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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第94回

伝説の電子楽器をツマミに酒を飲む~浅草エレキスポット巡礼

2012年05月19日 12時00分更新

文● 四本淑三

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前衛音楽がかかるカレー屋
「mokuba」

東京都台東区浅草3-10-4
不定期営業
03-3875-3376

注:「週末は開いている可能性が高い。開いていたらラッキーくらいの感じ」ということです。


斉田さんは電子音楽家としても活動するエンジニア。

 私がオンド・マルトノカフェの存在を知ったのは、コルグのエンジニアにして、kaossilator 2の開発にも関わった斉田一樹さん(関連記事)の画像つきツイートからだ。そこには妙に細長くて白い、ガラス張りの建物が写っていた。

 その斉田さんも比較的最近に浅草へ越したばかり。何も知らずに入った近所のカレー屋で、オンド・マルトノ・カフェの存在を知ったのだという。なんと、そのカレー屋の店主も電子音楽家だったというのだ。なんたる偶然!

 そこで斉田さんにガイド役をお願いし、まず、そのカレー屋「mokuba」に店主の羽鳥智さんを訪ねた。

※ 羽鳥さんは1972年生まれ。ライブやDVD・カセットテープなどの音源制作のほか、ギャラリーでのインスタレーションも行なっている。

―― ずいぶんかわいいお店ですね。

羽鳥 壁を塗ったりして内装は全部自分でやり直しました。ネットで見て一番安いところを選んだんですけど、それがたまたま浅草で。来てみたらボロボロだったんですが、どれだけ内装を変えても構わないというので。

―― なんで浅草でカレーなんですか?

羽鳥 相方がカレーを出すお店にいた関係からですね。最初は引かれるくらい辛いほうが面白いなと思っていたんですが、浅草のお客さんは面白くて、思ったことをすぐ言うんですけど。「なんでこんなに辛いのよ! 信じられないわ!」って。今はだいぶ洗練されてきたと思いますね。

mokubaの店内は椅子4席で満員。

―― 羽鳥さんの音楽活動はどんな感じですか?

羽鳥 年に1、2回くらいライブをやるくらいです。90年代のはじめに、面白いレコード屋が色々渋谷にあったんですよ。パリペキンレコードとか、Kurara Audio Artsとか、新宿にロスアプソンというお店ができたり。そういう人たちと知り合いになって、お店にカセットを置かせてもらったりしたのが始まりです。

※ パリペキンレコード : マンションの一室にあった伝説のレコ屋。店主は虹釜太郎さん。
※ Kurara Audio Ars : やはり8畳ほどの小さな店舗にマニアックな品揃えで知られていた。
※ ロスアプソン : 現在は幡ヶ谷で営業中

お店にCDは置いてあるものの、自分の作品はないらしい。曰く「そういうことを隠してやっているくらいですね。インドで修行してきて今に至るみたいなフリをして」

我々は一番辛いらしいチキンカレーを注文。800円。インド風と欧州風がモジュレーションした独特のスパイシーな味。美味しゅうございました。

―― ASADENさんは前からご存知でした?

羽鳥 工場がこっちの方にあるというのは聞いていて、ブログはチェックしていました。そしたら「楽器を修得するためにインドへ行っていた」という、2人組のお客さんが来たんです。何の楽器ですかって聞いたんですけど「マイナーなんで知らないと思いますよ」って。でも食い下がったら、オンド・マルトノって言われて。

―― ははは! なんでまたここに来たんでしょうね。

羽鳥 ご自身であそこの場所を作りはじめたんで、小さい変な店が気になっていたんじゃないですかね。ここは何屋だろう、という感じでいらして、カレー屋とは分かっていなかったと思います。

斉田 ここ、けっこういろんな人が来ますよね。ここで面白い人の話を聞いて、じゃあ行ってみるかということは良くあります。

 どうやら類は友を呼ぶらしい。何でも2ホップでつながるというインターネット時代にあって、浅草にはそれを超える、高度に発達した有機的ネットワークが存在するらしい。

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