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【CTIA 2012 レポ】米国ローカルなモバイル事情が見えた

2012年05月10日 12時00分更新

文● 塩田紳二

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 CTIA WIRELESSは、アメリカの携帯電話業界団体であるCTIAが主催する携帯電話関連のイベント。毎年5月に開催されているが、今年は、5月8日から3日間、ニューオリンズ市で開催されている。

CTIA WIRELESS 2012で、京セラが発表したキーボード内蔵端末の「RISE」。Android 4.0を搭載する

 主な出展社としては、AT&TやVerizonといったアメリカの携帯電話事業者や端末メーカー、関連する半導体メーカー、アクセサリーメーカー、基地局などの設備関連企業、さらには基地局用のタワーや大電力用の同軸コネクターなどのメーカーなども出展している。そのほかVISAやMasterといったクレジットカード会社も、モバイル決済をにらんで姿を見せている。

どちらかといえばアメリカローカルなイベント
とはいえ、やっぱり会場は大きい

 内容的にはどちらかというとアメリカローカルなイベントで、ワールドワイドな内容を持つ、2月にスペインで開催されるMWC(Mobile World Congress)とは雰囲気が違う。また、アメリカローカルであるため、たとえ他国では発売済の端末でも、米国初登場といった形でクローズアップされることも多い。

 まずは、初日にざっと会場を回った印象などをレポートしよう。イベント全体的には、アメリカのイベントにしてはこぢんまりとしたもの。昨年まではラスベガスで開催されていたが、巨大なラスベガスコンベンションセンターではなく、サンズ・コンベンションセンターでの開催だった。

今年はニューオリンズで開催。フレンチ・クオーターに代表されるスペイン統治時代の雰囲気を残すエリアなど、アメリカ屈指の観光地でもあり、コンベンションもしばしば開催される

 とはいえ、そこはアメリカのコンベンションセンター。会場はそんなに狭いわけではない。ニューオリンズのコンベンションセンターは正式名を「New Orleans Ernest N. Morial Convention Center」という。ミシシッピー川沿いにあり、展示スペースだけで10万2000平方メートルあり、建物自体は1キロメートルほども続いている。そのほかに会議室などがある3階建てである。ニューオリンズの中心街にも近く、観光地で有名なフレンチクオーターにも近い。なお、来年はまた、ラスベガスに戻るとのこと。

 展示会場は、ブロック分けされており、事業者や大手企業のあるところや、端末メーカーや関連サービス企業、国別の出展スペース、同時開催されるTower Sumitt(基地局設備関連のイベント)に関連した、鉄塔などの基地局関連企業などが集まるコーナーなどもある。

Google walletが利用できるSprint向けの「Viper 4G LTE」

韓国ではすでに発売されている、5型液晶を搭載し、付属のペンによる書き込みも可能なoptimus Vu

 別途レポートを予定しているが、基地局設備関連では移動基地局や移動用の発電機など、災害対策や一時的な人口過密対策(イベントなどで人が集まったときに臨時基地局を建て、通話障害などに備える)の設備もあった。このニューオリンズは、2005年にハリケーン・カトリーナによる水害を経験しており、昨年の日本ともイメージが重なる部分がある。そんな中での移動基地局などの展示は、ちょっと見る目が違ってしまう。

4Gに積極的に投資しているアメリカの携帯事業者
LTE対応端末も次々と登場している

 端末メーカーとしては、HTC、京セラ、LGなどの姿があった。またZTE、Huaweiなどはメインはネットワーク側機器だが、端末の展示もあった。MotorolaやSamsungは、今年はブース出展を見送ったようだ。ちなみに、Nokia、Samsungは展示スペースはないが、ミーティングルームを会場内に持つ。

 デバイスメーカーとしては、インテル、Qualcommなど。アメリカ国内には、端末メーカーは少なく、しかも製造は海外のODM企業であったりするため、デバイス系の出展は限られるのだと思われる。とはいえ、新型AtomのMedfieldでスマートフォン進出を狙うインテルは、比較的大きなブースを持っている。海外で出荷の始まったAtom Z2460搭載のLenovoなどの端末を展示している。また、MWCでも行なっていたが、Androidの着ぐるみを2体参加させている。

インテルブースでは、LenovoやOrangeなどのMedfield(Atom Z2460)を使ったスマートフォンを展示

 LGは、アメリカで発売した4G端末の展示が中心。ちなみにアメリカにおける4GとはLTEとHSPA+のことだ。HSPA+は下り最大21.6Mbpsの3Gをベースにした技術だ。日本だと、3.5Gや3.9Gなどと呼ばれて4Gそのものではないという認識だが、アメリカではcdma2000やW-CDMAが3Gで、LTEなどは4Gという呼び方をする。本来は4Gではないのに、アメリカでのマーケティング事情に押し切られてLTEとHSPA+を呼んでも良いとしてしまったようだ。

 アメリカでは、急激にデータ通信の比率が高まったため、事業者は設備強化に追われている。さらに3Gの導入が遅かったせいもあって、アメリカ式の“4G”普及が急速にすすんでいる。そのほうが効率よくデータ通信の容量を増やすことができるからだ。

 最近では、4Gでもプリペイドサービスが利用できるようになるなど普及が進んでいる。というのも、アメリカなど多くの国では、プリペイド利用者の比率が高いからだ。利用方法により、毎月の料金をコントロールできるプリペイドのほうがユーザーにも好まれるようだ。この背景には簡単にクビになってしまう労働者側の事情もあり、長期契約は結果的に不利と考えられている部分もあるようだ。

 LGは、5型端末の「Vu;」(これもLTE端末)やSprintが参加するGoogle Wallet用の端末なども展示していた。

日本のメーカーでは京セラが新端末を展示

 日本のメーカーでは京セラが端末メーカーとして、携帯事業者としてはNTTドコモも参加している。ドコモは自動翻訳システムなどのほか、急速充電できるジャケット型外付けバッテリー(昨年のCEATECや今年のMWCで展示したもの)などの展示を行なう。

 京セラは、海外での携帯電話端末事業を続ける数少ない日本の端末メーカーだ。ただし、このビジネスは、もともとQualcommの端末製品事業を買収したもので、その意味では海外に足がかりのあった。アメリカでは、SprintやVirgin Mobileなどが京セラの端末を扱っている。日本式の高性能なフィーチャーフォンも多かったが、最近ではAndroidスマートフォンへとシフトしてきた。今回のイベントで新しくアメリカに導入されるのは、防水端末の「Hydro」とスライド式キーボード内蔵の「RISE」だ。

京セラの新端末で防水スマートフォンの「Hydro」。スマートフォンで防水は、海外でも認知されつつあるようだ。Android 4.0搭載。持ってみるとかなり軽い。低コスト化も進んでいるようだ

 全体的にはこぢんまりとしてはいるものの、閑散としているわけではない。イベントとしては業界向けで、一般客は来ないため、全体として地味な感じはある。たとえば基調講演に開場前から長蛇の列ができるようなこともなく、のんびりと入場できる。観光地で行なわれるのも、業界イベント的な選択だろう。というわけで驚くような展示があるわけではないが、次回以降もアメリカの携帯電話事情などを交え、このイベントをレポートしていくことにする。


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