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編集者の眼第39回

「一人前に仕事ができる」ってどんなとき?

2012年04月05日 11時00分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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 自社の話ではないけれど、新入社員の挨拶には「早く一人前になれるようがんばります」の無難型と、社内ではアンタッチャブルになっている案件名を何気なく口にしてしまう無謀型がある。入社式から数日もすると先輩社員がそれとなく教えてくれて、「ウワー、会社って怖い」と初めての社会人ヒヤヒヤ体験をするのが無謀型だ。ただ、「早く一人前になる」と宣言した無難型も、数週間もすれば「中見がない」などと評されるから、会社はやっぱり怖い。

 では「一人前に仕事ができる」とはどんなときだろうか。雑誌編集者ならイチから企画した記事が話題になると、一人前になれた気がする。営業ならライバル企業の牙城だった会社から飛び込みで案件を取ってきたり、技術者なら「絶対無理」と言われることを意外な発想で実現したりすると、「一人前」と思うのかもしれない。ただ、一人前と感じるのは本人の主観なので、どうしてもそれぞれの経験談になってしまう。「俺は元から一人前」とうそぶく人もいるだろうし、今の新入社員にバブル時代の武勇伝を語ってもロールモデルとしては役に立たない。「一人前に仕事ができるようになる」とはどんなときだろうか。

 たとえば、上司やOJT担当の先輩社員に言われたことができるようになったときはどうだろうか。電話に出て社名をさらっと言えるようになるのは初級編過ぎるとして、○○部に伝票を届けるときは、部長じゃなくて担当課長の□□さんにとか、取引先や得意先へのアポイントの取り方など、一通りルーチンワークをこなせるようになったら、ひとまず新人としては一人前だ。とはいえ、雑誌編集のように企画を立てる仕事は、言われたことができるただけでは一人前ではない。

 上司や先輩社員に言われなくても、すべきことができるようになったとき、「これって、そろそろ一人前かも」と思うのもよさそうだ。ルーチンワークをこなすうちに「第3木曜日に開かれる役員会議の前日だけは前月分の確定売上げをまとめないといけない」のような例外に気付き、「前月の売上げなんだけど」と課長に言われて「あ、もう出来ています。そろそろ印刷が終わるので50部製本したら帰っていいっすか?」と答えられたら、新入社員的には最高の気分だろう。とはいえ、ルールどおりに処理することが重視される職種では、言われないことまでやってはいけない。経理部に配属された新人が「常務、この○○興業っていう領収書、何のお店ですか?」なんて伝票を突き返したら大問題になるだろう。

 こう考えると、「一人前の仕事」にもいろいろある。ルーチンワーク主体の職種なら、100点取れれば一人前だし、クリエイティブな職種なら、120点取らないと一人前とはいえない。最大の悲劇は、工夫好きなのにルーチンワーク職場に配属されたり、言われたことをきちんとこなすのが得意なのにクリエイティビティが求められる職場に配属されたりすることだろう。もちろん、どちらの性格、職場が優れているかではなく、どちらの性格も職場もなければ会社は成り立たない。それぞれの一人前を用意してあげたり、就職活動中に本人が気付けなかった本当の適正を見抜いたりするのは、上司や先輩社員、人事部がクリエイティビティを発揮しなければならない仕事だ。

 先日発表したHTML5をテーマにした電子雑誌の編集者募集には多数の応募があった。まだ締め切っていないので、クリエイティビティを発揮できる職場で働きたい人(編集経験問わず)は、ぜひ応募してください。(応募した方への連絡はもう少しお待ちください)

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