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災害や電力不足に負けないIT活用のヒント 第7回

避けて通れないバックアップと在宅勤務のソリューション

のど元過ぎれば……にならないための企業の災害対策【後編】

2012年04月09日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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東日本大震災から1年を過ぎたのを機に、企業の災害対策やBCPの見直しについて振り返るまとめ企画の後編。データセンターを中心にした前編に引き続き、後編ではデータのバックアップと在宅勤務という2つのソリューションについて見ていきたいと思う。

データは守れ!なにはともあれバックアップ

 災害対策としてもっとも急を要するのは、やはり業務データの確実なバックアップといえるだろう。システムは復旧できても、消失したユーザーデータはもはや戻ってこない。ビジネスの根幹をなす基幹システムのデータはもちろん、オフィスで重要なデータを格納するファイルサーバーや顧客とのやりとりまで含んだメールのデータなど、可能な限り最新のものをバックアップしておく必要がある。しかも、バックアップされたデータは、確実にリカバリできなければならない。こうしたバックアップの導入は、もはや先送りにはできないという状態だ。

 データのバックアップはコンピュータを扱う上で必須だが、実際にシステムとしてバックアップを導入している企業は決して多くない。スモールビジネスでは特にこの現象は顕著。バックアップソフトのベンダーは競合からの乗り換えより、こうしたノンバックアップユーザーをターゲットに価格や使い勝手を訴求している。

 震災を経て、バックアップのソリューションとして注目を集めるようになったのは、リモートバックアップであろう。磁気テープや外付けドライブ等などのバックアップメディアは、今まで同じ社屋内やサーバールームに保存するのが一般的で、業者に頼んで、遠隔にある倉庫等に保管しておくのは金融機関や大企業など一部に限られていた。しかし、震災では社屋に直接被害が及ぶところも多く、しかも被災後にはビルへの立ち入りができないという自体も起こった。また、電力不足による停電により、システム自体を継続的に運用できない会社もあった。そのため、BCPの観点から、バックアップデータを遠隔に保管する必要性が重視されるようになったのだ。

シマンテックの発表会ではリモートバックアップへの関心は高まっている調査結果が引用された(ノークリサーチの調査より)

 こうした背景もあり、遠隔にある事業所やデータセンターにデータを保管するリモートデスクトップソリューションが花盛りだ。レプリケーション機能を搭載したストレージアプライアンスや、データセンターとネットワークとのパッケージ、あるいは容量にあわせて利用できるクラウドバックアップなど、新種の製品やサービスも多様化している。

災害対策だけではない?在宅勤務体制の導入

 大震災以降、大きな注目を集めたのが、在宅勤務のソリューションだ。震災の際、特に都内では交通網が完全に麻痺し、オフィスに向かうこと自体が困難になった。日頃から、こうした事態を想定し、在宅勤務の体制を構築していた企業では、災害時でも業務を適切に遂行できた。特にグローバル展開を行なっている外資系企業は、災害対策やBCPが比較的整備されていたこともあり、速やかに在宅勤務を中心にした業務体制に移行したのが印象的であった。

 こうした在宅勤務はシステム構築だけではなく、セキュリティや就業規則面での整備も必要であるため、導入の敷居が高かった。しかし、震災においては導入効果が明確になり、モバイル環境でのワークスタイル変革の波も訪れている。また、在宅勤務は自然災害だけではなく、伝染病や停電、交通機関の乱れなどへの対応としても効果を発揮するほか、個人の生活にあわせた柔軟なワークスタイルを実現する1つの手段としても注目を集めている。BYOD(Bring Your Own Device)やモバイルワークスタイルの浸透と歩調をあわせ、いよいよ導入の機運が高まってきたといえよう。

ファーストサーバではITを活用した在宅勤務を動画で紹介している

 一言で在宅勤務といっても、オフィス内のサーバー等にアクセスするためのVPNゲートウェイやサービスはもちろん、遠隔でのリモートデスクトップを可能にするサービスや在宅作業での情報漏えいなどを防ぐツール、在宅勤務の状態でも円滑にコミュニケーションするためのUC(Unified Communication)やビデオ会議システムなど、ソリューションは幅広い。こちらもバックアップの分野と同じく、クラウド化が進んでおり、Webブラウザ経由で利用できるビデオやオンラインストレージなどが多数登場している。

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