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価格は大手の数分の1!NCLCが国内展開を開始

いい意味でなんの変哲もないPica8のToRスイッチが上陸

2012年04月06日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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4月5日、エヌ・シー・エル・コミュニケーション(以下、NCLC)は、米Pica8(ピカエイト)のOpenFlow対応のデータセンター向けToR(Top of Rack)スイッチ「Prontoシリーズ」の国内販売を発表した。クラウド事業者が工場からのODM調達を進める現状を鑑み、コモディティ化されたToRスイッチを低廉な価格で提供する。

大手クラウド事業者はODMからの直接調達へ

 Pica8は2009年に設立された新興のネットワーク機器ベンダーで、汎用高性能チップとオープンソースを活用した製品を開発することで、ネットワークのコモディティ化を目指しているという。今回発表されたのは、1/10Gbpsに対応した48ポートのボックス型スイッチ「Pronto 3290/3295/3780/3920」の4機種で、OpenFlowに完全対応するのが大きな特徴となっている。

会場に展示されたPica8の「Pronto 3920」「Pronto 3295」

 発表会において、NCLC 代表取締役 関根尚氏はまず同社の会社概要から説明した。NCLCは北米からのIT製品や技術を国内に輸入販売する商社で、ネクサンのストレージやデスクトップ系のセキュリティソフトなどを扱っている。昨年から、データセンター向けの製品を展開しており、今回のPica8のToRスイッチ販売に至ったという。

NCLC 代表取締役 関根尚氏

 続けて関根氏は、今回Pica8製品を展開することになったデータセンターの課題とトレンドを挙げた。まず、同氏はデータセンターのコスト構造で、ネットワーク機器の占める割合が大きい点を指摘。グーグルやアマゾン・ドットコム、マイクロソフトなどの大手Webサービスの事業者がネットワーク機器の調達先を、シスコやジュニパーなどの大手ベンダーから、アジアのODM(Original Design Manufacture)に変更しているというワイヤードエンタープライズの記事を引用。「サーバーの分野では以前からあったが、ネットワーク機器に関しても、クラウド事業者はODMとの直接取引をはじめている。ここまでやらないと、激烈なクラウドサービスの競争に勝てない」(関根氏)と指摘した。

調達先の変更を図る大手のクラウド事業者

 次に関根氏が指摘したのは、もはやネットワークハードウェアでは性能差が出ないという点だ。同氏は、シスコ、ジュニパー、フォーステン(デル)、IBM、アリスタ、HPなどの10Gbps対応ToRスイッチのスペックを横並びにし、ポート数やスイッチング容量、遅延、パケットバッファーなどがほぼ同じことを示した。性能が同じである背景には、これらの製品ではスイッチングチップとして「Broadcom Trident+ Chipset」が共通に採用されているからだという。関根氏は、「昔、エンジニアの汗の結晶だった性能面のチューニングはもはや不要で、高性能なASICで済むようになってしまった」と現状を指摘する。

ネットワークハードウェアで性能差は出せない

 では、性能を決めるソフトウェアはどうか。今までは専用ハードウェア&メーカーの独自ソフトしかなかったのが、昨今は業界標準アーキテクチャ/オープンソースの選択肢が出てきているという。この流れの1つがOpenFlowで、水平分業的なオープン化が進んでいるのが現状だ。

Open Vswitch搭載でOpenFlowに完全対応する

 こうしたトレンドを基に開発されたPica8のスイッチは、前述したBroadcom Trident+ Chipsetをベースにしたハードウェア上に、汎用Linuxとオープンソースのソフトウェアを組み合わせたアーキテクチャになっている。ルーティングに関しては、オープンソースのルーターソフトウェアである「XORP(eXtensible Open Router Platform)」を強化したXORPlusを搭載。また、仮想スイッチ「Open Vswitch」を採用し、OpenFlow完全対応を謳う。徹底的なオープンソースソフトウェア活用で、開発コストの抑制とイノベーションの迅速化を図る。

オープンソースソフトウェアを徹底的に活用したアーキテクチャ

 ハードウェア構成が基本的に同じこともあり、性能は他社競合製品と同等を実現する。具体的には10GbE×48、40GbE×4を搭載する「Pronto 3920」の場合、Cisco Nexus 3064、Force10 S4810、IBM RackSwitch G8264、ARISTA 7050、Juniper QFX3500などとほぼ同じ1.2bTBのスイッチング容量、1000nsの遅延、9MBのパケットバッファを確保する。

業界のトップブランドと同等の性能を確保

 一方で、価格は競合に比べて圧倒的に低価格。1GbE×48、10GbE(SFP+)×4のPronto3290が32万3000円、40GbE対応のPronto 3920でも154万5000円(初年度サポート費用は別)。上記の定価にはハードウェアだけではなく、ソフトウェアも含んでおり、10GbEのポート単価で他社の1/2~1/5を実現している。これはオープンソースソフトウェアが採用されていることはもちろん、「Pica8が台湾と中国ODMとのダイレクトパスがあることや大手クラウド事業者の仕様を商用販売していること」(関根氏)などが大きいとのこと。

 出荷は4月18日開始予定。最新のOpenFlowにもいち早く対応するほか、銅線の10GbEモデルもリリースされる予定だという。

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