ペンという新たなデバイスを搭載したワケ
画面サイズも特徴だが、さらに気になるのはタッチペン「Sペン」の存在だ。ペンタブレットで圧倒的なシェアと人気を持つワコムとの技術提携により実現したこのペンだが、先っぽが筆圧に応じて沈み込むようになっており、ディスプレーも筆圧感知に対応しているため、静電容量式である指のタッチとは区別される。もちろん、指での操作の代わりにも使うことができ、ペンでアイコンをクリックしたり、スクリーンキャプチャーの撮影やページを切り替えも可能だ。
しかし、Sペンの真の実力は指の代替では決してない。筆圧感知に対応した細いペン先による、繊細なイラストが。これが、従来のPDAやスマホと違う部分である。クリエイティブな趣味・仕事の人であれば、いつでもどこでも思いついたイラストを描くことができ、さらに描いたものをその場でSNSやブログなどにアップすることも可能なのだ。写真を撮って、そこに簡単なイラストを描き足したり、切り抜きもできるので楽しいコラージュ写真を作成してもいいだろう。だが、デザイナーでもアーティストでもない人にとっては、果たしてSペンの使い道があるのだろうか?
キム・アルム氏「S・ペンはイラストレーターやデザイナーが使うと便利ですが、文字も書けるしスクリーンキャプチャーも撮影できるので、ビジネスマンでも活用できます。
例えば、GALAXY NoteのCMにもありますが、ビジネス文書(ワードやエクセルなど)で気になった部分にメモを書き込んだり、受け取った文書にアイデアを記入して送り返したりなど。ビジネス用途にも使いやすいと思います」
日本独自のSペン用アプリとして「7notes with mazec」が用意されているので、ビジネスでも活躍できそうだ。なお、Sペンに特化したアプリは「Samsung Apps」内の「S Choice」に用意されている。これらのアプリはグローバルモデル向けに開発されているため英語版だが、日本発売モデルでも使える。
ということで、Sペンの利便性はわかった。しかし、なぜ収納場所が端末の下なのだろうか。これでは落としてしまう可能性もあるのでは?
パク・サンシク氏「下に収納したほうが便利に使えると考えたからです。また、一部の地域ではモバイル用テレビ放送(日本ではワンセグ)のアンテナがあるので、それらの部品との兼ね合いもありました」
ペンと指(タッチ)という2通りの入力方法があるが、UI的なコンセプトはどうだったのだろうか。同じく責任研究・課長でUX(ユーザー・エクスペリエンス)デザインを担当したパク・ヨンソク氏に聞いた。
パク・ヨンソク氏「まずUIですが、GALAXYシリーズの統一感を維持し、画面のサイズが大きいので、多少はリサイズするといった微調整はしていますが、基本は従来のもの(TouchWiz)と同じです。指とペンによる入力ですが、どちらかに寄ったコンセプトというのは考えていません。どちらを使っても同じように操作ができるので、人によって使いやすいほうを選んでもらえれば。ペンひとつとってみても、デジタル風に使うかアナログ風に使うか、人の好みがわかれると思うので、自由に使ってもらいたいですね」
デバイスとしてペンを使った端末はGALAXY Noteが初めてではなく、それこそ昔のPDAなどにもスタイラスペン搭載モデルなどがあった。そういった過去のモデルとの違いはなんだろうか?
パク・ヨンソク氏「大きな違いは、昔の端末は感圧式だったこと。それに対し、GALAXY Noteはワコムさんの技術を使っています。そもそも、現在のスマートフォンはディスプレーにガラスを採用しているので、感圧式はもう使えないですよね(笑)」
最後に、指によるタッチが世界の主流となっている現在、なぜあえてペンというデバイスを採用したのかを聞いた。かのスティーブ・ジョブズはペン不要派で、タッチパネル端末「iPhone」を送り出し、指によるタッチの潮流を作った。それに対し、パク氏はこう答えた。
パク・ヨンソク氏「iPhoneが登場したことによって、携帯電話はボタンからタッチパネルにUIが変わりました。スマートフォンの初期は「ペンは不要」という考え方もありましたね。ですが、今はテクノロジーが進化してディスプレーも大きくなり、人間が一番慣れ親しんでいるであろうデバイス「ペン」を導入できる環境が整ったのです。
実は、ペン自体の構想は2007~2008年くらいには考えてはいたんです。しかし、ケータイ(フィーチャーフォン)は感圧式、スマートフォンは静電容量式と、それぞれ入力方法が違っていて(実現させるのが)結構厳しかった。ようやくこうしてテクノロジーの発達の恩恵を受けることができるようになったので、ペンを採用するに至ったのです」
大画面+ペンという新しいスタイルのスマホ(?)「GALAXY Note」。ペンというアナログなデバイスを採用したのは、技術の進化によりもたらされたバリューであった。こうしたデザイナーや開発者のこだわりが、世界中のガジェット好きのみならず、さまざまな層のユーザーにヒットし、現在は500万台を出荷しているという結果に現われているのである。
次回は商品企画担当者へのインタビューと日本におけるGALAXY Noteの展開、そして韓国で見てきたGALAXY ZONEでのキャンペーンの様子などをお届けする。
ドコモ「GALAXY Note SC-05D」の主なスペック | |
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メーカー | サムスン電子 |
ディスプレー | 5.3型有機EL(HD Super AMOLED) |
画面解像度 | 800×1280ドット |
サイズ | 約83×147×9.7mm |
重量 | 約184g |
CPU | Snapdragon APQ8060 1.5GHz(デュアルコア) |
OS | Android 2.3 |
Xi対応 | ○ |
3G最大通信速度(下り/上り) | 14Mbps/5.7Mbps |
カメラ画素数 | リア:約810万画素CMOS/イン:約196万画素CMOS |
バッテリー容量 | 2500mAh |
テザリング | ○ |
NFC | ○ |
FeliCa | × |
ワンセグ | ○ |
赤外線 | × |
防水 | × |
Qi | × |
連続待受時間 | 約310時間 |
連続通話時間 | 約430分 |
カラバリ | Ceramic White |
発売時期 | 4月6日 |