結果として、トモちゃんは映画監督を見事にやってのけた。
猫の映像を大量に差し挟み、そのためにストーリーを大幅変更。それでいて内容に何ら不自然なところはなく、尺も予定通りに収めるという離れ業だった。
勝手にシナリオを変更された先輩は最初たいそうご立腹だったそうだが、できあがった作品を見て「これなら仕方がない」と言ったという。
そして学園祭でのイベントも大成功だった。
ここだけ伝聞でないのは、僕の目の前でちょうど打ち上げが行われているからだ。一次会は普通に居酒屋でやったらしいんだけど、「噂の猫ちゃんを見せてちょうだい!」と言う先輩たちをトモちゃんが部屋に連れてきたのだ。
「うわー、かふかちゃんもふもふー」
「かふかは世界一もふもふです!」
「もふもふ万歳!」
そして僕は今まさに酔っ払いどもに撫で回されている最中なのだった。
ところで、猫(僕の映像だ)が追加された新たなストーリーは、すれ違った男女が猫との交流を通じて絆を取り戻すという心温まるものだった。しかし要素が増えた分、シナリオから何かを削らなくては上映予定時間をオーバーしてしまう。
そこでトモちゃんはテニスシーンを削った。そりゃもう削った。登場人物がテニスラケットを持っているカットこそあるけど、基本的にテニスはまったく関係なくなっている。
……テニスサークルの宣伝にはならないと思うんだけど、いいのかな、これ。
「トモちゃん君は本当によくやった!」
「えへへへへー」
みんなに褒めてもらえてトモちゃんは本当に嬉しそうだ。だったら僕がいちいち気にすることはないかもしれない。トモちゃんが笑っていてくれたら僕は幸せなのだから。
そして僕は「にゃあ」と一声鳴いて、トモちゃんのひざに飛び乗ったのだった。
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