったが、ここに来て少し風向きが変わったようだ。もっとも、アメリカの携帯電話事業者4社(AT&T、Sprint、T-Mobile、Verizon)は、初日午後のパネルディスカッションにそろって登場している。

アメリカでも急速に盛り上がるモバイル決済
VISAとMasterがそれぞれのサービスをアピール

 MasterCardとVISAの2社が登場したのは、アメリカで動きが出てきた「モバイルペイメント」に関連する動きだ。GoogleがNexus Sに搭載したNFC技術によるGoogle Walletサービスが刺激となって、アメリカの携帯電話業界には携帯電話を使った支払いシステムがちょっとしたブームだ。

 日本ではモバイルFeliCaによるおサイフケータイがすでに普及しているが、その前段階として、Suicaのように交通機関の乗車券として、非接触ICカードが立ち上がり、そのサービスが携帯電話に取り込まれ、そして少額決済という流れになっている。

 一方のアメリカでは、非接触ICカードを使う公共交通機関はまだ2地域くらいにしかなく、日本と同じような流れによるNFC技術の普及は期待できない。このため、GoogleはAndroidに搭載して標準化することでシステムを導入しやすくするとともに、MasterCardなどと組んで決済サービスの実験を開始した。MasterCardは、すでにNFC内蔵カードを使うPayPassというシステムを稼働させている。Google Walletはその上に乗るサービスだ。

MasterCard社のGary Flood社長

VISAのJohn Partridge社長

 これに対して、VISAはSamsungと組み、今年のロンドンオリンピックで同社のGALAXY S IIIをベースにしたスマートフォンを使って「Visa payWave」サービスを開始する。

 これらのモバイル端末による決済サービスのポイントは、利用者が持つNFC対応のスマートフォンだけではなく、店頭に置かれるリーダーを含んだ端末の普及にかかっている。すでに普及している磁気カードを読むだけのカード処理端末を、NFCリーダー付きのものに交換/アップグレードしてもらう必要があるわけだ。

 日本では、すでに多くのチェーン店などにFeliCaリーダーが普及しつつある。しかし、海外ではこれからのケースが多い。VISAはオリンピックを利用してロンドン市内に6万店舗、14万台以上のカード処理端末を普及させる計画だという。しかし、決済に利用できるGALAXY S IIIの数は限定されており、今回の発表ではVISAまたはSamsungが支援する選手に限られる。

 一方のMasterCardは対応端末をこれまでのNexus S 4Gだけでなく、SprintがリリースするLG製スマートフォン「Viper」もGoogle Walletに対応した。また、PayPass自体はすでにアメリカ内の14万店舗に普及しており、マクドナルドやセブンイレブンで利用できる。

アメリカ発とヨーロッパ発の
無料音楽配信サービスが対決

 もう1つ対称的な存在として基調講演に登場したのが、アメリカのインターネットラジオ「Pandora」とEU圏からスタートした音楽ストリーミングサービス「Spotify」だ。どちらも音楽などのコンテンツを無料で視聴できるサービスだが、スマートフォンなどのモバイル機器で利用することで、ユーザーは自分の音楽ライブラリを端末に転送するという問題から解放される。

Pandora社CEOのJoe Kennedy氏

Spotifyの共同設立者でありCEOのDaniel Ek氏

 日本でも、すでに「LISMO unlimited」などのクラウド型でサブスクリプションモデルの有料サービスがあるが、PandoraやSpotifyは、上位の有料アカウントこそあれ、基本登録は無料で、PCなどから利用可能だ。

 どちらもモバイルからのアクセス比率が増えてきており、Pandoraは、すでに半分がモバイルからなのだという。広告モデルと課金モデルを併用した音楽サービスも、主戦場がモバイルに移りつつあるわけだ。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン