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2年連続の女王戴冠なるか? 5年目のミクGTプロジェクト 第9回

GT開幕前夜! ドライバー人生を変えたGSR入り 番場 琢の決断

2012年03月30日 18時00分更新

文● 末岡大祐/ASCII.jp編集部

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チャンピオン獲得に向けて
最高の体制で挑んだ2011年

──クルマがポルシェから、BMW Z4のGT3車両になりましたけど、ファーストインプレッションはいかがでしたか?

番場 乗りやすい乗りにくいで言えばポルシェのほうが乗りやすいですね。でもポテンシャルを感じたのはZ4です。ストレートスピードが速いし、ブレーキもよく効くし。これはイケる! と手応えを感じましたね。最初は電子制御系のトラブルが多かったですけど。3戦目くらいまではRSファインのみなさんも設計図を見ながら、どこが問題なのかを調べていたくらいで。谷口さんも心配してましたからね。いつか深刻なトラブルになるんじゃないかって。それで、セパンで海外からエンジニアを呼んで直してもらいました。

──そんなトラブルを抱えつつ序盤の2戦はいきなりシングル順位、それも5位、4位とあがっていきましたよね。

番場 たしかにシングル順位なんですけど、僕と谷口さんはうれしさよりも他のライバルの速さがちょっと気になっちゃいましたね。とくにハンコックとダンロップの雨の強さが驚異的で。富士では#11 JIMゲイナー 458の平中選手はフォーメーションラップでスピンして最下位まで落ちてるのに2位だったし。このときはセーフティーカースタートでペナルティーがなかったとはいえ、これはちょっとビックリですよ。結果的には#33 ハンコックポルシェが勝ちましたけど、タイムは#11のほうが上でしたからね。もうこの時点で#11への危機感を持ってましたよ。

──やはり、セパンはターニングポイントになったのでしょうか?

番場 ターニングポイントというほど大げさではありませんが、チーム力が徐々に上がってきた証明になりましたよね。もともとセパンは我慢のレースのつもりだったんです。テクニカルコースなので、どちらかというとコーナリングマシンのJAF-GT勢が有利なので。しかし、練習走行で谷口さんがいきなりタイムを出して、クルマを降りるなり「なんか速いぞ」と(笑)。セパン用に持ってきたタイヤが良かったんですね。クルマ自体はGT3規格なのでイジれませんから、タイヤの依存度が高い。僕が乗った印象は「全然タレない」でしたね。練習走行でGT300クラス1位を獲得してから、こりゃ行けるという感触になり、結果的に初優勝できました。良い意味で裏切ってくれましたよ、ミクちゃんは。

──初音ミクGTプロジェクト初となるセパンで、初めての優勝とドラマチックでしたよね。

番場 このチームに所属してもう2年が目前だったので、早く恩返しがしたかったんです。2010年にフル参戦ドライバーとして契約して、2011年に谷口さんが「番場を替えてくれ」と言っても僕を起用し続けてくれた安藝さんに、ようやく恩返しができたとホッとしましたね。あと、いつも応援してくださっている個人スポンサーのみなさんにも。ゴールしてクルマから降りてきて、安藝さんとハグをしたときはかなり感動しました。

──あれは、まさにメイクミラクルでしたね。アキバのパブリックビューイングも大盛り上がりでしたよ!

番場 ミラクルといえば、消化不良だったSUGO戦もそうなんですよ。GT500クラスのマシンと接触してコースアウトしたところがグラベル(未舗装路)で、普通あそこにハマったら抜けられないんです。雨でぬかるんでたし傾斜になってる場所なので。コースアウトした瞬間は「もうこのレース終わった!」と思ったんですけど、アクセル踏んだらなんか動くじゃないですか(笑)。しかも、上り坂になってるのにどんどん上っていくし。ホイールスピンしてるのに、ちょっとずつ進んで行って無事にコースに復帰できました。谷口さんもコースアウトの状況を見て「終わった」と思ったみたいです。あれは、個人スポンサーさんたちの応援がマシンを押してくれたんだと思いましたね。

──国内初優勝は9月の富士までお預けでしたね。

番場 SUGO、鈴鹿と微妙なレースが続いていたので、富士は完勝するつもりでした。Z4にとっても有利なサーキットですしね。しかも、ようやく晴れのレースで。タイヤもドンピシャにハマったし、僕もセパンみたいにハラハラさせなかったし、なんと言っても応援してくれている大勢のみんなの前で優勝を見せられたのがうれしかった。セパンの初優勝ももちろんうれしかったけど、個人スポンサーのみんなの前でチェッカーを受けられたのが格別でしたね。

大勢の日本のファンの前で、ようやくシャンパンファイトをお披露目できた

──オートポリスでは今期最悪の成績で……。

番場 富士の優勝で性能調整がガッツリ入ったのもあって「ちょっとこれ、ヤバくない?」って谷口さんと話してたんですよ。案の定、かなり遅くなってて。それでも、JIMゲイナーの優勝はないだろうと思っていたんで、いかにJIMゲイナーの前でゴールできるかが目標でした。優勝できればいいんですけど、速いのが何台かいたじゃないですか。なので、とにかくJIMゲイナーの前に! って。でも、僕がGT500の処理に手間取っている間に彼ら(JIMゲイナー)はアクシデントをすり抜けて2位になっちゃったという……。5ポイント差って結構ひっくり返すのが難しいから、谷口さんも病んじゃうし、僕もヘルペスできるしで、最悪の精神状態で最終戦を迎えましたよ。

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