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着荷時間の前倒しや検証ツールを改良し、着荷後24時間以内に発送

NECが最短1日のパソコン修理を実現した理由

2012年03月27日 09時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 3月26日、NECパーソナルコンピュータは、NECパーソナルコンピュータ 群馬事業場(群馬県太田市)の修理・保守サービス拠点を報道関係者に公開。修理拠点に故障したPCが到着した後、24時間以内に修理して、ユーザーの元に返送する“1日修理”(1 Day Repair)の取り組みについて説明した。

東日本テクニカルセンターがある、NECパーソナルコンピュータ 群馬事業場。群馬事業場は1984年7月にPC-9800シリーズを開発・生産するNEC群馬としてスタート。PC-9801m2やカラー液晶搭載ノート、PC-98NXなどを手掛けた。その後、デスクトップPCの開発・生産と平行して、サポート拠点としての役割も担い、再整備品(NECリフレッシュPC)事業なども開始している

 群馬事業場の“東日本テクニカルセンター”は、全国に11ヵ所ある同社修理・保守拠点のうちで最大。北海道を除く東日本全域(1都15県)を担当する。修理可能なパソコンおよび周辺機器は、個人・法人向けのデスクトップ・ノート・タブレットPCだけでなく、Atermを始めとした周辺機器、プリンター、HEMS(Home Energy Management System)など1万2000種類におよび、毎月6000台のパソコンを修理し、ユーザーの手元に返している。

 昨年10月に開始した“Same Day Repair”は、修理業務に要する時間を短縮化することが目的。見積もり回答などの待ち時間なく修理が進められる“無償保証期間内のパソコン”であれば、98.8%が着荷後24時間以内の返送(翌日出荷)、さらに約88%が8時間以内の返送(当日出荷)も可能となっている。不具合の再現などに時間がかかる案件などもあるが、来期は8時間以内に返送する割合を90%以上とする点を目標に掲げる。

 Same Day Repairの取り組みに伴いさまざまな業務改善を実施している同事業場だが、その取り組みは大きく以下の5点が挙げられる。

  1. 着荷および受付業務の改善
  2. 診断および検査時間の短縮化
  3. OS再インストール時間の平準化
  4. 部品配膳時間の短縮と在庫部品不足の改善
  5. 出荷便の最終回収時刻を1時間延長

 まず最初に取り組んだのが、ユーザーから届く故障機材の受け入れ態勢の変更。従来は8:30と9:30の2回の便に分け、かつ地域ごとに便を取り、異なるトラックヤードに誘導するという方法をとっていたが、8:30の1回に集約。朝一番にまとめて1ヵ所に着荷させ、順次修理担当者に引き渡す方式に変えた。また外部業者に委託していた受付・振り分け業務も内部で担当し、効率化を図っている。

着荷した修理対商品は配膳の効率を上げることも、作業短縮のポイント。ユーザーの確認がなく作業が進められる無料あんしん便を優先的に作業する

 交換作業をなるべく午前中に終えるというのが意図で、これにより診断開始までの時間が最大1時間半短縮された。午前中に部品交換などの作業を終えれば、昼休みを利用して自動検証ツールを動かすことも可能となる。同様に出荷便の最終回収時刻も19時まで延長し、当日出荷できる数を増やしている。

 また、検査システムの改善によって診断および検査時間の短縮にも取り組んだ。特に独自開発の“統合テストツール”により、診断および検査時間を従来の平均3.5時間から1.9時間へと45%短縮した。この種のツールは利用環境や、故障が疑われる部品(HDDなど)を本体から取り外さなければ検査できないといった制約があることも多いが、パーツ類を装着した状態で検査ができ効率的だ。

統合テストツールの利用風景

 現場には、PC2万4000機種/周辺機器1万機種に関するカタログ・マニュアル・修理情報が集約された修理情報ナレッジシステム「K1」が導入されている。

 これを活用し、過去に実施した約300万件の機種別の修理履歴情報(交換部品)を共有化し、適切な在庫確保に役立てたり、修理担当者からの改善要望も月平均55件のペースで蓄積している。これは東京・大森にある121コンタクトセンター(サポート窓口)と接続し、ユーザーサポートに活用されているほか、症状や機種に合わせて適切な診断・検査ツールを提示するといった機能も持っており、作業の効率化に貢献する。

 なお、HDD交換後にはネットワーク経由でのOS再インストールが必要になるが、従来はインストールサーバーに負荷が集中し、遅延が生じることがあった。1時間~2時間30分と作業完了にバラつきがあったが、NASの増強により、インストール時間の平準化が可能になっている。

保守部品が並べられた倉庫

 部品配膳(部品倉庫から修理現場への部品移動)に関しては、バッチ処理(まとめて処理)からリアルタイム処理(来た順番に処理)への変更、および部品をピッキングサイクルを1ロットあたり10個から5個へと小ロット化することによって、22分から15分と約40%削減した。

 さらに部品の在庫の確認・取り寄せも週単位から日単位に変更することで、改善前は毎月121件あった在庫部品不足によるタイムロスを毎月30件と約75%削減した。

作業風景。1日8~12台前後の修理を行なっているそうだ。デスクトップの修理では移動に便利なカートを活用。ケーブル類は上に回して効率よい作業ができるようにしている

作業時間を減らすためにはハードそのものを作業しやすくすることもポイント。ネジの種類の統一などフィードバックを上げて改善している

 群馬事業場では、基本1台のマシンの修理を1名が担当し、慣れた作業者であれば、毎日8~12台程度の修理が行なえるという。約40名のスタッフは、10年以上のキャリアを持つ30代~40代が中心。修理スキルをアップさせるため、全員がIT業界団体・CompTIAの認定資格“CompTIA A+”を取得している。

 これ以外にも、顧客満足度向上のために従来ハガキで対応していたアンケートをウェブに移行。迅速なフィードバックを可能とする。

24時間、8時間修理の実現率の推移

着荷を一括化することで効率を上げた

出荷時間も遅らせている

ネットワークインストールにかかる時間

部品配膳時間の改善

診断検証ツールの改善

ノウハウと情報を集約するK1

これまで実施した改善

 個人がNECパソコンのトラブルに行き当たった場合、窓口となるのは121コンタクトセンター。ここで受けたサポート電話のうち、約2割がハードウェアの障害として修理対応(残りの8割は電話で解決)となる。個人からの“あんしんサービス便”に加え、3000法人9000店舗を窓口にした修理受付にも対応。量販店などの修理窓口からはルート便を使って、群馬事業所など各地の工場に届けられる。

 1日修理では翌日の朝、着荷した修理対象品をその日のうちに修理し、24時間以内で(早ければ夜便に乗って)ユーザーの元に帰って行く。つまり個人向けでかつ無償保証期間内の製品であれば、最短3営業日での修理が可能となるわけだ。

 なお、有償修理ではユーザーへの見積もり確認後に修理が開始されるため、修理には平均で40~48時間ほどかかるという。販売店経由で受け付けた修理に関しては販売店から回収し、工場に届くまでの時間がかかるため、100~110時間ほどの時間が必要になるという。

保守サポート事業部長の土屋 晃氏と保守サポート事業部 東日本テクニカルセンター センター長の星野敬正氏

 もちろんNECは対販売店のリードタイム短縮にも取り組んでおり、「土日の修理品引き取り・引き渡し」「修理担当者の土日祝日稼働」「集荷時間の前倒し」といった施策を講じている。また、引き取り依頼FAX(修理伝票)に関しても効率的な対応ができるよう、盛り込んでほしい項目をお願いして回るなど地道な努力を続けているという。この点でも競合社に対して有利であると担当者は自信を見せる。

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