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「ネットで売れない」を変えた 常識破りの商品戦略 (2/3)

2012年04月16日 10時01分更新

文●三浦たまみ

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斬新な商品開発でネットの売り上げも後押し!

 フィッティングができない、というECサイトの弱みは、商品開発力により、かなりカバーされたと言える。例えば、前回お伝えした、樹脂素材で軽量なメガネ「Air frame(エア・フレーム)」は、フレームそのものが柔らかく、弾力性や復元性があるので、自然に人の顔にフィットしやすい。フィッティングに神経質にならずに済むところが、ECサイトの販売に向いている商品なのだ。

「1本目は、どんな商品か分からないゆえ、実店舗に出向いてかけ心地を確かめてから購入した人が、2本目以降は、わざわざお店に行く必要がないからとネットで買うパターンは非常に多いです」

 さらに、そもそも度付きレンズの必要ないメガネ、いわゆる伊達メガネだけでなく、視力補正が必要のない人向けの商品も開発し、「機能性アイウエア」と銘打って多彩なラインアップを揃えていった。その軸になるのが、「プロテクトシリーズ」と「スポーツシリーズ」だ。

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「機能性アイウエア」のスポーツシリーズのラインナップ

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「機能性アイウエア」のプロテクトシリーズのラインナップ

「プロテクトシリーズ」は、パソコン専用、ドライアイ専用など、機能に特化したメガネのこと。例えば、「パソコンにはメガネ、という新習慣。」というキャッチコピーが目を引く「JINS PC」。LEDディスプレイの普及により、ブルーライトに接触する機会が増えたが、これが、今まで以上に目がかすむ、疲れる、重いなどの症状を引き起こす可能性があると言われている。

 このブルーライトをカットし、目の疲労を和らげることを目的にしているのが、「JINS PC」だ。日本マイクロソフトをはじめ、社員用にすでに導入している企業もあるほど、注目度は高い。

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「ブルーライトから眼を守る」、「ディスプレイの文字をクリアに」といった機能を持つ新しいメガネ用途を開発した「JINS PC」

「ドライアイのお客さまに好評なのが『JINS Moisture』です。フレームの側面にある着脱可能な水の入った容器、ウォーター・ポケットの細かな穴から水が蒸発し、眼の周囲に適度な湿気を保つように開発されたメガネです。もちろんフレームはエア・フレームです」

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ドライアイ専用の「JINS Moisture」。フレーム側面にある着脱可能ウォーター・ポケットが保湿の鍵となる

「スポーツシリーズ」では、プロゴルファーと共同開発した、芝目や傾斜がよく見えるゴルフ専用サングラス「JINS GOLF」、走りに適したランニング専用サングラス「JINS Run」、風、塵、砂ぼこり、紫外線、衝撃などから目を守る自転車専用サングラス「JINS Cycle」など、スポーツごとに特化したラインアップを続々と発売した。

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JINS Runはランニング専用サングラス。度付きレンズへの交換もできる

「プロテクトシリーズ」も「スポーツシリーズ」も、度なしが基本。サングラス感覚でかけられるので、ネット販売にはぴったりだ。

「実は、これらのシリーズは、メガネ市場が年々縮小している中で、今後拡大する可能性を考えて開発したメガネでもあるんです。そもそも視力補正を必要としない人達の人口も多く、視力補正が必要な人でも最近はレーシック手術を受ける人が急増し、メガネやコンタクトレンズが不要になった人もたくさんいます。そういう人にも欲しいメガネって何だろう、と考えた答えが機能やスポーツに特化したメガネでした。結果として、度がないサングラスタイプなので、ネットから気軽に購入してくださるお客さまが増えたんです」

 以前から、ファッションの一部としての伊達メガネに興味を持つ若い層はいたが、「プロテクトシリーズ」や「スポーツシリーズ」のおかげで、年代問わず、幅広い層に受け入れてもらえるようになった。もともとあった潜在需要を掘り起こしたことが、人気に火がつき、ネットの購入率アップにも結びついたといえるだろう。

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