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Apple Geeks 第78回

iPodからiPhoneへ—音楽の新たな共有スタイル

2012年04月06日 12時00分更新

文● 海上忍

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 本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。

 UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。

室内で、ひとりで楽しむものだった音楽

 1960年代から始まったオーディオブームでは、「音楽を聴く」といえば、左右のスピーカーの中心に座り、意識をステレオセット方向に集中させて聴き入ることが当たり前だった。LPレコードを再生する前には、静電気を除去する効果があるスプレーをレコードに噴射し、レコード針をクリーニングして、カセットテープに録音するのなら録音レベルも調節……などと一連の儀式を必要としたことも、そのような音楽の聴き方に影響していたに違いない。

 しかし、1980年代に入るとポータブルオーディオ機器の登場やCDの普及によって、音楽の聴き方はよりカジュアルな方向へとシフトした。いつでも、どこへでも音楽を持ち出せるようになり、「ながら聴き」や“環境”としての音楽も存在するという具合だ。一方、音楽自身も姿を変え、意識を集中して聴くことを求めなくなった。たとえば、ハウスやラップを高級ステレオセットの前で腕組みして聴くリスナーは、あまり存在しないだろう。

 ポータブルオーディオ機器とCD、そしてカジュアルな音源の出現は、我々の音楽との付き合い方を変え、そこにiPodが登場した。

iPhoneが“音楽の聴き方”をさらに変える

 そして筆者は、iPhoneをはじめとしたスマートフォンが、音楽を聴くスタイルをさらに変える潜在力があるように思えてならない。

今や当たり前となったアルバムアートワークをめくりながらの選曲も、登場当時は衝撃的だった

 その理由のひとつが「ワイヤレス」。ほかの音響機器にケーブルを使わず接続でき、AirPlayやDLNAなどのコンテンツ共有規格も整備されている。ワイヤレスだからといって質が極端に低下するわけではなく、ALACやFLACといったロスレスコーデックが用意されているし、SoCの改良によりデコード能力も向上している。

iPhone/iPad/iPod touch/Mac上の曲を少ない得失でワイヤレス送信できる「AirPlay」は、音質面での評価も高い

 そしてもうひとつの理由が「ソフト」だ。従来のポータブルオーディオは、いわば「再生/早送り/巻き戻しの機能しかないソフト」のみ搭載するハードウェアだが、スマートフォンはソフトを根本的に入れ替えられる。確かに音質も大切な要素だが、カジュアルな聴き方が好まれる現状からすると、音楽との付きあい方を変えうるのはソフト、すなわちアプリということになるはずだ。

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